山林を保有しているが、「何も活用できずにただ毎年固定資産税だけを払いつづけている」。
このようなことでお困りの方はいらっしゃいませんか?
山林の管理には手間とお金がかかりますが、受けられる恩恵が少ない資産であると言えます。
売却したいと思ってもどこに依頼すればよいか分からないし、価格の相場や税金がいくらかかるのかについても専門家ではないのでよく分かりませんよね。
山林は宅地や建物の売買ではありませんから、注意しなければならないポイントがさまざまあります。
今回の記事では、山林売買の相場や税金、契約書についてなど、この記事を読めば山林売買のポイントが一目で分かります。
では、まず山林の価格相場についてご説明いたします。
山林の価格相場はいくらぐらい?
住宅や建物の売買は身近なものですので、新聞広告やポストに投函されていることから、価格の相場についてはなんとなくイメージがつきますよね。
山林となるとかなり広大な土地となるうえ、駅チカや近くに商業施設があるなどの物件の価値を決める判定要素が分からず、山林の価格相場については検討もつかないのではないでしょうか。
山林の価格相場を知るための判断材料として、山林の種類をまず理解しておいてください。
山林は「都市近郊林地」「農村林地」「林業本場林地」「山村奥地林地」の4種類に分けられます。
それぞれの特徴について次にご説明いたします。
都市近郊林地
都市や都市生活者の居住地域周辺にある森林のことです。
宅地見込み地の要因が含まれるため、林地価格としては最も高い土地です。
価格相場は1㎡当たり1,000円から5,000円程度です。
農村林地
農村林地とは、農村集落の周辺にある林地のことです。
里山と称されているものもあります。
価格相場は1㎡当たり100円から1,000円程度です。
林業本場林地
林業本場林地とは、林業を経営目的とする管理された林地のことです。
林業用の山林ですので宅地転用が難しい点から価格相場が低めとなっています。
価格の相場は1㎡当たり100円程度です。
山村奥地林地
山村奥地林地とは、山村奥地にある林地のことです。
道などが整備されていない山林は、山村奥地林地と呼ばれています。
交通状態が芳しくないことから、利用価値が低い土地と言えます。
価格相場は1㎡当たり100円未満です。
以上のように、林地を切り崩せば宅地利用ができる可能性が高い都市近隣林地や農村林地については需要が高くなるため、比例する形で価格が高くなると言えます。
逆に、宅地利用ができない林業本場林地や山村奥地林地については需要が低いため価格も安くなります。
しかし、林地の価格が変動するポイントは、林地の種類だけではありません。
売買する林地の地域によっても、価格が大きく異なります。
主要都市部は利便性が高いため住宅地売買の相場が高くなる特徴があります。
山林もこれと同じ理由で、東京都の山林であれば地価が高くなるため、海外の投資家に人気が高い価格で取引が行われています。
過去の取引実績から相場感を把握しておく
山林の価格相場の目安は、国土交通省の「不動産取引価格情報検索」より、実際の取引価格から相場を確認できます。
検索方法は、年度や地域で絞り検索がかけられますので、売買したいと考えている林地の相場感を確認できます。
ここでの注意点として、検索した過去の売買実績データは、あくまでも参考程度として考えておいてください。
分かりました!
林地の場合、そこに生い茂る樹木の種類や樹齢、林道距離など立木の状態によっても価格が変動するため、「前例の取引ではこのぐらいの金額だったから、今回も同じような金額で売れる」というわけではありません。
過去の取引実績を鵜呑みにしていると、後悔することに繋がるかもしれませんのでご注意ください。
売却する際は山林の現状をよく確認しておく
売却したいと考えた時は、まず所有している山林の現状について知ることから取り掛かりましょう。
山林はとても広大な規模に及び、維持管理が難しい不動産です。
「登記簿」や「森林簿」を使用し、山林の面積や所在地、山林に生息している樹木の種類や樹齢、道路の整備状況についてよく確認しておきましょう。
現状を把握しておけば、取引をスムーズに進めることができます。
登記簿とは?
