土地と言っても、普通の不動産と同様な売却の方法を行うことは農地ではできません。
そのことを知らずに『農業を営んでいた両親から農地を相続したが、手放したい。でもどうすればいい』といったように、農地の取り扱いに困っている方も少なくありません。
そこで、農地を売却するにはどういう方法があるのか、どういった手続きが必要なのか、この記事で徹底解説します。もちろん農地を売却する際の流れや注意点も網羅していきます。
はい!お願いします!
目次
農地の種類は5つ。区分によって売却のしやすさも違う
農地の売却について知る前にご自分の農地の区分について知っていますか?
農地と一概に言いますが、農地には5つの種類があり、どの種類に区分されるかによって売却できなかったり、売却できたりします。
そのため、まずご自分の所有している農地がどの農地かを確認することからはじめましょう。
農地は5つの区分に分けられている
農地には次の5つの区分があります。
自分の農地がどの区分に当てはまるのかを売却前に、正しく知っておきましょう。
農地区分 | 定義 | 農地の状況 |
農用地区域内農地 | 市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地 | 生産性の高い優良農地 |
甲種農地 | 市街化調整区域内農地の ・農業公共投資後8年以内農地 ・集団農地で高性能農業機械での営農可能農地 | 生産性の高い優良農地 |
第1種農地 | ・集団農地(10ヘクタール以上) ・農業公共投資対象農地 ・生産性の高い農地 | 生産性の高い優良農地 |
第2種農地 | ・農業公共投資の対象となっていない小集団の生産力の低い農地 ・市街地として発展する可能性のある区域内の農地 | 小集団の未整備農地市街地近郊農地 |
第3種農地 | ・都市的整備がされた区域内の農地 ・市街地にある区域内の農地 | 市街地の農地 |
引用元:農業水産省ホームページ
定義の表現が専門的なので、自分の農地がどの種類に区分されるのか明確に分からない場合は、所属する農業委員会に問い合わせて確認しましょう。
役所の農政課などでも教えてくれるはずです。
農地の売却方法は、農地として売却するか、または転用するかの2択
前項では、農地の定義について解説しました。
普通の土地とは違って、複雑な定義が設けられていることが分かったのではないでしょうか。
さらに農地の売買は簡単にできない仕組みになっています。
それは、国にとって農地は、食料を生産できる貴重な土地という考えがあるからです。
例えば、農地を購入できるのは地域の農業委員会から許可を受けた農業従事者または農家ということになります。
つまり、「農業をはじめたい」と思っても、農地をすぐに購入できませんし、その反対に「農地を売りたい」と思っても誰にでも好きなように売ることができないのです。
それを定めているのが農地法です。
農地の保護や権利関係に関する法律で、農地の売買や貸し借り、転用などに規制を設けています。
この農地法によって認められている、農地を売却する方法は次の2つだけです。
- 農地を農地として売却する(法律:農地法第3条「耕作目的での権利移動」)
- 農地を農地以外に転用して売却する(法律:農地法第5条「転用目的での権利移動」)
どちらを選択するかはご自身で判断することもできますが、細かな規定がありますので、農地売却を検討しているのであれば、まずは役所に出かけて事前に相談するといいでしょう。
農地法3条であれば場合は農業委員会、5条であれば都道府県または市町村となります。
それでは、次の項目からは農地を売却する2つの方法を解説します。
農地を農地として売却するには農業委員会の許可が必要
農地を農地のまま売却する際は、農業を営んでいる農家か農業生産法人にしか売却できません。
取引がスムーズにいき、売却先が決まっても農業委員会の許可を得る必要があります。許可を取らずに売却してしまうと法律違反として刑罰を受けることになりますので注意が必要です。
条件が厳しいのですね…。
ここまででもかなり厳しい条件ですが、そのほかにもまだ条件がありますので、詳しく見ていきましょう。
農地を農地として売却するには
農地を売却するには、売却する相手が農家や農業生産法人でなければなりませんが、同時に以下の4つの基準を満たしていなければなりません。
- 専業の農業従事者である
- 耕作面積が50ヘクタール以上である
- 所有しているすべての農地を耕作している
- 農業を行うのに適した人材・機械を所有している
つまり、これから新しく農業をはじめたい人にも売却できません。
