不動産原状回復ガイドラインとは?費用はオーナーの負担?疑問を一気解決

不動産原状回復ガイドラインとは?費用はオーナーの負担?疑問を一気解決

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入居者が退去する際には「原状回復」を行いますが、高額な修繕費用を請求されたり、敷金が戻らなかったりするため、オーナーと入居者の間で問題になる事が多いです。

オーナーサイドも修復して欲しい言い分はあるので、お互いに話がまとまらず裁判になるケースも少なくないです。

こざかな生徒
こざかな生徒

この様なトラブルにならないためにも、どうしたら良いのでしょうか。

こちらの記事では、原状回復の解説をしています。

クジラ先生
クジラ先生

費用の負担はオーナーになるのか?又は入居者なのか、気になる疑問もこちらの記事を読む事で解決できます。是非、ご覧になってください。

原状回復の内容とは?

国土交通省が確立した原状回復ガイドラインは、問題を防ぐために、判例に基づいて作成されたものです。

原状回復の定義は、「善管注意義務違反、入居者の故意や過失、さらに普通の使用を上回る時にできた損耗は元通りにする」としています。

定義にある「損耗」について詳しく3種類にガイドラインでは分けています。

  1. 月日が経つ事によって自然に古びたことを、経年変化という
  2. 通常の生活で汚れやキズができる損耗のことを通常損耗という
  3. 善管注意義務違反、借主の故意、普通の生活以上でできた損耗

ガイドラインでは、③番に当てはまる時、入居者が支払うよう設定しています。

他の①、②の損耗等は、オーナーが負担する事としました。

ちなみに、善管注意義務とは、民法第400条にある「善良な管理者の注意義務」の条文に由来したものです。

例えば、入居者が壁に穴を空けてしまったり、ペットの多頭飼いによって部屋に多大な損傷を負わせてしまったりなど、そう言った場合は善管注意義務違反にあたり、入居者は支払う事になります。

具体例

通常は入居者が、最初に入った時の部屋に戻さなくてはいけないのですが、月日が経った劣化まで負担しなくても良いとされています。

例えば、

  • ソファーを置いていたフローリングに、ソファーの脚の凹みがついた場合

【通常の生活の中でできた損耗なので、入居者が修繕費を支払わなくても良い】

入居者が支払うものは、自分の不注意で破損したものや、汚してしまった損耗です。

例えば、

  • タバコを室内で吸っていたので、部屋のクロスが汚くなってしまった場合

【喫煙による故意になるので、壁紙の修繕費用は入居者が支払いをする】

オーナーが負担するケース

原則としてオーナーが負担をするのは、普通の生活でできる損耗や、月日が経って劣化した損耗です。

例えば、こちらになります。

オーナーが負担するケース
  • テーブルやベッド家具などによる床の凹み
  • 壁に飾ってあった絵画やポスターの跡
  • 陽光によってクロスや畳の色が変わる 等

「経年変化」とは、時間が経つに連れて劣化してしまう事で、陽光により壁紙や畳、フローリングが色あせてしまったり、湿気によりカーテンレールが錆びてきたりする事を言います。

「通常損耗」とは、ソファやテーブル、ベッドなどの家具を設置する事によってできる床の凹みや、トーストや冷蔵庫、TVの裏にできる電気焼けの黒ずみなど、通常の生活でできてしまう汚れの事を言います。

