不動産売却時には、何らかの事情で第三者に手続きを委任しなければいけない状況もあります。
その際に代理人として誰を選んだら良いのか?どんな委任状を作ったら良いのか?悩むかもしれませんね。
不動産売却は大きな金額が動くため、トラブルを防ぐためにも第三者に委任が必要な場合は委任状が必要です。
でも、不動産売却における委任状の書式は一般の方にとってあまり馴染みがありません。
そこでこの記事では、代理人による売却契約をトラブルなく成立させるために知っておきたい注意点を解説していきます。
初めてでもすぐに委任状が作れる書式例も掲載していますのでご覧ください。
不動産売却を委任しなければいけないのはどんな場面ですか
代理人を立てなければ売却契約ができないケースについて説明しましょう
目次
不動産売却の委任が必要な4つの場面
不動産売却をするときに代理人へ委任しなければいけない場面は4つあります。
- 遠隔地の不動産を売却したい
- 共有持分の不動産を売却したい
- 忙しくて売却手続きの時間が無い
- 売却案件が複雑
売却したい不動産が遠隔地にあるときに代理人が必要になります。
不動産の所有者が海外に住んでいるケース、また所有者が高齢なので地方の不動産がある場所まで移動できないケースがこれに該当します。
不動産の所有者が複数存在することがあります。
自分1人ではなく何人かで不動産を共有している場合、全員で集まれないので第3者に委任することがあるのです。
例えば、親の不動産を遺産として複数人の兄弟たちで相続したとします。
もし相続した不動産を売却したいなら、兄弟たち全員が立ち会って契約手続きをしなければなりません。
しかし、兄弟たちの人数が多いほど全員のスケジュールを合わせて手続きをするのが難しいでしょう。
不動産を共有している全員が立ち会えないときには、代理人が所有者たちを代表する形で契約を行います。
所有者が複数存在する別のケースは、不動産を夫婦で共有持分にした場合です。
このケースで離婚すると、2人で売却のための話し合いをしなければなりませんが、離婚した相手と顔を合わせたくないので代理人を立てて手続きを進めようとすることがあるのです。
不動産所有者が忙しくて売却手続きの時間が取れないときにも代理人へ委任することがあります。
売却手続きには、価格の打ち合わせや残金決済などに時間が取られますし、何回も不動産業者や買い主と会わなければなりません。
仕事や通院などで手続きのための時間がどうしても取れないケースで代理人が必要となります。
売却契約手続きのために必要な時間は取れるが、案件が複雑で自分でする自信が無いときに代理人を立てることもあります。
複雑な不動産取引をしなければいけないケースでは、所有者が弁護士や司法書士へ手続きを依頼します。
不動産売却を委任できる代理人の条件とは
不動産売却を委任できる代理人とは誰なのでしょうか。
委任する人を選ぶときに知っておきたい代理人の条件について考えてみましょう。
代理人の条件
代理人には3種類あります。
- 法定代理人
- 任意代理人
- 復代理人
3つの代理人によって条件が変わってきます。
まず法定代理人とは法的に権限を持つ代理人です。
不動産所有者が未成年の時に法定代理人が手続きを行います。
法定代理人になるには法律の規定を満たしていなければなりません。
例えば、不動産所有者が未成年の場合、法定代理人としての規定を満たしているのは親権者です。
親権者がいないなら法律によって定められた未成年後見人が代理人になります。
法定代理人以外は任意代理人と呼ばれます。
一般的に不動産売却を委任される代理人は、すべて任意代理人の区分に入ります。
所有者が自ら選んだ代理人のことです。
任意代理人になる条件は所有者に選ばれること、そして信頼できることです。
自分がよく知っていて確実に信じることができる人や、弁護士などの専門家が任意代理人として選ばれることが多いです。
復代理人は代理人が指名する人物です。
任意代理人となった弁護士が自分の秘書やアシスタントを復代理人として任命することがあります。
復代理人は代理人と同じ権限を持っており、所有者本人に変わって手続きを行っていけます。
この復代理人になるには、代理人から任命されることが必要です。
代理人と使者の役割
代理人と間違われやすいのが、使者として役割を果たす人です。
