賃貸経営をしていると、いつか立ち退きをお願いすることになる場合もあるでしょう。
立ち退きをして貰うことは滅多に無いので、立ち退き料はいくら位支払うべきなのか分からないことは多いと思います。
立ち退きをして貰う際に、交渉次第ではトラブルにもなりかねません。
問題なく進むように、この記事では大家さんが知っておくべきポイントや相場を紹介しています。
お互いが円満にいくためにも、参考にして頂ければ幸いです。
立ち退き料はいくらかかるの?
立ち退きは「借地借家法」によって定められているので、大家さんは以下の規定に沿って行う必要があります。
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申し入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換に建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
大家さんは賃貸契約の解約を、入居者にして貰いたい時には「正当の理由がある」場合のみになるということです。
正しい証明ができれば入居者は退去しなくても良いため、大家さんは更新を断れません。
借地借家法は、入居者を守るための規定になっています。
正当の理由とは、賃料を6ヶ月も滞納していても認められず、引き払って貰えない時もあります。
このように、退去して貰うのは簡単ではないということ。
では、お互い問題なく退去して貰うにはいくら払うと良いのでしょうか?
費用の目安
退去して貰う費用の相場は「賃料の6ヶ月〜1年分」です。
引き払って貰う費用は、法律で定められている訳ではなくて、あくまでも相場になります。
したがって、退去して貰う費用を必ず入居者に払うことは必須ではないのです。
話し合いによっては相場より安く済む場合と、高くなってしまうこともあるでしょう。
入居者としっかり決める必要があります。
相場が、家賃の6ヶ月分以上になる内訳を次に解説します。
費用の内訳
費用の主な内訳は以下の項目です。
- 引っ越し代
- 次に住む家の初期費用
- ネットや電話回線、保険などの移転費
- 慰謝料
- 引っ越し代
退去して貰うには、まず引っ越しはしないといけないので、費用に引っ越し代は含まれます。
オーナーの事情で入居者は退去しないといけないので、本来は発生しない引っ越し代を立ち退き費用として支払うことは多くあります。
独り暮らしの場合は3万円位で、4人ファミリーの場合は6万円位が引っ越し代の相場です。
しかし、3月辺りの繁忙期だと引っ越し代は相場より高くなります。
立ち退きをお願いするなら繁忙期を外しておくと良いです。
次の家の初期費用
新しく住む家の初期費用は大体、仲介手数料、敷金、礼金などがかかるもの。
入居者にとって引っ越しの初期費用は大きな負担になるため、退去の費用と計算されるのが、ほとんどです。
ネットや電話回線、保険の移転費
ネットや電話回線は、引っ越しの度に開設工事や移転工事が必要になります。
開設工事の相場は大体1万〜2万円です。
また、解約料が発生することもあるので、その際も費用に含まれるでしょう。
賃貸で入居する時のほとんどは、火災保険に加入するものです。
次の家に入居する際にも保険に入らないといけないので、保険代も費用に含まれるものとします。
慰謝料
引っ越しにかかるお金を立ち退きの費用として支払うことが多いですが、加えて入居者の精神的ストレスも考慮して、慰謝料がかかることもあります。
例えば、小学生くらいの子供がいる家庭なら子供の転校なども考えなくてはいけません。
親の場合は職場が離れてしまって通勤が不便になることも。
生活環境が変わるのは少なからずストレスがかかるものです。そのため、慰謝料がかかることも念頭に置いておきましょう。
慰謝料の相場は人によって様々なため、数値化するのは難しいですが、そのような時は弁護士に相談して慰謝料を取り決めるのも円滑になります。
必要になる時とは
費用の相場や内訳については分かりましたが、入居者に引き払って貰わなくてはいけない時とは一体どんなシーンなのかよくある例をそれぞれ紹介していきます。
- 不動産を売ることになった
- 老朽化が進みリフォームをすることになった
- 再開発が行われることになった
- 不動産を売ることになった
大家さんの都合で不動産を売らなくてはいけない時は、退去して貰う費用を払う場合が多いです。
例えば、
- 物件の維持が経済的に難しくなったため
- 返済が滞り不動産を売らないといけない
- 離婚で慰謝料が必要になったから
など色々な理由から不動産を売却すべき事態になった時です。
大家さんの事情で入居者が引き払わないといけない時は、費用が高くなりやすく、話し合いで決まります。
入居者とのこれまでの信頼関係から、退去して貰う費用の交渉は円滑に行われると言えます。
リフォームすることになった
リフォームに関しては、費用を払う必要がある時と、払わなくても良い時があるもの。
費用を支払うリフォーム | 費用を払わなくても良いリフォーム |
自分が住むため空室を防ぐため | 高齢者のためにバリアフリーにする老朽化で設備を新しくするため |
引き払って貰う費用が必要となるのは、自分のためのリフォームを行う時です。
入居者のためのリフォームは、費用を払わないで済む場合が多くなります。
再開発が行われることになった
再開発が行われる時も、退去して貰う費用を出さなくてはいけません。
基本的に再開発の場合は、国や自治体から大家さんは立ち退き料を貰える確率が高いので、入居者にも支払う必要があります。
費用は課税されるの?