また、投資目的で土地を取得したいといった考えの人にも売却はできません。
こうした理由で買主が限られるので、不動産会社で査定してもらうと査定価格は低く抑えられてしまいます。
農地を売却したくても、希望の価格で売却できないばかりか、買主をすぐに見つけることは難しいのが現状なのです。
農地のまま売却する際の流れ
通常の土地売買と農地の売買との違いは、農業委員会の許可が必要になることです。
どのような流れになるのか、追って見ていきます。
- 買主を探す
- 売買契約を締結する
- 農業委員会に農地法3条許可申請を行う
- 引き渡しをする
注意することは農業委員会の許可に時間がかかることです。
そのため並行して売却を進めていくことが一般的です。
具体的な流れについてそれぞれ見ていきましょう。
買主を探す
農地の売却相手を見つけるには、主に次の4つの方法が考えられます。
近隣の農家や農業生産法人に相談してみる
一番簡単なのは近隣の農家などに、農地を拡大する予定はないか聞いてみることです。
農家同士のネットワークもあり、「農地を広げたい」と思っている農家を紹介してくれる可能性もあります。
農業委員会の斡旋制度を活用する
農業委員会では、斡旋申込書などを提出すると農地の売買を斡旋してくれる精度があります。農業関係者との繋がりは幅広く、購入意欲のある農家などが登録されていることもあり、その際はスムーズに売買が成立することもあります。
農地を売却するのに斡旋制度を使うと、税法上の優遇が受けられるというメリットもあります。
ただし農業委員会によっては、斡旋制度を取り扱っていなかったり、購入候補者の登録がないこともあります。
農業公社へ売却する
各都道府県には農地合理化法人(都道府県農業公社)が設置されており、同法人に農地を売却したい旨を申し入れると、農地を買い取ってくれます。
もちろん審査があり、希望の額で売却できるかは審査の結果次第です。
都道府県農業公社ではその買い取った農地を、規模拡大を目指す農家や農業生産法人に転売しています。
不動産会社に仲介を依頼する
農地とは言えあくまでも土地ですから、不動産会社で売買の仲介を行っています。
情報収集に強く、宣伝スキルや営業スキルなども高いので、安心してお任せできますが、農地売却が得意な不動産会社に依頼するのがポイントです。
売買契約を締結する
買主が見つかったら売買契約を結びます。
これは通常の不動産売買と同じです。
ただし売主が買主を見つけても、売買契約のノウハウがないことがあります。
この際は農業委員会に相談したり、司法書士などの専門家に依頼して契約を結ぶことになります。
この際、買主は農家である証明書を所属する農業委員会から発行してもらいます。これがないと農家であると認められないため、売却はできません。
農業委員会に農地法3条許可申請を行う
農地を売却するには、農業委員会の許可がなければできません。
そのために農業委員会に農地法3条許可を申請し、土地登記簿謄本などの必要書類も同時に提出します。
農業委員会ではこの必要書類を確認し、売却が適切がどうか、審査をします。
許可が出るまでの期間は、農業委員会の業務やシーズンによって異なりますが、一般的には1~2カ月程度です。
万が一、農地売却の許可が下りなかったことを考えて、売買契約書には契約を白紙に戻す旨を特約として記載しておきます。
手付金の処理などでトラブルになることもあるため、売主も買主も細かな確認が必要です。
引き渡しをする
農業委員会の許可が得られると許可証が交付されるので、農地の引き渡しを行います。
通常の不動産取引と同じで、買主が代金を支払い、同時に所有移転登記を行って取引は終了です。
農業委員会からの許可が得られるまで時間が長くなりそうなときは、その間に所有権移転請求権の仮登録を行うこともあります。
仮登録をしておけば、許可が下りたらすぐに本登録に進めるため、売主も買主も安心して待つことができるのです。
ただし農地の売却はあくまでも農業委員会の許可が下りた後です。
その前に引き渡しても所有権が移転したとは認められませんので、引き渡しは必ず許可を得た後にしなければなりません。
農地を転用して売却する場合は、さらに条件が厳しくなる
農地を転用する目的で多いのは、住宅用地や駐車場、太陽光発電をするために雑種地にすることです。
これらは農業から引退するケースのほか、両親からの相続で農地を受け継いだ場合などに多い事例です。
この場合も、農地を農地のまま売却するのと同じように農業委員会からの許可を得なければなりません。しかし、その基準はさらに厳しくなります。
なぜさらに厳しくなるのですか?