使者とは自分で手続きや契約に関する意思決定を行う権限を持っていません。
単に価格交渉や売却条件の交渉内容を所有者へ伝える役割を持っているだけです。
一方、代理人は所有者に変わって意思表示や意思決定を行うことができます。
不動産の売却価格を交渉して上げたり下げたりする権限を持っているのです。
所有者の判断を仰がずに売却契約を成立させることができます。
使者になった人は、代理人と違って毎回所有者の判断を仰がなければなりません。
いわばメッセンジャーのように、所有者の意向を交渉相手や手続き関係者に伝える役割を果たします。
交渉相手である買い主の希望を所有者へ伝えることもあります。
最終的な決定権は使者には無く、常に所有者が意志決定します。
不動産売却を司法書士や弁護士に委任したほうが良いケース
代理人として司法書士や弁護士に委任したほうが良いケースについて紹介します。
司法書士が得意なケース
司法書士は不動産登記や相続、そして離婚手続きが得意です。
もし不動産を相続し、相続した家族内で利権問題が複雑になるときには司法書士に依頼するのが良いでしょう。
相続と登記手続き、また手続き期間中に起こりえる様々なトラブルに司法書士なら的確に対応できます。
弁護士が得意なケース
不動産売却において弁護士ができることは下記の3つです。
- 不動産の現状確認と調査
- 契約事項のチェック
- 登記簿上の権利関係の確認と整理
不動産を売却する場合、前もって対象になる土地や建物の現状をチェックしなければなりません。
売りたい不動産に法的な制限がかけられていないか、売ろうとしているのが土地であるなら建設できる建物が限定されていないかなどを確認する必要があります。
物件によっては所有者が知らないうちに第三者が家に住み着いており、引っ越しに同意しないこともあります。
もし法的な制限がかけられていたり、土地に建設できる建物が限定されていたりすることを知らずに売却するとトラブルになります。
第三者が住んでいるときにも立ち退きをさせるための手続きをしなければなりません。
ここで取りあげた問題を未然に防ぎ、手続きを円滑に行っていくためには、弁護士に代理を依頼したほうが良いでしょう。
不動産売却を委任する際に委任状が必要な理由
不動産売却を委任する際に委任状を作成する必要があります。
法的には委任状がなくても代理人は活動ができますが、委任状を作っておくならトラブルを未然に防げます。
特に無権代理や表見代理といった問題を防いでいけます。
あまり耳にしない無権代理や表見代理という言葉ですが、どのようなときに発生するのでしょうか。
無権代理
代理権がない人が代理行為をしたときや、委任されている範囲を超えて代理行為をしたときには無権代理となります。
不動産売却において代理人が契約行為をすると有効になりますが、無権代理人によって契約された条項は無効になるのです。
無権代理人が売却契約を結んでも所有者は不動産を売る必要がありません。
仮に契約を破棄して賠償が発生するとしても、所有者自身は責任を負う必要がありません。
表見代理
無権代理の制度は、不動産売却時に所有者の権利を守ってくれるものです。
勝手に契約をまとめた代理人を所有者が無権代理とすることで契約を破棄できるからです。
ただし、契約を破棄された買い主はたまったものではありません。
権限のある代理人だと思って契約したものの、無権代理だったので契約はなしと言われてしまうからです。
そこで買い主の権利を守るためにある制度が表見代理です。
表見代理は所有者が無権代理を主張するときに、買い主が主張すれば表見代理だったとして契約が有効になります。
例えば、所有者がわざと権限のあるように見せた代理人を通して契約をさせたと見なされるなら、表見代理と判断されます。
代理人の行為が正式な代理行為を逸脱していることが買い主側には知ることができなかった場合、さらに代理人の委託有効期限が超過している中で契約がなされた場合に、表見代理と判断されて契約が有効になることがあります。
所有者が無権代理を主張しているにもかかわらず、表見代理が認められると所有者に損害賠償責任が発生します。
無権代理や表見代理の問題が発生しないようにするためにも、事前に委任状で代理人の責任を明確にしておくことが重要です。
