親戚同士や友人との間で、不動産の売買をするケースでは、不動産業者に仲介手数料を支払わずに個人的に売買ができないかと考える人は多いでしょう。
また以下のような場合にも個人売買で不動産が取引されることがあります。
- 所有地を隣人に売却する
- 貸している土地を借主に売却する
- 借地権者に相手の家が建っている底地を売却する
不動産物件の個人売買を検討されている場合、必ず必要なのは契約書の作成です。
契約書は、売主と買主の認識を書面で確認し合う上で非常に重要なものであり、普通の書類と大きく違うのは法的な拘束力を持っている点です。
その為、契約書の内容を間違えてしまうと、後々大変なトラブルに巻き込まれたり、実質的な損害を被ることにもなりかねません。そんな重要な書類であるにも関わらず、文章や出てくる語句は普段使わない専門的なものがほとんどで、不安になります。契約に慣れている仲介業者がいない個人売買なら尚更です。
契約書をきちんと作成できるのか不安です…。
そこで契約書に記載するべき事項や注意点、困ったときに相談できる機関についてなど、不動産物件の個人売買の際に契約書を作成する上で必要な情報を紹介していきます。
目次
不動産個人売買の契約書記載事項について
まずは契約書を作成する際に必要不可欠な「記載事項」について詳しく解説していきます。
契約書の記載事項は、個人売買や仲介など、取引の形態にかかわらず基本的には同じ内容になります。
記載内容は大きく分けて以下の13項目になります。
- 売買物件の表示
- 売買代金、手付金等の額、支払期日
- 土地の実測及び土地代金の精算
- 所有権の移転と引き渡しの時期
- 付帯設備等の引継ぎ
- 負担の消除
- 公租公課等の精算
- 手付解除の期限
- 契約違反による解除
- 引渡し前の物件の滅失・毀損
- 反社会勢力の排除
- ローン特約
- 瑕疵担保責
売買物件の表示
売買が行われる対象の物件情報を明確にするため、登記記録(登記簿)に基づいて記載していきます。
取り扱う物件の情報は最も大切なので、誤りのないように一言一句着実に確認を行いましょう。
売買代金、手付金等の額、支払期日
売主、買主とで事前に交渉し話し合った「売買代金」の記載、そして「手付金」、「支払期日」の記載を行います。
手付金とは
買主が売主に売買の前に支払う、「保証金」のようなものです。手付金の金額は、一般的には売買代金の5~10%を設定される事が多いのですが、様々な事情を鑑み、両者でしっかりと話し合いをして決めましょう。
また、手付金が解約手付、証約手付、違約手付のどれであるのかも確認します。手付けが解約手付の場合は、いつまで手付解除が可能かについても確認しましょう。なお、売主の信用力に不安がある場合は、高額な手付金の支払いには十分注意するようにしましょう。
手付金の支払い日、及び最終的な売買代金の支払期日も非常に重要な項目です。
これらの期日を書面に著し契約したにも関わらず、実際の支払が遅れてしまうと、契約違反とみなされる場合もあるので、買主は慎重に支払期日を決定しましょう。
土地の実測及び土地代金の精算
不動産には登記簿に記載された登記記録というものがあり、そこに土地の面積などの詳細が書かれています。
売主は、この登記記録に表示されている面積が実際の土地面積と違っていることもあるため、実測して確かめておきます。
もしも、登記記録と誤差があった場合は、その差分を土地代金として精算するケースもあるので、契約前に必ず確認しておきましょう。一般的に、売買代金の精算は、当初の売買代金と当初の売買面積(登記記録(登記簿)上の面積)に基づく1㎡当たりの単価を用いて行われます。
所有権の移転と引き渡しの時期
不動産の取引では一般的に、支払いをする日に物件と所有権移転登記に必要な書類などを引き渡すことになります。
そのため、引っ越しの予定などお互いの日程を前もって確認して、所有権の移転や物件引き渡しの年月日を決定し契約書に記入しましょう。
付帯設備等の引継ぎ
個人売買では中古住宅の売却がほとんどだと思います。その際に、物件だけではなく建物に付属している給湯や空調設備、収納、家電や敷地内の植物など、どこまで引継ぎを行うのかを明確に示しておく必要があります。付帯設備表を契約書に添付することが一般的です。設備の不具合の有無も明記することでトラブルが防げます。また引継ぎをする部分と、撤去する部分の選別をはっきり行うという目的もあります。