不動産の物理的状況と権利関係を法的に記録した帳簿のことを表します。
不動産登記簿を見れば、その土地や建物の所有権がどのように移り変わったか、所有者の利用を制限する抵当権や賃貸権などが付いていないかなどが分かります。
登記簿は、「表題部」と「権利部」に分かれており、「表題部」には土地の所在・地番・地目・地籍など、建物の所在・地番・家屋番号・種類・構造・床面積などが記載されています。
「権利部」には、甲区と乙区に分かれており、「甲区」にはその不動産の所有者や、いつ、どんな原因で所有権を取得したかなどを確認することができます。
「乙区」には、抵当権や貸借権、地上権など所有権以外の権利関係が記されています。
森林簿とは?
山林の所在地や面積、材積、成長量など森林に関する情報が記された台帳のことです。
森林に関する公的資料となり、空中写真や聞き取りなどで作成しているため、現地で確認・実測しているわけではありません。
森林簿の写しは各自治体の林務課、林業課で請求できます。
請求するために必要となるものは、本人確認類・土地所有証券(登記事項証明書など)と呼ばれる書類が必要になってきますので、各自治体のホームページなどであらかじめ確認しておきましょう。
山林は公簿面積で売買されることが一般的
山林の登記簿は「公簿面積」と「実測面積」が大きく異なる場合が多いという問題があります。
そして、隣地との境界も不確かなものになっているケースも多く、価格を算定すること自体が難しいです。
この問題は、宅地などでもよくある話ですが、宅地の場合は隣地との境界が不確かであっても実際に面積を測量して、隣地との境界を明らかにすることが容易です。
しかし、山林となるとかなり広大な面積ですので専門の業者に依頼したとしても、境界を明らかにすることは非常に困難となるでしょう。
測量を専門の業者に依頼すると、高額な費用がかかるため売買の際は実測面積ではなく、公簿面積で売買されることが一般的です。
公簿面積で売買を行うと、実際の面積より小さいこともありますので、買主が損をすることもありますし、また逆に実際の面積より大きいこともありますので、売主が損をすることもあります。
山林の価格相場の実情
山林は宅地などに比べて売買する件数が乏しく、確固たる価格相場の形成がされていない市場です。
基準となる指標がないために、山林の売買では売り手と買い手の力関係次第で価格に変動が生じる可能性があります。
使用用途が少ない山林を所有し続けても、恩恵を受けられる面がほとんどないため、何とかして売却しようと考える売主も多く、価格を下げて安く売りに出しています。
取引の価格が安くなることから、不動産会社もあまり熱心に取り組まないこともあり、売買が長期に及ぶのでさらに価格を下げ、理想より安い値段で買い取られるかもしれません。
もし売却をするのであれば、売り出し価格を非常に安く設定し、買い手が現れるまで気長に待つこととなります。
山林を売買するときの注意点
相場価格は安定していませんが、山林にも価格が上下する要因はあります。
山林を売買する時の注意点についてご紹介いたします。
勉強になります!
山林の利用を規制する法律
山林には利用を規制する法律が多く存在しています。
売買を考えた時に、どのような規制がかかっているのかについて着目しておきましょう。
都市計画法 | 都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする |
宅地造成等規制法 | 都道府県知事等は、宅地造成に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地又は市街地となろうとする土地の区域であって、宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるものを、宅地造成工事規制区域として指定することができます。 |
急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律 | 急傾斜地の崩壊による災害から国民の生命を保護するため、急傾斜地の崩壊を防止するために必要な措置を講じ、もつて民生の安定と国土の保全とに資することを目的とする |
地すべり等防止法 | 地すべり及びぼた山の崩壊による被害を除却し、又は軽減するため、地すべり防止区域等の指定及び管理、地すべり防止工事等の施行及び費用負担等について定めたもの |