委任状を作っておけば余計なトラブルを防げるのですね
少し面倒だと思っても委任状だけは必ず作っておきましょう
でも、どのように委任状を作ったら良いのか分かりません
それでは委任状の作り方を説明していきますね
不動産売却の委任状書式の例をチェックしよう
不動産売却の委任状は法的な要求事項ではないため決まった書式はありません。
自由に作成できますが必要な項目が含まれていないと無権代理になるリスクがあるので気をつけてください。
この記事では一般的に不動産売却で使われている書式を掲載しています。
委任状の各項目
下記の表から委任状に含めておくべき項目を確認してください。
項目 | 内容 |
---|---|
委任者に関係する項目 | 委任者の住所、氏名、署名 |
受任者に関係する項目 | 受任者の住所、氏名 |
その他の項目 | 委任する詳細事項(物件内容、売却金額、手付金、引き渡し予定日、違約金など) 契約の有効期限 |
物件内容には売却物件の住所を含めます。
住所は法務局で手に入る登記簿謄本に書かれている正式な住所を書いてください。
正式な情報を記載することにより、所有者本人が委任状を作成したことを証明できます。
売却金額や手付金などのお金に関する部分は、後からトラブルになりやすい点です。
はっきりと金額を明記するようにしてください。
代理人が価格交渉をする権限を持つのか、権限があるなら売却金額の下限と上限はいくらかも明記しておきましょう。
不動産の引き渡し予定日や、登記申請手続きの情報も含めておくと良いです。
契約の有効期限を書くことを忘れないでください。
有効期限が書かれていないとトラブルが起きたときに無権代理になる可能性があります。
委任状に全てのケースを想定した項目を含めることは不可能です。
そのため、「委任状に記載されていない内容に関しては、その都度所有者本人へ確認するように」といった文言を入れておくと良いです。
委任状書式
一般的な委任状書式を掲載しますので参考にしてください。
委任状 |
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委任者(姓名)(以下「甲」という。)は、受任者(姓名)(以下「乙」という。)を代理人と定めます。甲所有の下記不動産を下記条件で売却することを委任致します。 |
売買物件の情報 (土地) 所在 ○○区○○ ○丁目 地番 ○○番○○ 地目 宅 地 地積 ○○○.○○㎡ (建物) 所在 ○○区○○ ○丁目○○番地○○ 家屋番号 ○○番○○の○ 種類 共同住宅、車庫 構造 鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付3階建 床面積 1階 ○○○.○○㎡ 2階 ○○○.○○㎡ 3階 ○○○.○○㎡ 地下1階 ○○○.○○㎡ |
売却条件 ・売却価格 (金額) ・手付金 (金額) ・引渡の予定日 令和○○年○○月○○日 ・違約金の額 (売却価格に関する任意の割合を記載する) ・公租公課の分担起算日 引渡日 ・金銭の取扱いについて 乙は売却金額を甲の指定口座へ振り込む。 甲は乙が支払った売却手続き費用を支払う。 売却手続きの際の領収書の発行は乙が代理として行える。 甲の指定口座(銀行名、支店名、口座番号) ・委任状に書かれている以外の内容については、その都度乙は甲へ相談しなければならない |
有効期限 現委任状の有効期限は発行日から3ヶ月とする。 何らかの理由がある場合、甲の了承の元に3ヶ月の更新ができる。 以上 令和○○年○月○日 甲(所有者) 住所 氏名 (所有者署名) 印 乙(代理人) (代理人氏名)殿 |
上記委任事項確かに受任いたしました。 令和○○年○月○日 乙(代理人)住所 氏名 (代理人署名) 印 甲(所有者) (所有者氏名)殿 |
委任状作成に必要な書類
委任状作成に必要な書類は下記の通りです。
- 所有者の実印
- 所有者の印鑑証明
- 所有者の住民票
- 代理人の実印
- 代理人の印鑑証明
- 代理人の住民票
- 代理人の身分証明書
委任状作成時に使う印鑑は実印です。
印鑑証明は過去3ヶ月以内に発行されたものを使用します。
不動産売却時には、犯罪収益防止法で本人確認が必要となるため、代理人の身分証明書も用意しておきましょう。
理想的な委任状とは