次の項目で解説しますので、確認しましょう。
農地を転用して売却する際の条件
農地を転用して売却するには、次の2つの基準があります。
- 立地基準
- 一般基準
この条件を2つともクリアしていれば許可が下ります。
では細かく見てみましょう。
立地基準
農地には5つの区分があることを紹介しましたが、その区分によって許可の方針が違います。下記の表で確認してください。
農地区分 | 許可の方針 |
農用地区域内農地 | 原則不許可 |
甲種農地 | 原則不許可(土地収用事業の認可を受けた施設など例外有り) |
第1種農地 | 原則不許可(土地収用事業の認可を受けた施設など例外有り) |
第2種農地 | 農地以外の土地や第3種農地に立地困難な場所などに許可 |
第3種農地 | 原則許可 |
引用元:農業水産省ホームページ
市街地に近い農地のほうが一般的に許可が下りやすくなっています。
『農地以外の用途にしたほうが役立つ』と判断されるためです。
反対に、農業に適していると見なされる農用地区域内農地や甲種農地、第1種農地は許可が下りにくくなっています。
特に農用地区域内農地は原則として転用は認められないので、農地として活用する方向をおすすめします。
一般基準
次の一般基準を満たしていなければ、立地基準をクリアしても転用は認められません。
一般基準では具体的には転用後にどう使われるのか、といったことが審査されます。
主に3つのことについて判断されますので、確認してください。
転用した後に事業が確実に行われるかどうか
転用後の事業を適切に行うための資金があるか、なども審査の対象になります。
例えば、駐車場に転用するとした際、実際に駐車場として事業が成立するかどうかを審査するのです。
こうした基準を設けることで、「転用許可をとりあえず取っておこう」という考えを防いでいます。
周辺農地に支障を与えないかどうか
転用した後にガスや粉塵などが発生するなどで周辺の農地に影響が出ることがあります。
農地法とは、農地を保護するための法律ですから、他の農地に支障が出る可能性が認められれば転用が認められることはありません。
一時転用した後に確実に農地に復元されるかどうか
農地へ確実に復元できることを条件に農地に仮設の工作物などを設置するなどの、一時的な転用が認められることがあります。
農地を利用した後に農地に復元できなければ転用は認められません。
農地を転用する目的は、住宅用地や駐車場、看板設置、植林などさまざまありますが、解説した『土地基準』と『一般基準』の両方の基準をクリアしてはじめて転用が認められることになります。
それくらい条件が厳しいということなのです。
さらに、手続きもとても複雑になっています。
それでは次の項目で、農地以外に転用して農地の売買を行う際の流れを追っていきます。
農地以外に転用して農地の売買を行うときの流れ
農地以外に転用して農地を売却するときの流れは、農地としてそのまま売却するのとほとんど変わりません。
ただ、大きく違うのが『5条許可』の申請です。
代表的な流れは下記の4つです。
- 買主を探す
- 売買契約を締結する
- 農業委員会、あるいは都道府県か市町村に農地法5条許可申請を行う
- 引き渡しを行う
農地法5条許可申請を、あらかじめ転用許可を得てから売却することもあります。
例えば、農地を駐車場用地などに変更してから買主を探したほうが売却しやすいことがあるからです。
その場合は農地法4条許可申請をして、3条許可申請へと移行します。
今回の記事で紹介した例はあらかじめ買主を見つけ、その買主の意向に合わせて転用をしてから売買契約を結ぶ方法です。
転用する前の土地の種類、あるいは買主をどういう方法で探すのかによっても、転用後の使用用途は違うはずですので、あくまで一例として考えてください。
農地を転用して売却する際に必要な書類
農地を農地以外に転用して売却する流れを紹介しましたが、素人にしてみると難易度がかなり高くなっています。
司法書士といった専門家や農地取引に強い不動産会社にお任せするのがおすすめです。
申請に必要な書類を揃えることもしてくれますが、売主が用意しなければならない書類もあります。
どんな書類が必要になってきますか?