土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律 | 土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、土砂災害が発生するおそれがある土地の区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、著しい土砂災害が発生するおそれがある土地の区域において一定の開発行為を制限し、建築物の構造の規制に関する所要の措置を定めるほか、土砂災害の急迫した危険がある場合において避難に資する情報を提供すること等により、土砂災害の防止のための対策の推進を図り、もって公共の福祉の確保に資することを目的とする |
森林法 | 森林の保護培養と森林生産力の増進とを図るため、森林計画、保安林とその他の森林に関する基本事項を定めたもの |
上記の図のように、山林に厳しい利用制限がかかっていると売買の価格に大きく影響をもたらします。
国産木材の売買について
政府が国内の農地や山林地の保護を行っている観点から、国内メーカーが国産木材を購入しづらくなっています。
また、北欧などから購入された木材は、国内木材より安価な値段で購入できるためシェアが拡大中です。
市街化調整区域
山林を購入して建物を建てる場合は、自身が所有している土地であっても勝手に作業を進めることができません。
都市計画法によって定められている区域の種類によっては、「市街化調整区域」と呼ばれる土地があります。
この「市街化調整区域」に該当する土地であれば、建物の建築は禁止されているので、所有している土地であっても勝手に建築することはできません。
山林を購入し建築物を建てようと考えている方は、「市街化調整区域」に該当しないかどうかを確認してください。
確認方法は、購入したい物件の市区町村の都市計画課に問い合わせをすれば、教えてもらえます。
購入した山林に建物が建築できる場合でも、地目を山林から宅地に変更するための土地分筆登記と呼ばれる手続きが必要です。
土地分筆登記を行う場合には、土地の測量が必要ですので、費用と時間がかかる点に注意しておきましょう。
登記手続き
購入した山林の一部に建物を建築する際、山林部分と住宅部分の土地分筆登記を行わなければなりません。
そして、住宅建築をする土地の地目を「宅地」に変更します。
「土地一部地目変更・分筆登記申請」と呼ばれる方法を使うと、1度の申請で地目変更と分筆登記を済ませることができます。
分筆登記を行う際は、土地の測量が必要となりますので、土地家屋調査士などの専門家に相談しましょう。
山林を高い値段を売却するには?
安い価格で取引されている山林ですが、ポイントを抑えておくと高い値段で売却できる可能性があります。
山林を購入しようと思っている買手の要望に合った方法で売却すると、価値が高い物件として取り扱えます。
自分が所有する山林の特徴に合う買手を見つける必要があり、適切な買手を見つけてくれる仲介業者を探しましょう。
別荘地やリゾート地として
市街地から適度に離れた場所にある山林については、都会に住む人が自然を満喫するために別荘として使いたい人もいます。
もし、売りに出したいと考える山林に、別荘があるのであれば山林と一緒に販売することで付加価値が付きます。
山林と別荘も一緒に手に入るのであれば、購入したいとおもう買手が表れやすいと言えます。
太陽光発電用地として
山林に太陽光パネルを設置した風景を高速道路から見たことはないでしょうか?
最近の山林活用方法としては、太陽光発電を設置する場所として新たに活用されています。
山の傾斜は日当たりがとても良いため、効率よく光を集められるので山林は最適な設置場所と言えます。
また、山林には高い建物が設置されることはありませんので、長期的に運用ができます。
所有している山林を、太陽光発電用地として売却することも可能ですが、自身でも太陽光発電パネルを設置すれば収益を得られます。
山林を保有しているだけでは利益がないが、先祖代々の土地を手放したくないのであれば、この方法がおすすめです。
山林の立木や木材として
山林を売却する際、山地に樹木が生えているのであれば、切り出して山地とは別に木材として販売することができます。
また、切り出さずに山に生えている状態のままであれば立木として販売することも可能です。
山林を丸ごと売却すれば労力と手間は省けますが、通常より高く売ることはできません。
土地と樹木を別々に販売することで、山林を丸ごと売るよりも高い収益を手に入れられます。
定期的に山林を管理する
山林の管理を定期的に行っていれば、山林を高い値段で売ることができます。
全く何も手入れしていない状態の山林は、草木が生い茂り、先に進めないほど荒れ果てた状態となります。