また、画鋲やピンの穴は、通常の使用とみなされ通常損耗に入るとのこと。

入居者の故意でないものは、大体がオーナーの負担です。

損耗の補修費は、既に毎月の家賃に含まれているとしています。

しかし、契約時に特約を設定すると、自然に劣化したものや、普通の生活で生じる損耗でも、オーナーが支払わなくても良い場合があります。

オーナーが負担しなくても良い特約

月日が経ち劣化した損耗はオーナーが支払いをして、自分で破損してしまった損耗は入居者が支払うものです。

しかし、契約書に「特約」を記載し、オーナーと入居者が合意する事によって、劣化した損耗は、借主に支払って貰う事ができます。

以下の様に金額を詳しく記載します。

「退去時にこちらの費用を入居者が支払うものとする」

  • クリーニング費用4万円
  • 水回りの消毒費用1万円
  • 鍵の費用1万円

この様に特約を設定すると、入居者は支払わないといけません。最高裁判所も認めています。

ただし、特約を交わしたからと言って、何でも入居者に負担させる事はできません。

よくあるケースだと「劣化した損耗の修繕費は、入居者が支払うものとする」と金額の指定がなく詳しく明記されていない抽象的なものは、特約の効力はないです。

また、劣化した損耗によって、壊れていたり、変色していたりした箇所は、入居者に支払いをさせられないです。

特約は、下記の理屈や道理に合ったものが条件になります。

  1. 特約の必要性があり、且つ、不当な利益ではないなど、道理的な理由がある事
  2. 入居者が特約により、普通の原状回復以上の補修の必須を承知している事
  3. 入居者が責任の意思がある事

入居者が負担するケース

入居者が支払う時は、善管注意義務違反や自分の不注意で壊したもの、普段の使用を上回る時です。

例えばこちらです。

  • タバコによる床の焦げ跡
  • エアコンから発生したカビ
  • 引越しの際に壁に傷を付けた

入居者の故意の損耗はタバコの煙で壁紙が変色する事や、タバコの焼け焦げの跡です。

不注意のため過失した損耗は、引越し作業でキズを付けてしまったり、鍵を紛失したり、カーペットにジュースなどをこぼして、シミやカビになったりしたもの。

入居者が部屋の掃除をせずに発生した損耗は、エアコンの水漏れをそのままにしてしまった事が原因の黒ずみやカビ、キッチンの油汚れ、冷蔵の下にできたサビ跡などです。

他の損耗は、酔っ払って壁に穴を空ける、天井に取り付けた照明のネジ跡、壁紙の落書き、ペットの傷や臭いなどです。

明文化された敷金

入居者が退去する際には、原状回復をしますが、オーナーが入居者の敷金から原状回復にかかってしまう費用を引いて、返金する事がよくあるというもの。

当時の原状回復とは、何で費用がかかったか詳細を提示していた訳でなく、規定もなかったので、よくトラブルになっていました。

問題を防ぐためにも、ガイドラインに基づいた考えで、2020年4月1日から改正民法が施行され、明文化されました。

民法621条 賃借人の原状回復義務
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合に置いて、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

ガイドラインと、ほとんど一緒になります。

入居者の故意の損耗は、修繕する責任がありますが、月日が経ち劣化した箇所や、普通の生活でできた損耗は、入居者が支払わなくて良いという事です。

さらに敷金についてはこちらです。

第622条の2(敷金)
1.賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃貸権を譲り渡したとき。
2.賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済にあてる事ができる。この場合に置いて、賃借人は賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

引用元:法務省 民法の一部を改正する法律について

改正前は敷金について詳しくしていませんでした。

改正されてからは、定義も上記の様に、定められたのでオーナー側は、「敷金を補修に充てるので敷金を戻さない」という事ができなくなりました。

よって入居者に敷金から家賃の支払いをする様に請求はできないです。

家賃を滞納していた場合は、敷金にあてる事はできます。

原状回復の割合や相場・期間

オーナーは自然に劣化した損耗を支払い、入居者は自分で壊した損耗を支払う事が分かりました。

それぞれオーナーと入居者の区分を確認してみましょう。損耗の具合では違ってくる事もあります。

オーナーの負担入居者の負担
畳などの床の補修画鋲の穴陽光による変色TVの後ろにできるシミバスルームの取り替え地震で破損した窓ジュースなどこぼしてできたシミ鍵の紛失キッチン周りの掃除不足でできた汚れペットの臭いや傷