不動産売却を委任するときの理想的な委任状とは、一目見て記載内容がすぐに分かるものです。
委任状には決まった書式がないため、何を書くかを作成者が決めていかなければなりません。
作成された委任状を見て、代理人は売却手続きや契約を進めていきます。
代理人が委任状を見たときに自分の権限がすぐ分かる内容だと行き違いや勘違いを防げます。
特に売却価格や手付金の価格は、トラブルの原因になりやすいので気をつけてください。
はっきりと価格を書いておくことで、後から売却価格で代理人と揉めることがありません。
不動産売買では大金が動くため、金額が含まれる項目は重要です。
他にも気になる点があるなら禁止事項の箇所に含めておけます。
委任状作成時の注意ポイント
自分以外の誰かが委任状を作成するときには、記載情報に間違いがないかチェックしてください。
司法書士や不動産業者が作成する際は特に注意が必要です。
専門家は大量の顧客や物件を扱っているので、他の案件情報を気づかずに記入してしまうことがあります。
物件の住所や土地情報が正確かどうかを必ず自分で確認するようにしましょう。
自分で委任状を作成する際は記述の最後に、以上と書いてください。
以上という言葉がないと委任状はまだ作成中だと見なされることがあり、第三者に誤情報を追加されて不利な契約が成立してしまうことがあります。
不動産売却は大きな金額が動く取引なので十分気をつけてください。
不動産売却の委任状を作る方法がよく分かりました
次に売却を委任するときに注意すべきことを説明しますよ
不動産売却を委任するときの注意点とは?
不動産売却を委任する際に注意すべき点がいくつかあります。
勝手な値引き
不動産売却を第三者に委任してよく起こる問題が勝手な値引きです。
代理人が所有者に意図しないような勝手な値引きをして交渉を成立させるトラブルです。
所有者としてはこんな安い金額では売れないと言いますし、買い主はあなたの代理人が値引きをしたんだから売ってくれないと困ると主張するのです。
代理人による勝手な値引きを防ぐために、委任状に明確な売却額や、代理人がいくらまでなら値引きができるかを明記しておくことが大切です。
白紙委任になっていないか
白紙委任とは、委任状に空欄がある状態で代理人を任命することです。
項目が空欄になっている白紙委任状では、代理人は法的に認められた契約行為を行えません。
また空欄を代理人や買い主に都合が良いように埋められてしまい、所有者が損をするトラブルも起き得ます。
必ず作成した委任状に空欄がないかどうか確認してください。
代理人に関する注意点
代理人を選ぶときには下記の2つの点に注意してください。
- 信用できる人
- 代理人との連絡手段を持っておく
代理人が行う契約は所有者が実際にした契約と見なされます。
不動産売却の際に、代理人は大きな権限を持つので必ず信用できる人にしてください。
親族や不動産取引の専門家を選ぶと良いでしょう。
委任した代理人といつでも連絡ができる手段を持っておくようにしてください。
代理人は所有者に代わって様々な手続きをしていきますが、時々想定外のことが起きます。
委任状で取り決められていた内容以外の事態が発生することがあるのです。
すぐに代理人が所有者へ連絡を取れるような手段を用意しておくなら、緊急事態でも行き違いを防げます。
遠隔地の不動産売却は誰に委任すべきか
遠隔地にある不動産売却を第3者に委任しなければいけない場合、誰に委任するのが賢い選択なのか考えてみましょう。
遠隔地の地域に詳しい人か業者
委任する相手は遠隔地の不動産情報に詳しい人にすべきです。
地元の情報に詳しい人であれば、売却する不動産に有利な情報を持っていることがあるからです。
例えば、自分が売りたい不動産の近くに24時間営業のスーパーや保育園が建設されたなどの情報を知っているかもしれません。
または、将来建設される計画があると知っている可能性もあります。
24時間営業のスーパーは独身や家族世帯に人気がありますし、保育園は子育て世代にとって魅力的なポイントです。
これらの情報を持っているなら不動産を予想よりも高い価格で売れるかもしれません。
有利な条件で不動産売却を成立させるには、地元の情報に詳しい人へ委任しましょう。
遠隔地に誰も委任できる人がいない場合はどうする?