どういう書類が必要になるのか見てみましょう。
すべての用途に共通の必要書類
- 土地の登記事項証明書
- 位置図、構図の写し、周辺土地利用状況図、申請地の現況写真
- 事業計画書
- 土地利用計画
- 建物等施設の平面図
- 排水計画図
- 農業振興地域整備計画の変更済証明書
- 地積測量図
このほか、必要に応じて農地復元誓約書、戸籍・除籍謄本などが必要になります。
用途別の必要書類
- 住宅用地…事業経歴書、収支予算書など
- 資材置き場、駐車場…土地利用状況図、位置関係図、事業経歴書、確約書など
- 砂利・土・岩石採取事業に関わる一時転用…農地復元計画書・計画図、工事工程表など
上記はあくまでも一例です。
申請先の農業委員会あるいは役所によって、必要書類が違う場合がありますので、事前に申請先に確認するようにしましょう。
ちなみに、農地の転用許可が下りるまでには2~3カ月の期間が必要です。
準備にも手間どりますし、許可が下りるまでの期間が長いので焦らずに取り組むようにしましょう。
農地を売却する際の注意点って何?農地として売れないこともある?
農地をそのまま売却、あるいは転用して売却する流れをみてきましたが、ここでは売却をする際の注意点を見てみましょう。
農地が荒れていると売買できない
これは意外と知らない人が多いのですが、農地は農地として適切に活用されている土地のことです。
そのため土地の用途が農地であっても、耕作を放棄し荒れ放題となった農地は『休遊農地』あるいは『耕作放棄地』と呼ばれ、農地としての売買はできません。
そのようなケースがなぜあるかというと、『農地とは耕作のための土地である』と農地法第2条第1項に規定されているためです。
では『耕作』の定義とは何かというと、作物を栽培するために耕うんや整地、種まき、排水、施肥、除草などを行うことです。
反対に耕作が行われていなければ、区分に関わらず農地とは認められない可能性もあります。つまり農地に該当しない農地もあるのです。
そのため休遊農地や耕作放棄地を農地として売却するには、農地に戻さなければなりません。
その場合、業者に依頼するか、近隣の農家に頼んで耕作をしてもらいます。もちろん自力でできるのであれば、ご自分でします。
一方、農地以外に転用して農地を売却する際も、正常な農地に戻すことが必要になることもあります。ですから売却を決めた場合でも、売却が決まるまで農地としてしっかり活用しましょう。
農地を売却すると税金がかかる
農地を売却した際は譲渡所得になりますので、税金が発生することもしっかり覚えておきましょう。
そのときに発生する税金というのは所得税と住民税です。
ただし、農地を所有していた期間によって、税金の割合が違います。
そのポイントとなるのが所有年数が5年を超えるか、5年以下かです。
- 所有期間が5年以下の場合…短期譲渡所得
- 所有期間が5年を超える場合…長期譲渡所得
所得の種類 | 譲渡所得税率(復興特別所得税2.1%含) | 住民税率 |
長期譲渡所得 | 30.63% | 9% |
短期譲渡所得 | 15.315% | 6% |
上記の表を見ても分かる通り、短期譲渡所得にかかる所得税は長期譲渡所得に対して約2倍になっています。また住民税も大きく違います。
つまり、農地を売却するなら5年を超えるかどうかで収める税金が違うので、もし4年目くらいで農地を手放したいと思っても、5年になるまで待ったほうがいいのです。これはしっかり覚えておきましょう。
ただし個人間での農地の売買には800万円の特別控除があり、その部分は非課税となります。そのため譲渡所得にそのまま税金がかからないのです。
このほかの税金としては、売買契約の際に必要な収入印紙、登記の際にかかる登録免許税などが必要になります。
ちなみに、譲渡所得を求める計算式は以下のようになります。
- 譲渡収入-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得
取得費とは
売却する農地を取得した際の購入費用で、譲渡費用は売却の際に使った費用です。