立ち退き費用は課税されることが少ないです。
立ち退き費用の所得は区分されていて、以下の内容の時は税金を支払うこともあります。
譲渡所得 | 国や自治体から受け取った |
事業所得 | 事務所の明け渡しの際に退去の費用を受け取った |
一時所得 | 譲渡所得以外で退去の費用を受け取った |
また、大家さんが支払った立ち退き費用は経費として計上できます。
不動産を売るために部屋を引き払って貰った時、譲渡所得となるので必要な経費です。
譲渡でなかった場合でも、不動産所得があったら経費になりますね。
支払うタイミング
一般的に、退去の費用を払うタイミングは、不動産の明け渡しの際です。
とはいえ、支払う時期は法律で決められていないので、入居者と話し合って分割で払うのか、いつまでに払うのか決めていきます。
入居者は退去に引っ越し代が必要になるので、立ち退き前に請求されることがほとんどでしょう。
大家さんは、退去前に引っ越し費用を入居者に渡して、残りの分は不動産の明渡しで支払うこともできるので話し合ってみてください。
退去の負担をしないとどうなる?
大家さんの正当な理由がまずは必要になりますが、一方的に告知しても立ち退きは成立しません。
基本的に入居者は「借地借家法」で守られていて、次の住む場所も定まっていない状態で退去を命じたりするなら、損害賠償を求められることもあります。
入居者は退去の費用が払われないことを理解していれば問題ないのですが、合意がない限り裁判と発展していくでしょう。
訴訟となったら大家さんの支払う退去費用は、高くなることがほとんどです。
昔の判例でも家賃8万円前後の立ち退き料は、400万円前後となったことが幾つもあります。
したがって、「退去費用を払わない」と入居者に一方的に伝えても、最終的に大家さんの負担する額が多くなってしまうので、合意をして貰うことが重要です。
次は、退去して貰う順序を確認していきましょう。
立ち退きの流れや理解しておくポイント
退去を入居者にお願いして引き払って貰うまでの間は、以下のような流れが一般的です。
勉強になります!
- 立ち退きの通達
- 入居者と話し合い
- 新居を紹介する
- 解約手続き
それぞれ解説していきます。
①通達をする
部屋を引き払って貰うためには、最初に通達をします。
引き払って貰う期間など考慮すると、6ヶ月〜1年前位に入居者へ告知する必要があるでしょう。
入居者に伝える方法は、口頭か書面の2つの方法があります。
解除の種類は下記の通りです。
種類 | 内 容 |
更新拒絶 | 大家の都合によって契約解除。退去費用の負担は有り。 |
合意解除 | 退去費用は支払わず、お互い合意の上で契約解除。 |
契約解除 | 入居者が原因で解除。 |
通知の内容は、入居者が納得いく理由であることが重要です。
退去して貰う際に大家さんが、入居者にどういった協力をする予定なのか、詳しく記載してあげると良いです。
- 退去して貰いたい時期
- 立ち退きの理由
- サポート内容
- 退去の費用が発生する場合は金額を記載
②入居者と話し合い
大家さん事情で立ち退きを依頼する場合は、入居者に対して誠意を持って対応することが大切です。
1年前から退去して貰いたい旨を通達したとしても、入居者は不安な気持ちになるというもの。
入居者の立場になって考えられると、立ち退きの話し合いも円滑になりやすいでしょう。
特に立ち退き料に関しては、納得いく金額なのかどうか重要なポイントです。
入居者の状態によっては色々と考慮する必要があるので、以下の内容を聞いてあげると親切です。
- 新居に求めているものは何か
- 通勤や通学にどのような影響があるか
- 子供はいるのか
③新居を紹介する
次に住む家を入居者に提案してあげるのも、立ち退きがスムーズにいく方法になります。
入居者に次の家を紹介してあげるには下記を参考にしてみてください。
- 近くで同じような条件の物件を探してあげる
- 大家さんが所有している別の物件
- 入居者自身で探す
大家さんが他にも賃貸物件を所有していたり、他の物件を紹介してあげたりすることで、退去費用を安くできる可能性が高くなります。
しかし、大家さんが提案した物件が、入居者にとって理想ではなかった場合、自分自身で次の家を探して貰うのが良いでしょう。
その際には、入居者の新しい家探しのサポートをしてあげられるのが望ましいです。
④解約手続き