思い込みや勘違いを防ぐためにも売主と買主の間でしっかりと話し合い、引継ぎの内容について共通認識を持って記載しておくようにしましょう。
負担の消除
所有権移転の時期までに賃借権、担保権、抵当権など買主の所有権を阻害するような要因は、契約前に取り除かれている必要があります。
売主が買主に完全な所有権を引き渡す事が可能かどうかを必ず確認しましょう。
公租公課等の精算
公租公課とは
国や地方自治体に納める金銭の総称です。不動産の引き渡しを行うにあたり、一部の税金の精算を行わなければならないことがあります。
主に固定資産税や都市計画税などがあげられます。
これらの税金は、その年の1月1日時点に不動産を所有している人に対して1年分課税されるため、年の途中で売買を行う場合には、その割合を話し合う必要があります。
一般的には、引き渡しを行う日を境に、お互いの所有している日数で割合をきめていく事が多いですが、事前に両者で話し合いを行い公租公課の分担を決めておきましょう。
手付解除の期限
予期せぬ事態が発生して、契約を解除しなければならなくなることもあります。万が一に備えて、その場合には手付金の解除はいつまで有効なのかを確認しておきましょう。
当事者間で合意できればどのようにでも決める事ができ、解約手付による契約の解除ができないように設定したり、手付解除ができる期間を決めたり、人によってさまざまです。両者でよく話し合って、決めておきましょう。
契約違反による解除
どんな契約書にも設定されますが、契約者のどちらかが、取り決めた契約内容を違反した場合の取り決めです。基本的には契約に違反した側が決められた違約金を支払い契約を解除します。
違約金は、売買される代金の約20%までの範囲で設定される事が多いようです。
引渡し前の物件滅失・毀損
契約が成立した後に、両者どちらの責任でもない事由で物件が滅失、毀損してしまった場合にどうするかといった内容を記載します。例えば自然災害などのケースです。このような状況に陥る事は少ないと言えますが、最近では予想外の地域で甚大な自然災害が起きることも増えています。万が一に備えて、そういった場合の対応をどうするかを双方で話し合っておきましょう。
反社会勢力の排除
平成23年6月に、反社会勢力排除の為の標準モデル条項が導入されました。不動産取引において、相手側に反社会勢力の関わりがあることなどが発覚した場合、契約を解除できるといった内容の記載です。
具体的には、「売主及び買主が、暴力団等反社会的勢力ではないこと」「物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供しないこと」などが挙げられます。
これらの内容が含まれている事を必ず確認しましょう。
ローン特約
買主がローンを組んで物件の購入を行う際に、一般的にローン特約を行う事になります。
もし買主がローン審査に落ちてしまった場合には、買主は売買契約を無条件で解除する事ができるという特約です。
その為、売主は買主の資金や社会的を信頼して契約を結ぶことになります。
契約不適合責任
契約不適合責任とは
引き渡し完了後に、それまで確認していなかった隠れた不動産の欠陥が発覚した際に負うべき売主側の責任です。例えば、住宅を買ったのにシロアリがついていた場合などに適用されます。
この契約不適合責任をそもそも売主が負うのかどうか、負う場合はどれくらいの期間内なのか、など内容を細かく決めておく必要があります。
買主は、善意無過失といって、気がつかなかったことに落ち度がなかった場合に限り、損害賠償や契約の解除を求めることができます。
この契約不適合責任は、責任を負う期間が長いほど売主は損をしますし、短いほど買主のリスクは高くなります。契約不適合責任をめぐるトラブルは、個人売買で起きるトラブルの中でも非常に多い為、両者でしっかりと話し合いをして納得した上でで契約内容を確認する必要があります。
売買契約書作成についての注意事項
以上のような項目に沿って売買契約書を作成していく過程で、注意すべきポイントがいくつかありますので解説していきます。
契約内容をよく確認して作成する
契約書は通常のビジネス書類とは違い、法的拘束力を持つ非常に重要な書類です。
その為、一度締結した契約は基本的に破棄する事は出来ません。
しっかりと契約内容を確認せずに、契約書を作成してしまうと、後で重大なトラブルに繋がりかねません。
当たり前の事が書かれていると思っていても、必ず、各項目の一つ一つの契約内容をよく読み、不明な点は理解するまで調べたり、場合によっては第3者に相談し、お互いに納得した上で契約を結ぶようにしましょう。