譲渡費用には、司法書士に依頼した場合の費用や仲介した不動産会社への仲介手数料、戸籍謄本などの書類の発行手数料などが含まれます。
農地を売却する際に必要な費用がある
農地の売却の際に売主が用意する費用は、必要書類の発行手数料や申請手数料などです。
所有者移転登記も買主が行うことになっています。
ですが、農地を売却する手続きなどをすべて自分ひとりでできればいいですが、やはりそれは無理があります。
買主を仲介してもらった場合は、依頼した不動産会社に仲介手数料を支払うことになります。不動産会社への仲介手数料は、売却価格×3%+6万円(+消費税)が上限額となっています。
例えば、2000万円で売却できた場合は、仲介手数料の上限額は66万円となります。
また土地を購入した際のローンが残っていて、農地に抵当権がつけられていた場合は、抵当権抹消の登記を行う必要があります。
この場合も自分でできれば費用は登録免許税の1000円以外は発生しません。
ただ司法書士に依頼すると2~3万円の費用が必要になります。
さらに、農地の境界が明確ではないときは、境界を確定しなければなりません。売却の前に土地家屋調査士による確定測量を行いますので、その費用は35万円~80万円が相場です。
一方、農地を転用して売却する際は、さらに別途費用がかかるので覚えておいてください。
代表的なものは下記になります。
- 農地転用手続き費用
- 行政書士費用
- 登記費用
このほかに宅地にする場合は造成工事費用や、水道を引き込む工事費用など大規模な工事が伴いますので、その費用が発生します。
農地の査定方法は通常の土地とは違う
不動産取引において売却価格をつける際は、不動産会社の査定を受けてその査定価格をもとに決めます。
通常の不動産であれば、駅との距離や部屋の広さや間取り、築年数などを基準に、近隣物件の取引状況を踏まえて、不動産会社が査定価格を提示します。
しかし農地の場合、査定する際の条件が幅広くなるので、覚えておきましょう。
また下記についても、査定の対象になる場合が多いとされます。
- 日当たりの良さ
- 土壌の状態(休耕中の土地は価値が下がります)
- 水路の整備状況
- 降雨量
- 農道の整備状況
あくまでも農地として売却する場合ですが、その農地で生産する作物についても査定の対象になるのです。いくら広い土地でも、日当たりが良くなければ生産物に悪影響を及ぼしますから、当然と言えば当然ですね。
また天候などの自然現象とは別に、農道がきちんと整備されていたり、水路が確保されていることも買主にとっては好都合です。引き渡しを受けた後ですぐに農作物の生産に取りかかれるからです。
そのため農地としての利便性の高さも評価の対象になります。
反対に、山奥など交通の利便性が悪い場合は買主が敬遠しがちになるため、査定価格は低くなるのが一般的です。
農地の相場金額は下落傾向が続く
農地を売却する際は広い土地を取り扱うことになりますので、価格の相場も知っておきましょう。
ここで注意するのは、農地がある地域や種類などによっても価格が違うことです。
地域による違い
農地の価格は、都市に近い地域にある農地と、田舎にある農地とで差があります。
都市に近い地域にある農地は都市的農業地域と呼ばれ、田舎にある農地は純農業地域と呼ばれます。
価格の傾向としては、都市的農業地域は価格が高く、純農業地域は価格が低いのが一般的です。
田んぼか畑かによる違い
また同じ広さの農地でも、田んぼか畑かによって価格に差があります。
田んぼの場合は価格が高く、畑は価格が低くなるのが通常です。
この2つの条件を加味すると、都市農業地域にある田んぼと純農業地域の畑では価格に大きな差が出るのが通常です。
全国的な傾向を見てみると、それがよく分かります。下記の表で確認してください。
田んぼ | 畑 | |
全国 | 1133 | 838 |
北海道 | 242 | 115 |
東北 | 521 | 309 |
関東 | 1393 | 1529 |
東海 | 2249 | 2048 |
北信 | 1323 | 908 |
近畿 | 1942 | 1396 |
中国 | 693 | 410 |
四国 | 1696 | 955 |
九州 | 825 | 572 |