上記以外にも色々項目はありますが、負担はオーナー側が多いと言えます。

2020年の改正民法からオーナーが支払う項目が増えました。

ガイドラインでは画鋲の穴もオーナーが回復するものとしていますが、気になるようなら原状回復を行いましょう。

しかし、次の入居者募集を考えると、部屋を綺麗にしておいた方が、賃貸契約に繋がるので、行うべきです。

特に壁紙は、経年劣化の汚れや、画鋲の穴などは、壁紙を張り替えるだけで綺麗になります。

オーナーが支払う原状回復は、次の借主のためなので支払うのは当たり前のこと。

納得のいかない損耗は、退去した入居者に支払って貰おうと考えられるので、管理会社に相談したり、消費生活総合センターに相談したりしましょう。

経過年数の捉え方

入居者が過失してしまった所は、入居者が支払うものですが、実は故意などによる損耗でも、月日が経って劣化した損耗は、全額支払わなくても良いとしています。

例えば、畳にタバコの焼け焦げを付けてしまった場合、入居者の責任になります。

ところが、汚れた畳も劣化していて、その分の修繕費用はオーナーの負担になるため、差し引いた金額を入居者は支払います。

クジラ先生
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こざかな生徒
こざかな生徒

そうなんですね!勉強になります!

設備などの耐用年数はこちらです。

年数設備
5年キッチンシンク
6年壁紙クロス、畳、カーペット、エアコン、ストーブ、冷蔵庫、ガスレンジ
8年戸棚、タンス、金属製以外の家具
15年トイレ、洗面台、衛生設備、金属製の備品

入居者が壊したり汚してしまったりしても、減価償却を基に考えられているので、経過した年数で負担が減るという訳です。

支払う比率

経過した年数で支払う比率が違ってきますが、入居した年数でも異なります。

新築で入居した場合

  • 新築の家で、入居者が直ぐに畳を汚して張り替えする場合、入居者が全額支払い
  • 入居してから3年経ち汚れてしまった畳を張り替える場合、オーナーと入居者が5:5の割合で支払う
  • 6年経ち、畳を張り替える事になった場合は、オーナーが全額支払い

築年数が経っている家に入居した場合

  • 畳がすでに3年経っていて、入居者が直ぐに汚して張り替える場合、5:5でオーナーと入居者が負担
  • 畳がすでに6年経っていて、入居者が汚して張り替える場合、全額オーナーが支払い

この様に、年数によってお互い支払う金額が変わってきます。

事前に経過した年数を把握しておきましょう。

そのためには、確認リストを作成すると良いです。

ガイドラインにリストが載っているので、契約前にオーナーと入居者で細かくお互いチェックしておきます。

法律で決められたものではないので、「支払う比率」を契約前にお互い決めておくと良いでしょう。

修繕費の相場どのくらいかかるの?

原状回復にはどのくらいの費用がかかるのか、箇所別に相場を紹介します。

価格は業者によって変わってきます。

箇所価格
クリーニング(1R〜3LDK)20,000円〜60,000円程度
鍵の取り替え10,000円〜20,000円程度
畳の張り替え約3,000円〜5,000円/帖
床、カーペットの張り替え約2,000円〜3,000円/㎡
壁紙の張り替え約1,000円〜2,000円/㎡
網戸の張り替え2,000円程度
床の凹みやキズ補修10,000円〜60,000円程度
フローリングの張り替え約20,000円〜100,000円/㎡

上記を参考に原状回復費用を算出できます。

およその原状回復費用を出す計算式は2つあります。

  • 修繕費用×箇所=原状回復にかかる費用

鍵の取り替えが3つあったら、「20,000円×3=60,000円」鍵の費用は60,000円かかるという事です。

壁紙やフローリングなどの、費用を出すためには、

  • 修繕費用の価格×面積=原状回復の費用

ワンルームマンション(25㎡)の壁紙を張り替えるとしたら、「1,000円×25㎡=25,000円」壁紙の費用は25,000円かかります。

不動産投資をしているオーナーとして、原状回復費用が大体どのくらいかかるか算出しておいた方が良いです。

また、簡単に費用を出す方法があり、「5,000円/坪」として考える事です。

例えば、10坪(33㎡)の1LDKの原状回復費用はおよそ、50,000円かかるなと予算を立てられます。

壁紙の張り替えと、床の補修を行ったとしたら

壁紙1,000円×33㎡+補修10,000円=43,000円となり、費用の基準を出すには「5,000円/坪」で算出すると良いです。

退去の時のために、原状回復費用を備えておかなくてはいけません。

平均的に入居者は、5年前後の入居期間になります。

原状回復費用を準備するために年間で予算を立てる事ができます。

計算式はこちらです。

  • 5,000円/坪×面積÷入居年数=費用の予算

例えば10坪の1LDKの入居年数が4年だった場合は「5000円/坪×10坪÷4年=12,500円」になるので、毎年12,500円を原状回復費の予算として貯めておく事をおすすめします。