入居者が立ち退きの条件に納得したら、解約手続きを行います。
万が一、入居者が退去の費用に不満があったり、内容に納得しなかったりした場合などは、裁判になるケースもあるのです。
裁判になったら大家さんの正当な理由が問われることになり、大家さんの事情を分かって貰えた場合、入居者は退去することになります。
6つのポイント
退去の際には、なるべく入居者とトラブルになりたくないもの。
最悪、裁判になるのは避けたい所です。
そのため、入居者と話し合いを行う際に知っておくべき6つのポイントを紹介していきます。
参考にします!
- 正当な理由を明確にする
- 退去して貰うための費用を提示
- 退去の話し合いは書面で書き記す
- 期間を長めに設けてあげる
- 専門家に交渉をお願いする
- 入居者に依頼している立場
立ち退きは問題になりやすいので上記のポイントを把握していきましょう。
正当な理由を明確にする
大家さんは住居を貸している側なため、入居者より立場的に上かと思われがちですが、実はお互い対等であります。
よって、大家さんは退去を望むなら、正当な理由で入居者に認めて貰うのが重要です。
正当な理由でなければ交渉はスムーズにいかず、入居者から費用を多く求められ、裁判になった場合は訴訟費用もかかってくることになります。
また、入居者の合意もなく一方的に退去を望む場合、大家さんには不利なことがおきやすいです。
大家さんからの強制退去は、そもそも契約違反になってしまうので、きちんと理由を明確にして入居者と交渉を行うのが重要なポイントです。
退去して貰うための費用を提示
退去をお願いされた入居者にとって一番不安なことは、引っ越しなどにかかる費用です。
本来なら支払うことのない高額な引っ越し費用が必要になるので、立ち退き料を求められこともあるでしょう。
店舗や事務所に退去して貰いたい場合だと、移転などの費用が必要になります。
仕事にダイレクトに影響があるので、その場合は補償費用を支払うのが親切です。
それぞれ、どのくらい費用がかかるのか、内訳をきちんと提示しましょう
住 居 | 店舗や事務所 |
新居の初期費用引っ越し代ネットや電話回線の移転費用 等 | 新しい店舗の家賃休業補償引っ越し代 |
退去の話し合いは書面で書き記す
退去して貰いたい時は両者の話し合いで決まっていきますが、口頭だけだと後からトラブルになることも。
そのため、しっかり話し合ったことは書面で書き記しておくのが大切です。
書面に書き記しておくことを「合意書」とも言いますが、内容は以下の点を書き留めておきます。
- 退去の日
- 引っ越し代
- 支払い方法
- 退去の合意
- 引き払わなかった時の損害金
このように細かく交渉した内容を記載しましょう。
口頭だけだと後日、細かく取り決めたことが確認できないので、お互いのために書面に残しておきます。
入居者が退去することに対して応じたのに、後になって退去しなかった場合の損害金なども後から揉めないように、決めておくようにしてください。
期間を長めに設けてあげる
立ち退きまでの期間が半年以内など短い場合は、入居者にとってストレスになりトラブルに発展しやすいと言えます。
したがって、期間を長めに設定してあげることが重要です。
退去までの期日に1年位の余裕があれば、入居者も大家さんの交渉に応じてくれやすくなります。
また、退去の費用も出してくれるなら入居者にとって、プラスになることも多く、立ち退きまでスムーズに進むことでしょう。
立ち退きが決まったら、なるべく早く通達して対処することが重要です。
専門家に交渉をお願いする
退去をして貰うのはトラブルになりやすいですが、大きな問題と発展しないためにも、専門家である弁護士や司法書士の方に交渉をお願いする方法があります。
場合によっては、大家さんにとって条件の良い交渉と進む可能性があるというもの。
とはいえ、依頼には費用がかかり、それなりの引っ越し代を負担することもありますが、トラブル回避になることはメリットになります。
また、アパートのように複数の部屋を賃貸していたら、何人もの入居者と交渉することになるので大変な作業です。
専門家に依頼する際は、立ち退きの交渉に強い弁護士や司法書士を選ぶようにすると良いです。
入居者に依頼している立場
立ち退きの話し合いは、退去して貰う費用を安くするためのものではないことを認識しておきましょう。
分かりました!