契約不適合責任について把握する
契約書には「契約不適合責任」というものがあり、これは個人売買で起きる最も多いトラブルの原因になっているため注意が必要です。
契約不適合責任とは
既述の通り物件を引き渡した後、隠れた不具合などが発覚したときに売主がとるべき責任の事で、この内容を両者がよく把握しておく必要があります。
民法では、引き渡しから10年後までに隠れた欠陥が出てきた場合は、その責任を売主が負うことが定められています。しかし、これは売主の負担が重すぎるとされ、契約の段階で、「契約不適合責任を負わない」とするか、もしくは「責任を負う期間は引き渡しの何ヵ月後まで」と定めるケースが多いです。
例えば、家の柱にシロアリが沸いていた事が取引成立の3年後に発覚したとします。
契約不適合責任の保証期間や詳細を取り決めていた場合はその規則に則って契約の破棄、または損害賠償の支払いなどスムーズに進める事はできます。
しかし、何も取り決めを行わず契約を締結してしまうと、売主はもう3年も経っているのだから無効だ、買主は最初に確認をしていない売る側の責任だから賠償金を支払うべきだ、など両者の主張がぶつかりトラブルになってしまうケースが多いのです。
そのため、契約段階で細かく契約不適合責任を負う期間や、ペナルティーの内容などを契約書に記載しておく事が大切です。
契約書作成に困った時
ここまで見てきた通り、不動産の個人売買で自ら契約書を作成することは非常に手間がかかり、確認すべきポイントが大変多いことがおわかり頂けたと思います。
自分で複雑な契約書を作る時間的余裕がない、正しく契約書を作成する自信がないからトラブルにならないか心配だと思われている方も多いのではないでしょうか?
そんな方は司法書士へ相談されることをお勧めします。
ここでは、契約書などの作成をサポートしてくれる司法書士について詳しく解説していきます。
司法書士とは?
司法書士とは
裁判所、検察局、法務局などに提出する書類の作成、登記・供託の手続き、審査請求をするのが主な仕事です。
不動産関連だけではなく、遺産相続、債務整理、裁判などに関する業務も行っています。
司法書士に依頼するメリット
司法書士に依頼するメリットは、やはり正確で安心できるということです。
司法書士は国家資格者であるため、依頼すると専門的な知識を持っているプロがサポートをしてくれます。
自分自身で全て契約書作成を行う場合、内容に抜けがないかどうか、文言は間違っていないかどうか、全て自分で調べ確認する作業が必要です。
不動産売買には専門的な知識が必要な内容のため、全く初めての人にとっては途方もない作業になることが想像できます。
しかし、司法書士に依頼すれば、この作業を短時間で正確に行ってくれ安心です。
不動産を売買することは人生の大きなイベントであり、一番大きな買い物となりますので、万が一トラブルが起きてしまったら、金銭的にも心理的にもダメージは計り知れません。
司法書士に依頼する事でトラブルの心配なく効率的に取り引きを進める事ができるので、契約書の作成や、不動産の個人売買自体に不安を感じる方は、一度検討されるのも一つの方法です。
司法書士に依頼する際の費用
司法書士に依頼する場合は、依頼先の事務所によって料金体制はさまざまです。以前は、「司法書士報酬規定」に則って決定されていましたが、現在は完全自由化され各事務所が個別に決めている状況です。
もちろん、サポートする範囲によって料金は変わってきます。
例えば一つの事務所では、所有不動産の調査、書類等作成のサポートを請け負う「権利証整理サービス」というものを約30000円~としています。その内容の一部だけを依頼する事もでき、その場合は10000円以下に抑える事も可能です。
高額なのではないかと依頼を見合わせる前に、一度各司法書士事務所のサービス内容や料金を比較してみると安心でしょう。
困ったら不動産会社にサポートを求める
契約書作成に限らず、個人売買は、たくさんの煩雑な仕事を全て自分で行わなければならない取引です。
最初はできるだろうと思っていても、実際にやってみると想像以上に大変だったという事もあり得ます。
そうなった場合、無理に推し進めてトラブルに発展するよりは、お金を支払い適切なサポートが受けられる不動産会社に頼む事も選択肢の一つです。
不動産個人売買の契約に必要なもの
契約の際に必要になるものはありますか?