道には倒木が横たわり、車が通れないような山林では利用価値が下がってしまいます。
高値で売りたいと考えるのであれば、買手が購入したいと思える状態に整えておきましょう。
山林の売買でかかる税金
山林の売却時にかかる税金については、山林保有期間と売却方法によって違いが出てきます。
保有期間が5年以内で、林業を事業として行っていた場合は「事業所得」となります。
その他利用であれば、「雑所得」として所得税計算を行います。
また、保有期間が5年を超えている場合であれば、「山林所得」と「譲渡所得」の2種類が課税対象となります。
立木部分は山林所得として、山の土地部分は譲渡所得として区分けされて所得税の計算を行います。
宅地でいうところの建物と土地の関係性と同じように、立木部分と山の土地部分は各部分が課税対象となりますので、各々で確定申告を行うことになります。
売買契約を締結する際には山林と土地を分け、各価格を設定しておきましょう。
山林所得の算出方法
山林所得は、売却代金から必要経費(所得費、植林費、管理費、伐採費など)と、特別控除を差し引いた山林所得が対象です。
山林所得の計算式
- (山林所得×0.2×税率)×5=山林所得税
山林所得の金額により税率が変わります。
山林所得金額 | 所得税の税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円超330万円以下 | 10% |
330万円超695万円以下 | 20% |
695万円超900万円以下 | 23% |
900万円超1,800万円以下 | 33% |
1,800万円超4,000万円以下 | 45% |
4,000万円超 | 45% |
例えば課税山林所得が300万円の場合、
(300万円×0.2×10%)×5=30万円
30万円が山林所得税額です。
譲渡所得税の算出方法
山林を売却する際に、土地部分から得られる所得については譲渡所得に分類されます。
譲渡所得は売却価格から所得費用と譲渡費用、特別控除を差し引いた金額です。
山林の所得費は不明であることが多いため、売却価格の5%を所得費とみなして算出されます。
- 課税譲渡所得金額=譲渡価格-(所得費+譲渡費用)-特別控除(一定の場合)
譲渡所得 | 所得費 | ・売った土地や建物の購入代金、購入手数料などの所得に要した金額のこと ・実際の所得費の金額が譲渡価格の5%相当額を所得費として計算 |
譲渡費用 | 1.仲介手数料 2.測量費など土地や建物を売るために直接要した費用 3.貸家の売却に際して支払った立退料 4.建物を取り壊して土地を売った時の取り壊し費用 | |
特別控除額 | ・収用などのとき最高5,000万円 ・自分の住んでいる家屋と土地を売却したとき最高3,000万円 |
譲渡所得税の計算式
- 譲渡所得×税率=譲渡所得税
区分 | 所得税 | 住民税 | 所有期間 |
長期譲渡所得 | 15.315% | 5% | 5年以下 |
短期譲渡所得 | 30.63% | 9% | 5年以下 |
※長期譲渡所得:土地や建物を売った年の1月1日現在まで、その土地や建物の所有期間が5年を超える場合
※短期譲渡所得:土地や建物を売った年の1月1日現在まで、その土地や建物の所有期間が5年以下の場合
山林にかかる相続税
宅地など他の土地を相続した場合に相続税がかかるのと同様に山林を相続した場合にも、相続税が必要です。
山林の相続税評価をする際、山林の環境によって「純山林」「市街地山林」「中間山林」の3種類に区分されます。
このうち、純山林と中間山林の相続税評価は
- 固定資産税評価額×倍率=山林の相続税評価額
上記の計算式で相続税が算出されます。
また、市街地山林の相続税評価は、宅地比準方式で行います。
- 山林を宅地とした場合の評価額-造成費=市街地山林の相続税評価額
市街地山林が所在する区域が、倍率方式の区域に該当する場合は宅地比準方式ではなく倍率方式で評価します。
市街地山林が倍率方式の区域に該当するかどうかについては、国税庁のホームページ「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」に記載されていますので、気になる方はご覧ください。
山林を売買する方法
山林を売買したいと考えても、街の不動産会社に依頼してもよいのか?どうすればよいのか分からない方が多いと思います。
山林を売買する際はどの仲介会社に依頼すればよいのかと、その時の注意点などについて解説していきます。
勉強になります
不動産会社に仲介依頼する
不動産会社に仲介を依頼することは、最も安心な方法と言えます。
