マンション経営を行なっていると、さまざまな理由で賃貸のオーナーや大家から住人に立ち退きを言い渡さなければいけないこともあります。そんな場面で、不動産オーナーや大家から賃借人に立ち退き料を支払うことがあるのです。
実際に退去を申し出るとき、どのように対応すればいいか分からないです…。
今後絶対に無いとも言い切れないので、事前に確認しておくことが大切です。そこで今回は、立ち退き料における基本情報や仕組み、費用目安について紹介します。
目次
立ち退き料って何?なぜ必要か知ってる?
そもそも立ち退き料とは、不動産のオーナーや大家が貸主に退去してもらうために支払うお金のことです。
お金を支払うのは、借主の都合で退去を決めたわけではないからです。
少しでも賃借人の負担を減らしたりスムーズに退去を進めたりすることが大きな目的になります。
立ち退き料が必要な理由は?
賃貸物件を借りる貸主は、基本的に賃貸借契約によって守られていることを知っていますか。
賃貸借契約とは、物件を借りるにあたり不動産のオーナーや大家と賃借人の間で交わされる契約書のことです。入居が決まったら、賃貸借契約を必ず結ぶことになっています。
この契約書があると、正当な理由がない限り賃借人を退去させることはできません。
また、不動産のオーナーや大家は更新を拒否することもできないのです。このように賃貸借契約は賃借人に有利な内容になっているのが通常です。
なぜ賃借人に有利な契約内容になっているかというと、少しでもリスクを軽減させるためです。
不動産のオーナーや大家に独裁的な権限があると、立ち退きが横行してしまうことになります。それは、賃借人にとって不利ですよね。
賃貸借契約は賃借人を守るために存在しているのです。
では賃貸のオーナーや大家が立ち退きを言い渡せる正当な理由は、どんなことが挙げられるのでしょうか。
法律上で決められているわけではないので、明確な基準は設けられていません。
しかし、「半年間家賃を支払っていない」などは正当な理由として認められることが多いです。
一方で、「建物を建て替えたい」「リフォームしたい」などの理由では退去を求められない場合もあります。このように理由によっては、強制的に賃借人を立ち退きできない場合もあるので十分に注意しましょう。
立ち退き料の目安費用は?
立ち退きは賃貸オーナーや大家の都合で言い渡すため、立ち退き料を渡して入居者の負担を最小限に抑えることが重要なポイントです。
立ち退きを言い渡すときは、貸主が負担することになる金額は引越しや新居の敷金や礼金、不動産会社への仲介手数料が発生することが考えられます。
これらの費用を負担する意味でも、家賃の5ヶ月~6ヶ月程度を支払うのが一般的です。
しかしコストを抑えたくて安い費用に設定する不動産オーナーや大家も少なくありません。しかし、スムーズに契約が進まないこともあるので注意が必要です。
ただし、入居者に落ち度があって退去を申し出る場合は立ち退き料を安くできるケースもあります。例えば、一定期間以上の家賃滞納や周囲への迷惑行為などが挙げられます。
立ち退き料の内訳を確認しよう
内訳 | 内容 |
新居の初期費用 | 敷金・礼金・仲介手数料・1か月分の家賃 |
新居にかかる費用 | 火災保険・地震保険・インターネットや電話回線 |
引越し費用 | 引越し業者に依頼 |
慰謝料 | 引越しに伴う迷惑料 |
はじめは、新居の家賃にかかる敷金や礼金、仲介手数料です。
貸主は賃貸のオーナーや大家の強制的な退去勧告により、現在住む自宅から退去することが求められます。
そのため、通常であれば発生しなかったであろう敷金や礼金、仲介手数料を含める必要があります。
敷金や礼金、仲介手数料を含めるかどうかは当人の判断に任されますが、多くの不動産オーナーや大家は立ち退き料に含むケースが多いです。
2つ目は、移転費用です。
移転費用とは、火災保険や地震保険、インターネット回線にかかるお金のことです。
特に火災保険や地震保険は加入を必須とする物件も多いので、引越しの初期費用が発生してしまいます。そのため、立ち退き料に火災保険や地震保険を含まれます。
近年は、物件自体にインターネット回線が通っているケースも増えました。その結果、個人でインターネットや電話回線を契約し直すことも少なくなっています。ただ、新居先の状況は今の時点では分からないので、立ち退き料に含めておくことが望ましいでしょう。