契約書を作成し、契約を結ぶにあたって、売主、買主がそれぞれ必ず準備するべきものがいくつかあります。
ここでは不動産個人売買で契約を行う際に必要なものを、売主、買主それぞれについて解説していきます。
売主が準備するもの
売主が契約時に必要なものは主に以下の7つです。物件情報を提供する側である売主の方が、買主よりも準備するものが多くなります。その為、売主である方は余裕をもった準備が必要です。
- 登記済証または登記識別情報
- 実印
- 印鑑証明書(3か月以内のもの)
- 建築確認通知書
- 固定資産税納付書
- 印紙代
- 本人確認書類
これらについて簡単に説明します。
登記済証または登記識別情報
登記済証(登記識別情報)とは
不動産及び登記名義人になった人に定められている、12桁の数字が書かれた書類で、物件の所有者である証明となります。売買を行う時は所有権移転に伴いこの書類が必ず必要となります。
万が一この書類を紛失している場合は、発行するのに非常に時間がかかるので前もって有無を確認しておくとよいでしょう。
実印
判子には実印と認印がありますが、不動産売買の際には実印を求められます。
実印とは
本人確認として自治体に実印登録されている判子の事で、一般的には普段持ち歩くようなものではなく、大切な時のみに使用するものです。
不動産売買で実印を求められる理由は、
- 取引の安全性を守る
- 所有権移転時に法務省が書類を照合しやすくする
- 契約の重要性を高める
- 住宅ローンなどの融資を受ける時に記入機関が本人照合をしやすくする
などが挙げられます。
所有権移転登記においては、「必ず実印を用いる」とされているので、間違いのない様に認印ではなく実印を準備しましょう。
印鑑証明書(3か月以内のもの)
所有権移転登記を行う際に実印と同時に必要なのが、印鑑証明書です。
印鑑証明書とは
持参した実印が本物かどうかを確認するためのものです。印鑑証明書を取得する方法はお住まいの地域によって規定が異なりますが、基本的にはお住まいの市町村窓口で、代理人でも申請が可能です。
印鑑登録証、住民基本台帳カード、個人番号カードのいずれかと、パスポートや保険証などの本人確認証、手数料があれば取得できるので、契約日の3か月以内に取得しましょう。
建築確認通知書
建築確認通知書とは
対象住宅が建築基準法の規定に適合しているかどうかの建築確認が済んでいることを証明する書類のことです。これがあれば、売り出す物件に法的な欠陥がないということになります。
この書類は、一度紛失すると再発行は原則できない事になっている為、手元にあるかどうか確認しましょう。
もし、紛失してしまっている場合は、「建築計画概要書」または「台帳記載事項証明書」で代用できるので焦らず準備しましょう。
固定資産税納付書
固定資産税は、その年の1月1日時点の所有者に1年分の税金が課税されます。その為、年の途中で売買を行っても、1年分の税金を支払うのは買主という事になってしまい、税金の分担については双方で話し合って決める必要があります。固定資産税納付書は、その話し合いの際に必要となります。紛失してしまっている場合は、自治体の税務課に納付書を再発行してもらう事ができるので、まずは手元にあるかを確認しておきましょう。
印紙代
契約書には必ず印紙を貼ります。この印紙の代金は、売却の価格によって変わるので正確に調べましょう。