あくまでも目安の計算になるので、実際の費用は、補修する箇所の単価をしっかり確認しておきしょう。

作業にかかる期間

原状回復の期間は2週間〜1ヶ月程度かかります。

部屋の広さや、状態にもよりますが、大体長くても1ヶ月を目処にしておくと良いです。

早い場合は、3日程で作業が完了する事もあります。

クロスの張り替えや床の補修、ハウスクリーニング程度なら直ぐに終わってしまいます。

原状回復の期間は作業中だけではなくて業者に依頼する所から始まりです。

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見積もりをいくつかの業者から出してもらい、良さそうな業者を選び依頼して、作業スケジュールを組んでいくとなると、期間がどうしても必要になります。

また、引っ越しが盛んな春に依頼すると、業者が忙しくて、中々原状回復が進まない事もあり得ます。

クジラ先生
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こざかな生徒
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入居者の退去が決まったら、なるべく早く原状回復の予定を立ててスムーズに終わらせることが大事ですね!

業者に依頼

原状回復工事を進めるには、最初に業者へ依頼する事から始まります。

業者は沢山ありますが、スムーズに進めるなら管理会社から業者を紹介して貰うのが良いです。

自分でいくつかの業者に見積もりを出して貰うのもおすすめですが、信頼できる業者を選ぶには時間がかかってしまいます。

管理会社から業者を紹介して貰えれば、そう言った手間もはぶけ、管理している物件の原状回復に慣れているので、早く作業が終わるというもの。

しかし、管理会社からの紹介だと「紹介手数料」がかかる事もあります。

そのため、スピーディーに原状回復を終わらせたいのであれば、コストがかかるけど管理会社から業者を紹介して貰うのが良いでしょう。

時間に余裕があるのなら、自分自身で原状回復の専門業者に依頼しましょう。

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原状回復の事例

敷金からクリーニング代や補修費などを引かれる事で、問題となるケースが多いです。

2020年4月から改正民法が施行されたので、今後はこの様なトラブルは少なくなるかと予想されます。

トラブル件数を年別に見てみましょう。

年度2017201820192020
相談件数13,20912,49811,7935,095

引用元:独立行政法人国民生活センター 賃貸住宅の敷金・原状回復トラブル

※相談件数は2020年9月30日までのもの

原状回復トラブルは2017年から見ると年々減少傾向にあります。

2020年は大幅に件数が少なく見えますが、9月30日までの件数です。

敷金の明文化がされたとは言え、今後もトラブルが起きない様に、過去の判例を紹介するので参考にしてみてください。

特約が無効になった事例

以下より要約

原状回復にかかる判例の動向

【事例30】

東京地方裁判判決(敷金43万円:返還43万円)

入居者の家賃が21万円で、入居の際に敷金43万円と礼金43万円をオーナーに支払いました。

期間は2年間で、契約書には「入居期間に関係なく、障子・網戸・襖・畳の張り替えと、ハウスクリーニングは賃借人の負担にすること。経年劣化による損耗は割合表で取り決める」という特約をオーナーは付けました。

入居者の実際の入居期間は10ヶ月程度です。

1年も経たずに退去し、明け渡した所、オーナーは原状回復費用が48万円だと主張して、入居者に敷金を返金しませんでした。入居者は敷金を取り返すため、提訴。

裁判所では、「経年劣化した分も特約に定めたのは、認められない。金額も明確にされていなかったため、特約が合意されているとは認定できない。加えて礼金43万円を支払っているのに、入居期間10ヶ月だけで敷金全額支払う事について、合理的な理由はない。」として、敷金は返還されたのです。

特約は、合理的な内容でないと有効にならないので、お互いの合意の上で交わしましょう。

特約が有効になった事例

【事例18】

東京地方裁判所判決(敷金41万円:返還35万円)