ここでの注意点としては、不動産会社によっては得意とする分野と不得意とする分野が存在することです。
例えば、宅地の取り扱いを得意としている不動産会社に山林の売却を依頼したとしても、その市場に売買ルーツを確立できていませんのであまりおすすめできません。
ましてや都会の真ん中にある不動産会社に、山林の売買をお願いした所で、山林売買の経験が一度もないかもしれません。
不動産会社であればどこの不動産会社でもよいわけではなく、できれば売買したいと考える山林の近くにある地元不動産会社に依頼しましょう。
物件の近くの不動産会社であれば、山林の売買を取り扱った経験がある可能性が高くなると言えます。
そして、同じように物件近くの不動産会社に売買を依頼したい人が集まることから、売却希望者と購入希望者が繋がりやすいと言えるでしょう。
しかしながら、地元不動産会社に依頼すれば全てが良いとは限りません。
不動産会社にも得手不得手がありますので、分からない場合はホームページや直接電話で確認してみましょう。
山林売買の専門サイトを利用する
山林売買を専門的に取り扱う総合サイトがあります。
売却希望者と購入希望者が全国各地からそれぞれ登録しているので、マッチング率は高いです。
その山林売買専門の総合サイト内では、斡旋サービスを受けることができますので効率的に売買が成立するでしょう。
この場合、不動産会社に依頼しなくても見つかる可能性が高くなり、サイトによっては、スタッフが現地への同行し物件の案内を行ってくれますので安心して利用できます。
地元の森林組合に相談する
森林組合とは、森林の所有者で結成し森林の保全や林業関係の事業を共同で行うことを主な目的としている団体のことです。
このような森林組合の中には、売却相談の窓口になってくれる組合も多く、斡旋を行っている場合もありますので相談してみるのも一つの手段です。
全国の森林連合会のHPで、地元の森林組合連合会を調べられますので、売買したいと考える地方にお問合せしてください。
参考元:JForest全国森林組合連合会「都道府県森林組合連合会一覧」
仲介手数料について
不動産の売買を不動産会社に仲介を依頼すると、「仲介手数料」が発生するのと同様に、山林売買の際も「仲介手数料」が発生する可能性があります。
仲介手数料の注意点としては、通常の宅地とは異なり、山林売却でかかる仲介手数料には上限の規定がありません。
仲介手数料の上限
依頼者の一方から受領できる報酬額 | |
---|---|
取引額 | 報酬額(税抜き) |
取引額200万円以下の金額 | 取引額の5%以内 |
取引額200万円を超え400万円以下の金額 | 取引額の4%以内 |
取引額400万円を超える金額 | 取引額の3%以内 |
上記の図は、宅地建物取引業法で定められた仲介手数料の上限を表しています。
山林は宅地ではありませんので、宅地建物取引業法は対象外となり、上記の図にある仲介手数料の上限には当てはまりません。
そして、山林売買は宅地建物取引業者としての許認可を取得していない方でも仲介を行え、仲介手数料に関しても規定がありません。
仲介業者によっては、高額な仲介手数料を請求される可能性がありますので、仲介を依頼する前に仲介手数料については必ず確認しておきましょう。
後にトラブルへと発展するかもしれません。
上記表の宅建建物取引業法に準じている仲介手数料を設定する不動産会社であれば、良心的な不動産会社と言えます。
山林を売却するまでの流れ
売却までの流れをご説明いたします。
①土地状況を確認する
②売却の方法を検討する
③仲介業者を決める
④買手と売買契約を結び引き渡す
山林を売却するにあたって、特別に何か許可を取る必要はありません。
宅地などの一般的な売却方法と同様の手続きを行います。
①土地の状況を確認する
最初に、土地の状況を確認します。
山林にある道が使える状態であるか、生えている樹木の種類や本数、樹齢などについて、山の傾斜についてなどの情報を確認します。
わざわざ現地を訪れなくても、所有する土地の登記簿や森林簿を見ると確認できます。
書類の確認方法は、「登記簿」については法務局で確認できますし、「森林簿」については管轄の各市区町村にある農林課に行けば確認することができます。
登記簿と森林簿は管轄されている所で確認できますが、先祖代々から相続し続けてきた山林の場合は情報を更新しておらず、かなり古いままの情報かもしれません。
あまりにも情報が古いものであれば、実際の状態を確認しに現地を訪れる必要がでてきます。
また、山林は木々が生い茂り境界が不明確なこともあり、登記簿上の面積と実際の面積が一致しない場合があります。