印紙を貼り忘れても契約書の効力が弱まってしまうという事はありませんが、貼り忘れると、より多く印紙税を納めなくてはならなくなるので注意が必要です。また、必ず消印も忘れずに行いましょう。
印紙代
500万円以上1,000万円以下の土地 | 10,000円 |
1,000万円以上5,000万円以下の土地 | 20,000円 |
本人確認書類
本人確認書類は、運転免許証、パスポート、保険証、住民基本台帳カードなど、住所、氏名、生年月日が確認できるものの原本を準備しましょう。
買主が準備するもの
続いて、買主が契約時に必要なものです。
- 印鑑(ローン利用の場合は実印)
- 手付金(現金か小切手)
- 印紙代
- 本人確認書類
特に特別な書類を準備しなければならないわけではありませんが、漏れの無いように確認しておきましょう。
印鑑(ローン利用の場合は実印)
買主の場合、売主と違って印鑑は実印でなくてもよい事になっていますが、契約を行う際は様々な書類に印鑑を押すので、印鑑は準備します。
ただ、住宅ローンを利用して物件を購入する場合は、買主の方も必ず実印が必要になります。またその場合は本人確認が必要なので印鑑証明も準備しておきましょう。
手付金(現金か小切手)
契約時には、買主は売主に対して申し込みの保証金として、売買代金の5%~10%の手付金を支払うのが一般的です。
ただ、それはあくまでも相場なので、双方の話し合いによって金額を決定してください。
印紙代
物件の価格によって金額も変わってくるので、売主と確認をしましょう。
本人確認書類
本人確認書類は売主と同様、住所、氏名、生年月日が分かるものの原本を準備しましょう。運転免許証、パスポート、保険証などです。
今回は、不動産の個人売買における契約書について中心にお話してきました。不動産取引の中で契約の話し合いや契約書の作成は、トラブルを防ぐ上で非常に大切な工程です。
正しい知識を持って、取引後に気持ちよく過ごせるようにしっかりと準備をしましょう。
不動産の個人売買とは?個人売買のリスクについて
ここまで個人売買の契約書作成について解説しましたが、「そもそも不動産の個人売買は法律的に可能なの?」 「不動産個人売買のリスクはないの?」という疑問も出てくると思います。正しい情報を知らないまま不動産の個人売買を行うことは非常に危険です。
ここでは、個人売買のメリット・デメリットや、注意点などを中心に不動産個人売買の基礎知識を解説していきます。
不動産個人売買は法律的には可能
これまで見てきたように不動産の個人売買は合法的に可能な取引です。
不動産業者は国からの資格を得た上で行わなければなりませんが、個人間で不動産の売買を行うことは問題はありません。
ただ、不動産業者の仲介で取引する場合と違い、取引上起こる問題が全て自己責任になります。
仲介が入ることで、契約書の作成、重要事項説明書の作成や交付義務など、厳しい規則の元でトラブルが起きないように行うことができますが、個人間での取引の場合、規則がないことによるトラブルが想定されます。よほどの不動産知識がないと、非常にリスクが大きいことは理解しておきましょう。
不動産個人売買のメリット・デメリット
上記の通り、リスクが大きい個人売買ですが、実際には個人売買を行っている人もいるのも事実です。
では何がメリットと考えて個人での取引を行っているのでしょうか?