3つ目は、引越し費用になります。
引越し費用とは、引越し業者に依頼する際にかかる費用です。
貸主は賃貸オーナーや大家の都合により退去させられるので、本来であれば発生することのない費用を支払うことになります。貸主の負担を少しでも軽減させるために、立ち退き料には引越しの費用が含まれていることがほとんどです。
最後は、慰謝料と迷惑料に関して見ていきましょう。
急な立ち退きの言い渡しで賃借人はストレスを感じたり労力を使ったりすることになります。
特に小さな子どもがいる家庭であれば、転校を余儀なくされることもあるのです。そういった総合的な事柄から立ち退き料には慰謝料・迷惑料が含まれるのです。
立ち退きの流れ
賃借人は立ち退きを言い渡されると、新居探しや引越し準備などしなければいけないことが多く出てきます。
そのことを踏まえて、不動産オーナーや大家は、1年~6カ月前言い渡すことが望ましいです。
ここからは、立ち退きの言い渡しから退去手続きまで一連の流れを紹介します。
まずは立ち退きの理由を書面で伝えましょう。
書面の作成は自分で作成することも可能ですが、内容に不備があるとスムーズに進まないこともあります。もし不安を感じるなら、不動産会社や弁護士に任せるのがおすすめです。
書面ができたら、次は賃借人に口頭で説明を行います。
書面だけでは伝えきれない事柄を捕捉する形で、立ち退きに関する理由を口頭で説明することが重要なポイントです。
直接説明することで食い違いも減り、その後大きな問題に発展することもありません。この段階で賃借人の了承を得られることができれば、その後の手続きもスムーズに行えるはずです。
立ち退き料に関してもこの時点で話し合いを行いましょう。
賃借人によっては立ち退き料の支払いが不要なこともありますが、立ち退き料を払うことで納得してもらうケースがほとんどです。そのため、不動産オーナーや大家は、立ち退き料は支払う前提で準備を進めるのが望ましいでしょう。
最後は、退去手続きを取ります。
もしこの段階で賃借人の了承を得られなかった場合は、裁判で争うことになります。裁判では退去理由の正当性を争うもので、不動産オーナーや大家の申し出が認められると強制的に賃借人を退去させることが可能です。
立ち退き料が不必要なケースがあるの?
立ち退きは貸主に強制的に退去させることになるので、必ず支払わうものと考える人も少なくないでしょう。しかし、中には立ち退き料の支払いが必要ない事例もあるのです。
立ち退き料は貸主の負担を減らすことが目的ですが、多額の費用が発生してします。そのため、立ち退き料を払いたくないのが本音なのではないでしょうか。
どの様な時に立ち退き料が必要になるのでしょうか?
立ち退き料が必要、もしくは不必要な場合を説明します。理解してそれぞれに合わせて対応しましょう。
必要な場合①不動産を売却する
賃貸オーナーや大家の都合で不動産を売り出す場合は、住人に立ち退き料を支払うことが必要です。
不動産オーナーや大家が不動産を売却する理由はさまざまで、例えば下記のことが考えられます。
- 不動産を維持することが難しくなった
- 巨額の負債を理由に不動産の売却が必要
- 遺産整理に向けて不動産売却をしたい
- 離婚するにあたり現金が必要になった
- 不動産がインフラ整備区画に該当している
これらに該当する場合は、立ち退き料を支払う必要があります。
また、賃貸オーナーや大家による都合での立ち退きは、費用も高額になる傾向にあります。賃借人と直接話し合いを設けるときは十分に注意しましょう。
賃借人が確認して問題がなければそのまま契約に至ります。しかし、不十分だと感じられた場合は費用を上げるように要求されることもあります。
コストを抑えることよりも、賃借人の承諾を得られる金額設定が重要なポイントになるでしょう。
必要な場合②物件のリフォームをする
物件をリフォームする場合も立ち退き料を支払う必要があります。
リフォームの理由によっては立ち退き料が発生しないこともありますが、発生する場合の理由は以下のことが考えられます
- 空室を埋めるためのリフォーム
- 不動産オーナーや大家が入居目的のリフォーム
- 節税を目的としたリフォーム
まず、空室対策のリフォームは物件の老朽化を理由に進められることが多いです。