その場合は、隣地所有者が立ち合いのもとで境界確定を行います。
②売却方法の検討
そして次に、売却を相談する仲介業者や、土地と木材をひとまとめとして売却するのか、個別に売却するのかを検討します。
山林はかなり広大な面積ですが、地価が安価なため、高額になる測量を行わず公簿売買(登記簿面積による売買)をおこなうことが一般的です。
公簿売買か実測売買かどちらで売買を行うのかを契約書上で明確にしておきましょう。
所有する山林の境界線が曖昧なケースが多い山林の売買では、境界線を明確にしなければなりません。
しかし、広大な面積を有するうえ、樹木が生い茂り不便な道であれば、境界を確認するために3,4カ月ほど期間を有する場合もあります。
しかし最近では、境界の確認にドローンを用いて、空中撮影からの境界確認を行うため、歩いて確認をするよりも手間と労力をかけずに短期間で状況確認ができるようになりました。
費用面から考えても測量できない場合は、登記簿に記載されている公簿面積をもとに取引を行います。
その後に必要な手続きは、通常の不動産売却と同様に行います。
③仲介業者の決定
山林売買を依頼する業者が決定すると、次に媒介契約に移りましょう。
媒介契約とは、不動産の売買や貸借などの契約をする際、売主である依頼者の保護と安全な取引、流通を担保するために不動産会社と結ぶ契約のことです。
宅建建物取引業法によっても定められており、媒介契約書の標準的な記載内容も約款で決められています。
売買をする対象の山林がある地元の不動産会社や、民間の森林売却仲介サービス、山林売買の専門サイト、地元の森林組合など、自身に最適な業者に依頼します。
仲介業者おすすめの選定方法としては、時間や手間はかかりますが、複数の業者に相談しておきましょう。
④買い手との売買契約と引き渡し
山林の買い手が見つかると、仲介業者から契約の重要事項などの説明を行い、ローンが必要な場合はローン申請をします。
全ての手順が終われば、売買契約を締結し、引き渡しを行い、名義変更と固定資産税の清算などが済めば売買手続きは完了です。
山林の売却査定に必要な書類
山林の売却査定に、必ず必要となる書類があります。
書類ごとの名前や内容、請求先などを明記していますので参考程度にご覧ください。
必要書類 | 内容・理由 | 請求先 |
登記事項証明書 | 土地の地番・地目・地積を証明する | 法務局 |
固定資産税の課税明細書 | 固定資産税額から土地の価値を証明する | 自治体 |
公図 | 山林の形と場所を把握する | 登記所 |
地盤図 | 地質状況を把握する | 地質調査総合センター |
森林情報 | 自治体の山林保護施策や取扱制限などを把握する | 自治体 |
引用元:マイナビニュース・山林の売却方法を基本から解説!買主を見つけて確定申告をしよう
news.mynavi.jp/fudosan-satei/3907
その他にも、場合によって「所有地番一覧表」「物件位置図」「地籍図」などが必要になるかもしれません。
「所有地番一覧表」とは、いくつかの地番にまたがり存在している山林について、地番ごとの所有者が記載されています。
登記事項証明書では確認することができない詳細情報がある際には必要となります。
「物件位置図」とは、山林に存在する物件の位置が記されています。
山林に空き家が建っている場合に必要となる書類です。
公的に発行される書類ではなく、山林の査定担当者か売り手が自身で作成する場合があります。
「地籍図」とは、登記事項証明書に記載されている情報を地図上に記載した書類のことです。
登記事項証明書を読んだだけでは分かりにくい位置情報を確認する時に用います。
地籍図は管轄の役場や税務署に保管されており、必要に応じて取得可能です。
まとめ
今回は、山林売買に関する価格相場や税金、売買に必要となる書類や注意点などをご紹介いたしました。
使用用途が少ない山林は、年間でも取引数が少なく安価な値段で取引されている傾向があります。
山林を売るためにはさまざまな書類を取得し、契約を交わし、仲介業者の選定から買主を探さなければなりません。
売却には手間と労力が必要なり、山林の固定資産税はそれほど高額なものではないため放置しがちです。
しかし、放置しつづけると、子どもが山林を相続することとなり、相続財産の対象ですから後々のことを考えると売却はおすすめです。
手放すと決めても、買手が少ない山林の売買市場から考えると、できるだけ早い段階から準備をしておきましょう。
もし、山林を調査することになればかなりの時間を要しますから、今後の記事を参考にスムーズに売買を進めてください。