委任できるような知り合いや不動産業者を知らないときにはどうしたら良いでしょうか。
不動産一括査定サイトのサービスを活用できます。
このサービスは、売却したい不動産に関心を持つ業者を効率的に探せるツールです。
最初に不動産情報を入力するだけで、複数の業者の査定額を知ることができます。
不動産相場をつかめますし、遠隔地に詳しい不動産業者と知り合うことが可能です。
共有持分の不動産売却を委任する際の注意ポイント
共有持分の不動産売却を委任するときに覚えておきたい注意ポイントを紹介します。
共有者全員での話し合い
親の家や土地を子供たちが共有持分の不動産として相続している場合、相続者全員で話し合う必要があります。
共有している全員の承諾がなければ売却契約を誰かに委任することができません。
自分の共有持分だけを売りたいと思っても、他の兄弟たちの同意がなければ勝手に契約を結ぶことができないため、話し合いが必要となります。
委任する人を決める
売却を誰に委任するか決めていかなければなりません。
子供たちが共有持分の不動産を持っているケースでは、信頼できる親族や知り合いの不動産会社などへ委任できるでしょう。
離婚ゆえに夫婦で共有していた不動産を売却したいときには、離婚手続きなども同時にできる弁護士や司法書士へ依頼することができます。
売却価格を定める
共有持分の不動産売却でトラブルになるのは売却価格です。
契約がまとまった後に共同所有者の1人が、もっと高く売れたはずとクレームを付けることがあるのです。
代理人に委任する前か委任する際に、全員が納得できる売却価格を明確に決めておきましょう。
委任状に売却価格を明記しておくとトラブルを防げます。
不動産売却を成年後見人に委任する際の注意事項
不動産所有者が認知症などになって、売却を適切にする判断能力がないケースがあります。
このケースでは、成年後見人に売却が委任されます。
成年後見人とは
成年後見人とは、家庭裁判所が選任する代理人のことです。
不動産所有者が病気などの原因で契約を行う判断能力がないと見なされたとき、家庭裁判所が当人の財産や権利を守るために成年後見人を任命します。
成年後見人の制度があることにより、認知症になった不動産所有者がだまされて不当に安い値段で不動産を売らされる被害を抑えられます。
一般的に成年後見人になれるのは所有者の子供です。
子供が成年後見人として選任されたなら、親の代わりに不動産売却契約を代理人として行っていけます。
成年後見人には簡単になれない
成年後見人になるには所定の手続きをしなければならず、簡単になれる訳ではありません。
なぜなら成年後見人になることで、親の代わりに不動産売買ができるだけではなく、親の預金口座なども下ろせるようになるからです。
親の財産に関係したすべての手続きをする権限を持つため、所定の手続きをした人だけに家庭裁判所が権限を与えます。
手続きをするには下記の書類が必要です。
- 後見開始申立書
- 申立付票(成年後見人が必要となる事情を説明する内容)
- 後見人等候補者身上書
- 親族関係図
- 所有者の財産目録
- 所有者の収支予定表
- 所有者の健康診断書
- 所有者及び後見人等候補者の戸籍謄本
- まだ成年後見人候補者が成年後見等の登記がなされていないことの証明書
書類を揃えて家庭裁判所へ申請をし、5ヶ月前後で申請が受理されます。
申請中は成年後見人として活動することはできません。
裁判所から成年後見人と選任された後に不動産売却の手続きや契約をしていけますが、売却の際には価格検証のために家庭裁判所から許可が必要となります。
成年後見人として売却契約を完了するためには、家庭裁判所の最終的な許可が必要となることを覚えておいてください。
不動産売却を委任したときに価格でもめない方法