まずはメリットを見ていきます。
不動産個人売買のメリット
手数料や税金の節約が可能
不動産個人売買の最大のメリットは、安く取引が行える事です。
不動産会社を仲介して行う場合には、不動産会社に対して仲介手数料を支払います。
仲介手数料は、売買価格に対して最大3%+6万円かかります。たとえば5000万円の売却益が出た場合は156万円の仲介手数料かかり、さらに消費税も支払うため、かなりの高額になります。
しかし、個人売買の場合は、全て個人間で取引を行う為、この手数料が一切発生しません。
仲介手数料は不動産を売却する上で大きな出費と言えるため、この仲介手数料がなくなると金銭的に非常に大きなメリットになるでしょう。
宅地建物取引業法によって定められた仲介手数料の上限額
取引額200万円以下の部分 | 取引額の5%以内 |
取引額200万円以上400万円以下の部分 | 取引額の5%以内 |
取引額400万円以上の部分 | 取引額の5%以内 |
取引の自由度が高い
個人売買の取引は、売主や買主の意思だけで成立します。その為、特に売主は、契約条件や価格などを自分で自由に決める事ができます。
不動産会社が仲介して取引をする場合は、基本的には法律などの知識が豊富な不動産会社が中心になって契約内容を決めていくことになります。安心感はありますが、売主の意見が通りにくいのも事実です。特に価格などは、売主が考えていた以上に低価格で取引されそうになったりすることもあります。
また、個人売買の場合は必要事項を不動産業者に確認して許可を取るなどの作業も必要ないので、当事者間のみの話し合いで済み手間が少ないという点でも自由度が高いでしょう。
不動産個人売買のデメリット
買い手を見つけづらい
個人売買で取引相手を見つける方法は2つあります。
1つは、親戚や友人など、知り合い同士での取引を行う方法です。これは、もともと取引相手が決まっているため特に問題ないでしょう。2つ目はサイトを使って取引相手を探す方法ですが、こちらは不動産業者に依頼するよりもかなり時間がかかります。タイミングがうまく合わない限り、一般的にはサイトに情報を掲載して買い手が現れるまで待つということしかできないのが現状です。
参考に個人売買のために個人が物件を掲載することができる不動産サイトの料金の目安を紹介します。
日本全国の売り物件が掲載されており、登録数は2020年4月現在で200件以上あります。掲載料は発生しますが、売買が成立しても、サイトには手数料を支払う必要はありません。購入希望者と直接やりとりを行うことができます。
掲載料
コース種類 | 掲載料 | 画像数 |
スタンダードコース | 3300円 | なし |
シルバーコース | 6600円 | 2点 |
ゴールドコース | 11000円 | 8点 |
それに対して不動産仲介の場合は、不動産会社が独自のルートや地元での営業力を生かして積極的に買い手を探すことができます。ただ購入希望者を待つだけでなく、不動産会社が豊富な情報を元に売り手と買い手をつないでくれます。
トラブルが多い
個人売買は、専門家のサポートを受けずに売主と買主だけで行う取引です。
不動産の取引は確認事項や作成するべき書類などが想像以上に多く、その準備をする為にも多くの知識を持っていなければ、何らかのトラブルが起こり得ます。
個人間で取引を行う際には、売主、買主の双方がしっかりと知識を持ち、抜けや漏れのない様に確認を怠らず念入りに行うことが必要不可欠です。
不動産取引や契約に関する知識が全くない人、確認や連絡などに不安がある人、また、売主側で書類作成などの準備に自信がない人は、お金がかかっても仲介業者などにサポートをしてもらう方が安心に取引を行うことができるでしょう。
手間と時間がかかる
個人売買での取引において非常に大きなデメリットとなるのが手間と時間です。
記述の通り、難解な上に間違いが許されない契約書作成、買主との打ち合わせや日程調整、確認事項の抜粋などすべて自分で行います。
本来であれば、知識が豊富な不動産取引のプロが行ってくれる作業のすべてをほとんど初めての経験として自分で請け負うので、かなりの手間と時間ががかかる事は容易に想像がつくと思います。
時間に余裕があり、不動産に関する知識が精通している方出ない場合場合、個人取引もお勧めですが、そうでない方にはトラブルを起こさない為にも不動産業者のサポートを不動産ことができる仲介取引が安心です。
不動産の個人売買の流れ
ここでは実際に不動産の個人売買を行う際の流れを解説します。個人で多岐にわたる準備や手続きを行うため、売主、買主の両者が取引のステップをお互いによく理解して、相手任せにしないようにする必要があります。