不動産投資において部屋の空室が多いと毎月一定の家賃収入を得ることはできません。そうなると、不動産オーナーや大家は負債を抱えるだけになります。
次は、賃貸のオーナーや大家が入居目的のリフォームです。
リフォームは建物の老朽化によるものですが、入居目的であれば完全に賃貸のオーナーや大家の都合なります。立ち退きが正当な理由と判断されなかった場合は、立ち退き料を支払わなければいけません。
最後は、節税を目的としたリフォームです。
実は物件をリフォームしたとき、固定資産税の減額を受けることができます。
固定資産税は、所有する資産に対して課せられる税金のことです。
固定資産税が認可される条件は下記の通りになります。
- 50万円以上の工事費用をかけた省エネ改修工事
- 耐震改修工事
- バリアフリー改修工事
また、上記の条件に該当することはもちろん、リフォームの工事が完了してから3ヶ月以内に市区町村に申告しなければいけません。申告に必要な書類は国税庁のサイトで確認できるので、内容を確認して早めに申告することが望ましいです。
不必要な場合①賃借人に契約違反があった
賃貸人が契約違反をしている場合は、立ち退き料を支払わずに待機してもらうことが可能です。
不動産における契約内容はそれぞれ異なるので内容はその都度確認する必要がありますが、考えられる主な理由は下記の通りになります。
- ペット不可の物件で不動産オーナーや大家に隠して犬や猫を飼っていた
- 一般常識では考えられないような劣悪な環境で住んでいた
- 賃貸とは違う目的で利用していた
- 他の住人に迷惑をかけていた
まずは、不動産オーナーや大家に隠れてペットを飼っていたことを知ったときは、立ち退き料不要で賃借人に立ち退きを言い渡すことができます。
立ち退き料が費用な理由は、完全に賃借人にルール違反が見られるので、賃借人の退去が正当な理由として認められるからです。
次は、賃借人が一般常識では考えられないような劣悪な使い方をしていたときです。
例えば、部屋の中にゴミを溜め込んでいたり全く掃除をしていなかったりが該当します。いくら家賃を支払っているからといって一般常識を超えて好きなように使用していいわけではありません。この場合は、立ち退き料を支払わずに退去してもらえます。
続いて、貸し出している物件を転貸している場合は、ルール違反と判断されるため立ち退き料を支払う必要はありません。
近年は、物件を宿泊先として貸し出すサービスを提供する投資家も増えています。ただし、賃貸物件を転貸するのはルール違反になります。その結果、立ち退き料を支払わずに退去を言い渡すことができるのです。
最後は、他の住人に迷惑をかけていた場合になります。
例えば、夜中にフルボリュームで音楽を聴いていたり他の住人の駐車スペースに車を停めていたりなどがあります。住人や近隣の人から不動産オーナーや大家にクレームの電話があった場合は、立ち退き料は不要です。迷惑行為として立ち退きが正当な理由として認められます。
不必要な場合②賃貸の契約期間が超えている
契約方法 | 契約条件 |
定期借家契約 | 契約期間の満了で契約が失効する |
解体前提の限定期間契約 | 解体までの条件付きで契約した |
短期使用目的の契約 | 一時的に借りる条件で契約した |
賃貸契約する際は契約期間が決められています。契約方法は、定期借家契約・解体前提の限定期間契約・短期使用目的の契約の3種類あります。
定期借家契約とは、契約期間の満了において契約が確定的に終了する借家契約のことです。
通常は借家契約は賃借人を守るために有利な内容になっているため、更新を申し出た場合は不動産オーナーや大家は拒否することはできません。
しかし、定期借家契約においては制約がないので賃借人の更新申請を拒否することができます。
そのため、契約が満了を迎えたときは退去を言い渡すことができるのです。
立ち退き料を支払いたくないときは契約満了を迎えるのを待つのも一つの方法だといえるでしょう。
2つ目の限定期間契約とは、建物の取り壊しを前提とした借家契約のことです。
契約を交わす時点で賃借人も賃貸は限定契約であることを理解しているため、契約を満了したときに強制的に退去を言い渡すことができます。