退去して貰うことを入居者にお願いする内容になるため、大家さんは自分のことだけを考えず、入居者のこともしっかり考慮してお互い合意の上で決めます。
入居者の合意が得られないと、いつまでも交渉が長引いてしまって、お互い大変な思いをしてしまいます。
よって、交渉をスムーズにいかせるためにも、入居者とは日頃から良い関係を保っておくのが大切です。
管理会社は交渉が不可
退去して貰うために話しができるのは大家さん本人か、弁護士や司法書士が代行するかのどちらかです。
大家さんが管理会社に委託していたとしても、退去して貰うための依頼をすることは不可になります。
管理会社が入居者に退去願いの通知をすることは、そもそも法律違反になるので、気をつけておきましょう。
立ち退き料が必要ないケースと注意点
退去して貰う費用は基本的に大家さんが支払うものですが、法律では義務となっていないため、費用が発生しないケースもあります。
退去して貰う費用が必要ない場合とは一体どんなケースなのか紹介していきます。
勉強になります!
入居者が契約違反している
入居者が契約違反している場合は、正当な理由として認められるため、費用を払わないで退去して貰えるのです。
例えば、入居者が契約違反しているケースは下記になります。
- 家賃を滞納している
- 住居目的なのに別の使い方をしている場合
- 部屋の清掃をしないで汚い状態
- 騒音がひどくて隣人に迷惑をかけている
- ペット不可なのに飼育している
- 許可なくリフォームを行う 等
このような契約時の内容を守れていない場合は、契約違反となります。
入居者に注意するのも精神的に大変なので、司法書士などに相談して立ち退きが有利になるように動いておくのが良いです。
加えて、立ち退きに応じて貰えない時は、遅延した損害金を求めることができます。
契約が満了する
賃貸契約を結ぶ時に、自動更新をしないという前提で契約期間を決めて貸す方法があります。
自動更新の契約は、明確な期間が設定されていないので、更新の時に契約解除のお願いをしても、費用が発生することはほとんです。
契約期間が決まっているなら、退去の費用を払わないで引き払って貰えます。
入居者がまだ退去したくない場合は、再度契約を結ぶ必要が出てきます。
期間が決まっている契約の方法は以下のような内容があります。
方法 | 内 容 |
解体まで期間契約 | 解体するまでの契約 |
定期借家契約 | 期間が予め決めてある契約 |
短期の契約 | 短期の使用が条件の契約 |
上記のような契約を結んでいた場合は、期間満了になったら入居者は退去しなくてはいけません。
オーナーが使用する
大家さんが所有する賃貸物件に大家さん自身が住む時は、退去の費用を払わなくても良いケースがあります。
他に、大家さんの家族が住むことになったり、大家さんが事業で物件を使用することになったりした時もです。
このような場合、大家さん都合になりますが、所有権があるのは大家さんです。
しかし、大家さんに物件の権利があったとしても、立ち退き料を支払うケースもあるので、入居者との話し合いが必要になることを念頭に置いておきましょう。
オーナーが変更になった
大家さんの事情で賃貸物件を手放さなくてはいけなくなり、オーナが変わることで入居者に退去して貰うことがあります。
大家さんが違う人になると退去の費用を払わなくても良くなることがあります。
例えば、大家さんのローン返済が滞ってきた場合、競売に出されることがあり、入居者はそうなると強制退去に。
退去はもちろん、立ち退き料も支払われません。
金融機関はローンの残債を回収する権利があるため、裁判を行っても立ち退き料は支払われない可能性が高いです。
また、新しい大家さんは強制執行ができるので、入居者はそうなると直ぐに退去しなくてはいけなくなるでしょう。
入居者が退去してくれない場合
立ち退きをお願いして大家さんが色々進めていたとしても、入居者が受け入れてくれないことも中にはあります。
その場合、入居者に立ち退き料を多めに払って交渉する方法もありますが、裁判に発展する可能性が高いです。