この記事の中で不動産売却を委任した際にトラブルになる原因が売却価格であると何度か説明してきました。
価格で揉めないための方法の1つは、前もって売却価格の相場を知っておくことです。
相場を知ることで、売却価格に望外な金額を期待することがなくなります。
不動産売却の相場を知る方法は3つあります。
- 近隣の取引価格を調査
- ポータルサイトを使う
- 土地の評価額を把握する
それぞれの方法について説明していきましょう。
まずは売りたい不動産がある近隣の取引価格を調査する方法です。
売却予定の不動産に似ている物件がいくらで取引されているかを調査します。
似たような取引を見つけるには、下記の条件が自分の不動産と同じでなければなりません。
- 近くの駅
- 駅からの距離
- 面積
- 間取り
- 築年数
上記の条件が同じでないと参考になる情報を見つけられないので気をつけてください。
近隣の取引価格を調査するときに役立つのが、国土交通省の土地総合情報システムです。
土地総合情報システムは、全国の不動産取引の情報を網羅しているデータベースです。
取引時期や不動産条件などを入力していくと、自分の不動産と似た取引価格を知ることができます。
レインズ・マーケット・インフォメーションというサイトも価格調査で役立ちます。
不動産市場の全てのデータを網羅しているサイトで、実際に成約された取引価格を知ることができます。
似た条件の過去1年間の取引価格をグラフで確認することも可能です。
ポータルサイトを使って不動産売却の相場を知ることもできます。
民間の不動産会社のサイトを見て調査していく方法です。
売却したい不動産と似たような物件が、いくらで売りに出されているかを調べてください。
リサーチするときに注意したいのは、ポータルサイトに出ているのは売り出し価格であるということです。
売り出し価格は不動産所有者が売りたい希望価格であって、最終的な成約価格ではありません。
通常は売り出し価格から値引きが行われ、最終的な成約価格になります。
不動産売却の相場は、サイトに掲載されている価格より低くなると考えてください。
不動産売却の相場は、土地の評価額を把握することによっても調べられます。
もし売却したい不動産が建物ではなくて土地であれば、この評価額を知ることで相場を把握できます。
土地の評価額は、立地条件や広さなどの要素を考えて決められます。
国土交通省の不動産取引価格情報検索サイトを使って土地の評価額は調べられます。
他には国税庁が毎年7月に発行する路線価図・評価倍率表や、固定資産税評価額からも評価額を計算していけます。
計算が面倒ですぐに調べたいときは、不動産取引価格情報検索サイトを使うのがおすすめです。
不動産売却の委任で揉めないようにするには、前もって相場を知っておくことが役立ちますね
はい。代理人による契約がスムーズにいくように出来る準備は何でもしておきましょう
まとめ
不動産売却を委任するときには、代理人の選定と委任状の作成に注意が必要です。
代理人は信用できる人でなければなりませんし、いつでも連絡が取れるような手段を確保しておかなければなりません。
もし遠隔地の不動産を売るときには、地元の状況をよく知っている人に委任してください。
共有持分の不動産売却のケースでは、前もって共同所有者の間でよく話し合うことと納得する売却価格を決めておくことが重要になります。
前もって相場を知っておくなら、相場に見合った売却価格をすぐに決められます。
委任状を作成する際には、記載情報に間違いがないか、空欄がないかなどを確認します。
書類の最後に以上と書かれているかもチェックしてください。
委任状書式は自由ですが、ここで掲載した書式例を参考にすればトラブルを未然に防げる委任状を用意していけるでしょう。