ちなみに東京の場合、田んぼよりも畑の値段が高いのは、田んぼの数が少なく、取引実績がほとんど0になっているためです。
また、農地自体の価格は右肩下がりを続けており、下がる一方になっていることも注目です。
この原因は、農業従事者の高齢化、後継者不足などで農業あるいは農地への需要が縮小していくと見られているからです。
下記に、直近10年間の農地の全国平均売買を表にしてみました。
田んぼ | 畑 | |
2011年 | 1340 | 942 |
2012年 | 1283 | 908 |
2013年 | 1301 | 950 |
2014年 | 1296 | 942 |
2015年 | 1270 | 924 |
2016年 | 1256 | 910 |
2017年 | 1207 | 891 |
2018年 | 1182 | 872 |
2019年 | 1165 | 861 |
2020年 | 1133 | 838 |
引用元:一般法人社団全国農業会議会
価格が下がっているのが顕著ですが、不要な農地を所有している場合は、何らかの方法で早めに売却したほうが良さそうですね。
農地の価格は2022年以降さらに下がる
農地の売買価格が下降していることを紹介しましたが、さらに覚えておいて欲しいのが『生産緑地の2020年問題』です。
生産緑地とは
1992年に制定された土地制度のひとつで、市街地にある農地も残すために導入されたものです。
主な内容は、土地所有者は30年以上、農地や緑地として土地を維持することで税制が優遇されるというものです。
全国の生産緑地は、2017年版都市計画概況調査では12,972.5ヘクタールもあります。この生産緑地のほとんどが、1992年の30年後に当たる2022年に不動産売買市場で売却できるようになるということなのです。
『生産緑地の2022年問題』とはこの生産緑地の市場流入によって、土地をはじめとする不動産価値の下落が落ちるのでは、という問題です。もちろん農地も土地のひとつですから、2022年には農地の必要性が低下し、需要がさらに下降すると見られているのです。
この『生産緑地の2022年問題』を抑制するために、政府は2015年に都市農業振興基本法を制定しています。これによって市街化区域内農地の転用を促進するという方針は、都市農業の保全へと転換されました。しかし、実際はどういう状況になるか不透明なままです。
ですから、もし農地の売却を検討しているのであれば、2022年以降は農地の売買価格が下落するかもしれないことをぜひ覚えておきましょう
不動産会社に依頼する際は農地売却の実績があるところへ
買主を探すときに不動産会社に依頼する場合、ポイントとなるのが農地売却の実績があるかないかです。
農地の購入意欲のある買主候補を何人か知っているケースがあるからです。
農地をそのまま購入したいのか、農地を転用して購入したいのか、というニーズも理解しているはずで、スムーズに買主が見つかる可能性があります。
また、これまで紹介してきたように農地売却にはさまざま制限があります。それと同時に申請の流れも普通の不動産取引とは違います。
専門知識が必要になりますので、農地売却に詳しくない不動産会社では、なかなか思うように売却が進まないことも考えられるのです。
特に地元の不動産会社なら、その土地柄や農家の状況も理解してくれているので、アドバイスや助言もしてくれるはずです。
農地を売却、または購入したことのある農家の方が近隣にもいるはずです。その中に農地売却が得意な不動産会社を知っている人がいるかもしれません。
その場合はぜひ紹介してもらってください。心強い味方になってくれるはずです。
まとめ
今回紹介したように、同じ土地といっても農地にはいろいろな法律の制限が設けられており、売却するにはひと苦労です。
しかし、農産物生産にとって大切な農地ですから必要な方に使ってもらうのが最善の方法です。
売却するには、買主を見つけるのも含めて時間がかかりますから、もし農地を売却しようと思ったら早めに動き出すようにしましょう。
ぜひこの記事を参考に、農地売却成功に役立ててください。
大変勉強になりました!