裁判で注目される点は、大家さんの正当な理由や、立ち退き料の金額です。
裁判官が下す判決のほとんどは、「立ち退き料〇〇万円と引換えに退去すること」又は「明渡しの請求を棄却する」のパターンになります。
もし、判決が入居者の退去となったのに、いつまでも出て行かない場合は、強制執行ができます。
弁護士に相談してみる
立ち退きの交渉をしても入居者の合意が得られなかった場合などあったら、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することによって、裁判までいかずに話がまとまることもありますね。
弁護士に相談した方が良いケースは、前述した以外にもこちらです。
- 高額な立ち退き料を求めてくる
- 常に家賃が遅れている
- 音信不通になった
- 高額請求の入居者
立ち退き料には上限などありませんが、相場はあります。
相場より高過ぎる金額を求められた時は、弁護士に相談した方が良いです。
オーナーの事情で立ち退き依頼した時でも、必要以上に費用を支払わなくても良いのです。
常に家賃が遅れている入居者
常に家賃が遅れている入居者の場合は、大家さんにとって有利な交渉ができる状況と言えます。
基本的に退去して貰う費用を払う必要もない場合があるので、この際も専門家に相談するのが良いでしょう。
どのくらい家賃が滞納している入居者なのか、細かく情報を伝えてください。
音信不通の入居者
立ち退きの通達をしても、返事がないなど音信不通になった場合も、弁護士に相談するべきです。連絡が取れないことには交渉もできません。
音信不通になっていた入居者というのは、後から知らされていなかったなど、揉めることが多いです。
人として常識のある入居者なら、音信不通になるということは考えられません。
揉めて時間を取られるより、専門家にお願いした方が良いです。
大家さんと入居者の契約ですが、両者だけで解決できないこともあります。
そのような時は第三者の弁護士など専門家に入って貰って、問題をスムーズに解決しましょう。
次に、立ち退きの問題が発生した時の解決した事例を紹介していきます。
立ち退きのトラブル事例
オーナーにとってトラブルは早く解決して、退去して貰いたいもの。
退去して貰うには、入居者との合意が必ずなくてはならないものですが、いくら話し合っても困難な場合はやはり弁護士に相談したり、裁判になったりするでしょう。
そういった過去の解決した事例をいくつか紹介するので、是非参考にしてください。
参考になります。
周りに迷惑をかける入居者を立ち退きさせた事例
迷惑をかけている入居者は、不通の生活音しか出していない隣人に対して「うるさい!」とクレームを直接言ったり、物件の周りにタバコの吸い殻を捨てたり、騒音も酷い人でした。
その内に隣人達は、その入居者に耐え切れなくなり、ストレスから他の賃貸へ引っ越してしまったのです。
大家さんが迷惑をかけていた入居者に注意をしても、周りがうるさいせいだったと自分の醜態に反省は全くありませんでした。
大家さんは弁護士に相談して、入居者と直接交渉して貰うように依頼。
入居者は立ち退きに合意して、明け渡しに成功しました。
退去してくれたのは良かったのですが、部屋の壁には殴ったと思われる穴が空いていて、鍵もない状態で生活していたと分かり、酷い部屋の使い方をしていました。
このような入居者の場合は、自分が迷惑をかけているという自覚が全く無いので、注意しても意味がないと判断できます。
他の部屋も空室を出して大きな損害になるため、早めに専門家に相談した方が良いです。
1年間家賃滞納していた入居者を3ヶ月で立ち退きさせた事例
家賃を滞納する前は、ずっと毎月家賃を遅れずに支払っていた入居者。
何故か分かりませんが、いきなり家賃を滞納するようになったのです。
大家さんが家賃の支払いをするように連絡をしても繋がらず、書面をポストに入れても音沙汰がなく、入居者が部屋にいるか夕方に直接確認しに行ったら、部屋に電気は付いていたようで住んではいるようでした。
大家さんは連帯保証人に家賃を支払うように連絡したけど、支払いを断れたそうです。