売りたい不動産の相場を確認する
まず、売りたい不動産物件の相場をよく調べます。
個人売買の場合は、自分で不動産の価格をきめる事ができます。しかし、いい加減に価格を付けてしまっては、せっかく高く売れるはずの取引で損をしてしまったり、相場より高すぎて長い間売れなかったりすることに繋がりかねません。
その為、相場を調べる過程は慎重に行う必要があります。
調べ方はいくつかありますが、一括査定サイトで検索してみることも一つの方法です。立地や築年数などの大まかな不動産の情報を入力すると、各不動産会社からその物件の査定額が示されるシステムです。
一般的に無料で行えるサイトが多く、一度の情報入力で複数の業者の査定が提示されるので、時間がない場合にも便利です。
書類の準備をする
次に行うことは書類や資料の準備です。必要書類をなるべく早く確認し、手元にない場合は再発行が必要なこともあるので取得に努めましょう。
必要となる主な書類
必要書類 | 入手場所 | 備考 |
登記簿謄本(抄本) | 管理の法務局 | 権利関係の確認 |
固定資産税評価証明書 | 管理の法務局 | 固定資産税を確認 |
公図 | 管轄の法務局 | 土地の地図 |
売却価格を決定する
親族や友人間など親しい間柄で取引を行う場合は、話し合いをしながら売却価格を決定することもあると思いますが、買主が決まっていない場合は、売主が相場や査定額を元にして決めた価格を提示し、購入を検討している人が交渉するという形が多いです。
やはり、買主の立場としては少しでも価格が下がるように交渉してくる場合が多いので、最初の価格は相場より高めに設定することもあります。
ただタイミングによっては、高いすぎて買い手がつかなくなることもあるので、社会的な経済状況なども視野に入れて決定しましょう。
現地を確認する
売主が物件の情報をサイトなどに公開すると、その物件に興味を持った人から問い合わせがきます。
その際に、サイトだけではわからない物件や土地の状態などを詳しく聞いてくる場合があるので、事前に現地の確認は必ず行って質問に答えられるようにしておきましょう。答えられなかった件については、後日返答するなど丁寧な対応が求められます。
売主が、より詳しく具体的な情報を提供する為には、本来なら業者に依頼して物件や土地の測量などの調査を行い、報告書を作成してもらうと安心です。
ただ、個人的な依頼になる為、費用が発生してしまうので、自分自身でどこまでできるかの見極めが大切です。
価格交渉
価格交渉は、売主と買主にとって最も大切な過程です。
初めは値下げを前提とした価格を設定し、相手の希望価格に応じて寄り添う姿勢を見せる事が大切です。
さらに気をつけたいのは、値段を下げすぎて損をしないようにすることです。自分の中である程度のボーダーラインを決めて、折り合いをつけていきましょう。
契約書などの作成
価格交渉の末、合意に至ったら、細かい契約事項などの取り決めを行い契約書を作成していきます。
特に親族や友人同士の取引は、未だに口約束などで色々と取り決めをしてしまう人も多いですが、それは後々トラブルが起きた時、必ず「言った言わない」の揉め事に発展していきます。何が正しいのか確認が取れないのです。
互いの認識をすり合わせ、はっきりと文字にすることでトラブルは回避できます。その為にも、双方で決めた確認事項は、必ず契約書の中に記載しておきます。
引き渡し
契約書の押印等がすべて完了し、代金のやり取りをしたら、いよいよ物件の引き渡しとなります。
引き渡しが終わった後も、何ヶ月後かに欠陥が見つかったり、契約内容と実際の物件の状態が違ったり、トラブルが発生することもあります。そうなってしまった際には、契約書を元によく話し合いましょう。
しかし、そんなトラブルが起きないよう最初から最善の注意を払って契約を行いましょう。
まとめ
不動産の個人売買契約書やその他の注意するべきことについて説明してきました。
個人売買はメリットが大きいと感じるか、デメリットの方が大きいと感じるかは、それぞれの方の状況によると思われます。
個人契約する際に気を付けておくべきことを学べました!
不動産会社が仲介をしてくれる場合と異なり、全てを自身で進めていく必要があるので、正しい知識を持って慎重に取り組んでいかなければいけませんね。
いずれにせよ慎重さを要する取引になりますので、正確な知識を付けて、困った時にはサポートを視野に入れることも検討し、満足のいく契約が成立するように取り進めてください。
納得のいく取引がなされるように、成功を祈っています。