賃料13万円で契約を結び、入居者はオーナーに敷金41万円支払いました。

契約書の特約に「リフォーム、設備の補修、ペットの消毒は入居者の負担とする。専門業者に依頼する。」と付けました。

入居者は小型犬を飼っていて、ほとんどゲージの中に入れて飼育。

1年半年後に入居者は退去し、オーナーに明け渡しました。

オーナーは、原状回復費用50万円請求し、入居者は納得いかず、敷金を取り返すため、提訴。

裁判所は、「原状回復といっても全てを補修するものではない。また、入居者の故意による損耗ではないのでリフォーム費用を負担する必要もない。ただし、ペットの飼育に関しては、臭いや毛が残っていて不衛生な点があるため、特約は効力がある。

特約の効力が全ての項目にあてはまった訳ではないですが、消毒費用は請求できたので、消毒費用を差し引いた敷金を入居者に返還となりました。

返金をしなくても良いとなった事例

【事例39】

東京地方裁判所判決(敷金31万円:返還0円)

家賃15万円として敷金を31万円支払って、賃貸契約をしました。

入居者は、大体10年の入居期間で契約解除。

退去の際に家賃14万円分が滞っていたため、賠償金29万円が入居者の支払い義務になりました。

オーナーは修繕に充てるため、入居者に返金しませんでした。

入居者はこれに納得いかず、敷金31万円の返金をするため提訴。

裁判所は、「入居者は10年の入居期間だったので、経年変化の損耗に対して支払う義務はないと主張したが、実際、普通の生活以上でできた損耗が多くあったので認められない。よって、オーナーが入居者に敷金を受け取るべきだ。」となって、オーナーは敷金を全額原状回復に充てられました。

経年変化の損耗でも、借主の扱い方では修繕費用を請求できるという事です。

原状回復トラブルにならないためには

入居者とオーナーの間で退去時、原状回復費用で揉めないために、事前に確認をする事でトラブル回避に繋がります。

確認しておくポイントを紹介します。

クジラ先生
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こざかな生徒
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勉強になります!

入居前に確認しておく

原状回復は入居者が、入居した時の部屋の状態に戻しておく事です。

入居した時の状態を、最初から入居者とオーナーは、お互いに確認しておく必要があります。

新築の賃貸ならさほど気にしなくても良いですが、築年数が経っている賃貸なら、最初から損耗している箇所をオーナーは、入居者に伝えておくべきです。

入居者も入居してから直ぐに損耗している所がないか、部屋をチェックすることで、お互い入居した時の状態を把握しておけるというもの。

トラブルへと発展しないために、入居する前の状態を隅々まで確認しておきましょう。

契約時に説明しておく

不動産の賃貸借契約をする時には、重要事項説明をしてから契約を結びます。

重要事項説明の中には、原状回復の内容も盛り込まれており、入居者はきちんと説明を受け、合意の下で契約。

重要事項説明をする際に、東京都では次の条例を説明しています。

  • 修繕や管理をする際の連絡先
  • 入居している間は、損耗の補修をオーナーが行うこと
  • 退去の後の通常損耗に対しては、オーナーが行うこと
  • 賃貸借契約で、入居者の負担となる事項