大家さんは弁護士に家賃が1年間遅れていることを相談します。
弁護士は直接、入居者と連帯保証人に交渉します。
二人に交渉しても話し合いがまとまらなかったので裁判を行うことに。
結果、滞納した家賃を分割払いするということで和解し、大家さんは全額回収できました。
家賃を滞納している入居者と連絡が取れない場合は、話し合いだけで解決しないケースが多いです。
大家さんも自らが家賃を催告しても意味がないことに早く気づき、訴訟をした方が良いでしょう。
古くなった物件の立ち退き事例
賃貸物件の劣化がかなり進んでいたため、大家さんは周りに危険を及ぼすと考え、解体を決意しました。
大家さんは入居者に解体したいから契約解除の依頼をしました。
しかし、入居者は引き払うことに応じず、大家さんが紹介してくれた引っ越し先にも不満があり、そのまま退去せず2年が経ちます。
大家さんは何度も退去のお願いを入居者にしても、聞いてくれなかったので弁護士に依頼。
弁護士は入居者と交渉しようとしましたが、連絡がつかないため直ぐに裁判をすることにしました。その後、入居者はやっとで立ち退きしてくれました。
劣化が進んでいる建物をそのままにして通行人に怪我を負わせてしまった場合は、大家さんの責任になる可能性があります。
解体を考えますが、立ち退きに応じてくれない入居者に対して、正当な理由を証明するために建物の調査が必要になります。
調査には時間がかかるため、早く立ち退きをして貰うためにも、直ぐ専門家に調査依頼をすることをおすすめします。
強制執行で立ち退きさせた事例
家賃の滞納がなく2年過ぎたあたり、いきなり入居者から家賃の支払いがなくなり、心配になった大家さんは催促の連絡をしましたが、全く応答がありませんでした。
大家さんは連絡が取れないため、直接入居者の部屋へ尋ねます。
入居者は部屋に居たけど、大家さんに気付くと直ぐに玄関を閉めてしまい、居留守を使う始末。
その後も滞納が続き、1年半以上家賃が払われないことで、やっと弁護士へ依頼します。
弁護士と入居者が直接交渉しようにも連絡がつかず、応答もなかったので強制執行の申し立てをすることにします。
強制執行の手続きをしている最中に、入居者は突然荷物を残したまま夜逃げをしてしまいました。
部屋に残された荷物は売りに出して処分し、立ち退きをさせることにやっと成功。
このように家賃滞納の催促を何度しても応答が全くない場合は、最後まで連絡がつかないケースが多いです。
家賃回収ができず、損失をなるべく抑えるためにも、早めに法的な対処をすることが重要です。
滞納した家賃を回収して退去した事例
家賃の滞納は最初なくても、少しずつ遅れて支払うようになると、1ヶ月の滞納が2ヶ月、3ヶ月へとどんどん増えていくものです。
大家さんは催促をできるような性格ではなく、家賃が3ヶ月遅れた時に弁護士へ相談。
合意は直ぐにして貰い、家賃の滞納分は分割支払いとなりました。
このように、家賃滞納が続いたら早めに行動を起こした方が、問題も直ぐに解決し、損失も少なく済みます。
大家さんが催促しても話し合いが難しいケースは多いです。
できれば大家さんと入居者の間で話し合いが完結できれば良いのですが、入居者によっては困難になることも。
紹介した事例でも分かるように、早期のアクションが立ち退きトラブルの解決法となりますので、念頭に置いておきましょう。
まとめ
立ち退き料の相場は家賃の6ヶ月〜1年分であることが分かりました。
しかし、退去して貰う費用は法律で決められている訳ではないので、必ず払わなくて大丈夫です。
前述したトラブル事例では、大家さんが支払う必要は一切ありません。
一方、大家さんの事情による退去の依頼は、正当な理由が必要です。
入居者の合意の上で決めなくてはいけないため、その際には退去して貰う費用は発生するでしょう。
入居者が不服に思い訴訟したら、思った以上の高額な費用を支払う羽目になることも。
相手の立場になって考えてあげられると、問題になりにくいと言えます。
日頃から入居者とは良好な関係を気づいて、いざ立ち退き依頼をすることになったら、話し合いをしっかりして、お互い納得のいく円満な立ち退きにしましょう。