引用元:東京都住宅政策本部 賃貸住宅紛争防止条例

オーナーの負担する部分が増えた条例です。

原状回復ガイドラインでは、賃料に補修費用が含まれていると考えられているので、この様な条例となっています。

しかし、退去した後に気づかなかった故意による損耗があった場合、修繕費用を全額オーナーが負担するのは納得いかないでしょう。

そういった時は、不動産取引特別相談室や、消費生活総合センターに相談してください。

問い合わせしても結局の所、トラブルを解決するためのアドバイスや、情報を提供してくれる窓口になるので、参考にはなりますが、実際の金銭による解決はできないです。

管理会社が中に入っている場合は、管理会社に連絡して話し合うのが良いでしょう。

入居期間中の毀損を確認

入居者の故意による損耗でなかったとしても、部屋の備品や設備などが壊れてしまう事が時にはあります。

その際に、入居者は直ぐにオーナーへ報告するべきです。

どちらの責任になるのか分からない場合でも、入居者がオーナーへ伝える事で、オーナー側も対応できます。

入居中の毀損を早く確認できると、原状回復トラブルへとは発展しにくくなるでしょう。

契約違反はないか

重要事項説明には、入居者の禁止事項があります。

禁止事項の中に、タバコに関するものや、ペットの内容などが記載されています。

タバコに関しては、禁煙の規定があるにもかかわらず、部屋の中で吸っていたり、タバコの焼け焦げができたりした場合、入居者の負担です。

また、ペット禁止と説明を受けていたのに、実際にはペットを飼っていて、臭いやキズ跡がある場合も、入居者の負担になります。

他にも、禁止事項で説明を受けたものに関して、入居者が契約違反をしていたら、入居者が支払うのは当然な事なので退去時にしっかり確認しておきましょう。

退去時に仲介して貰う

入居者が退去する時に、部屋の状態を確認してから、どちらが負担するものなのか、原状回復の判断をします。

不動産会社に仲介を依頼するのがおすすめ

部屋の状態を確認する際には、入居者とオーナーだけで決めずに、第三者の業者や管理会社にも立ち会って貰います。

そうする事で、お互いにとって納得のいく原状回復になるでしょう。

また、オーナーは、原状回復費用の詳細を入居者へ伝えるべきです。

原状回復の箇所は、お互い納得いくものであっても、かかった費用が曖昧だと、トラブルになりかねません。詳細は入居者へ伝えておきましょう。

お互いが信頼できる関係

オーナーは入居者に対し、快く生活して貰うためにも、誠実に接する事が大切です。

契約書の取り決めも大事ですが、お互いに信頼し合えれば、トラブルにはならないもの。

入居者も信頼のあるオーナーだと感じているなら、部屋の手入れをしっかり行い、禁止事項など守って対処してくれるでしょう。

物が毀損した場合など、直ぐに連絡を取り合えると良いです。

トラブルへと発展したら

トラブルへと発展したら

もし、入居者とトラブルへと発展してしまったら、管理会社が中に入っていたとしても、入居者とオーナーの直接のやり取りになってきます。

裁判になる場合は、民事調停になるケースがほとんどです。

民事訴訟よりも簡単な手続きで、手数料も半額、また期間も短く済むため、民事調停は利用しやすいです。

入居者とオーナーが合意するまで行われるので、納得のいく解決策と言えます。

また、原状回復保証サービスを行っている事業があるので、原状回復の対応に手間がかかると思うなら、保証サービスを利用するのも良いでしょう。

利用する事で、入居者やオーナーがそれぞれの負担費用を考えなくても良いので、トラブルを防げます。

まとめ

ガイドラインでは、「入居した時の部屋の状態に回復する」と記されていますが、通常損耗などで生じる損耗に対してまでは、入居者は負担しなくても良いとされています。

オーナーの負担になる項目は、民法が改正されてから増えましたが、特約を設定する事で全て負担する必要はなくなります。

入居した年数や、備品などの経過年数でも負担する割合は変わってくるので、しっかりお互い合意の下で取り決めてください。

また、原状回復の費用は業者によって異なるので、早めに見積もりを出しておきます。

次の入居者が入るタイミングを逃してしまっては、勿体ないのでスケジュールを組んで進めておきましょう。

問題を回避するためには、入居した時の状態をお互い把握しておく事が大事です。

入居者とオーナーが信頼し合っていれば、トラブルにもなりにくいです。

色々と手間を感じるなら、原状回復保証サービスを利用する事をおすすめします。

原状回復トラブルは年々減っています。

今後もトラブルにならない様、こちらの記事を参考に対策をしてみてください。

この記事の監修・執筆者

未来不動産コンサルタント株式会社

代表取締役 小川 樹恵子

保有資格:不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸経営不動産管理士、FP2級、証券外務員2種、貸金取扱業務取扱主任者

【本サイト(鯨鑑定士の不動産売却・投資)のメイン監修者】2007年から2014年の間に、個人の不動産鑑定事務所ほか、住友不動産株式会社に勤務し、不動産鑑定評価実務や不動産売買の経験を積み、「不動産の鑑定評価から売却・購入までワンストップ対応!」をモットーに、2014年未来不動産コンサルタント株式会社を設立し、現在は、不動産鑑定・不動産売買のほか不動産実務等の講師なども務めている。

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