将来的に立ち退きを言い渡す可能性が少しでもあるなら、借家契約を結ぶときに限定期間契約の方法を取るのがおすすめです。
最後は、短期使用目的による契約になります。
短期使用目的による契約とは、一時的に借りる条件のもと貸し出すことです。
例えば、ウィークリーやマンスリーでの貸出方法が短期使用目的による契約に該当します。この場合も契約満了時に賃借人に退去してもらうことが可能です。
不必要な場合③オーナーや大家が物件を利用する
住人が立ち退いたあと不動産オーナーや大家が物件を利用する場合、立ち退き料の支払いが必要だと考える人も少なくないでしょう。ただケースによっては立ち退き料が不要だと判断されることがあります。該当する項目は、下記のとおりです。
- 不動産オーナーや大家自身の住居用として必要になった
- 不動産オーナーや大家の家族が住居することになった
- 不動産オーナーや大家が運営する店舗として使用することになった
これらの理由は不動産オーナーや大家都合による退去命令であることは間違いありませんが、物件保有者の権利として許容される範囲になります。
ただ、立ち退き料を支払うかどうかは賃借人との話し合いで決定されることがほとんどです。
逆に住人から立ち退き料を提示された場合は、不動産オーナーや大家の権利を主張することはできません。この場合は、立ち退き料を支払う必要があることを理解しておきましょう。
立ち退き料の交渉ポイント
賃借人に立ち退きを言い渡すとき、うまく交渉をしないと話し合いがスムーズに進まないことも少なくありません。
状況によっては立ち退き料が必要ないケースもありますが、それは稀で必要になることがほとんどです。はじめから低く見積もった立ち退き料で交渉すると、話し合いで住人と決裂になることもあるのです。
しかし、どのように交渉すればいいのか分からないです…。
どうしたらいいでしょうか?
ここでは、立ち退き料の交渉を行うときに注意したいポイントを紹介します。交渉をうまく進めるためにも事前にしっかり確認しましょう。
退去するまでの期間を長く設定する
期間 | 賃貸人の気持ち |
6ヶ月前 | ストレスを感じたりパニックになったりする |
1年前 | 心の余裕が生まれ交渉がスムーズに進みやすい |
賃借人と話し合いを設ける以前の話として、退去を言い渡す時期にも配慮することが大切です。
例えば、6ヶ月前と1年前では同じ退去申告でも賃借人に与える印象は大きく異なります。
6ヶ月前に賃借人に退去をいきなり伝えると、年内のスケジュールが狂ってしまうのでパニックを起こしてしまう人もいるようです。一方、1年前に退去を伝えると「まだ1年もある」という安心感から心に余裕が生まれて交渉もうまく進む傾向にあります。
もちろん退去の言い渡しに対して人が感じることはさまざまですが、早い段階で伝えておくことで気持ちに余裕が生まれることは間違いありません。
ここでは6ヶ月前と1年前の例を出しましたが、期間にとらわれずに早い段階で伝えてあげるのが望ましいでしょう。
交渉は早めに進めること
スピードが最も重要だといわれている立ち退きの交渉。特にアパート経営をしている人は、部屋数だけ交渉を進めなければいけないため全借主と話をするまでに多くの時間がかかるのです。ときには、立ち退きに納得しない住人もいるので承認されるまで時間がかかるでしょう。
立ち退きを言い渡す時期も大切ですが、通知した段階で回答期限を設けるのも一つの方法です。
回答期限を設けることで、今の時点でどれだけの人が立ち退きに異論があるのかもわかります。また、あとで異論を唱えてくる賃借人を防止する予防線にもなるはずです。
ただし、この場合は異論がある人から説得を行うのはあまりおすすめしません。
人は多い意見に流されやすい傾向があるため、まずは退去に反対する人の説得から始めましょう。
承認する賃借人が増えれば、退去に反対する人も意見を変える可能性が高くなります。交渉はスピーディ、かつ戦略的に進めましょう。
立ち退きの理由を明確にする
不動産オーナーや大家の立ち退きの理由が正当なものであるのであれば、立ち退きを言い渡せます。
しかし、反対する賃借人に対して強制的に退去させようとすると、反感を買ってトラブルの元になることがあるのです。
例えば、慰謝料の請求や貸主に有利な条件の提示などが考えられるでしょう。また、貸主との間で交渉決裂になった場合は、裁判沙汰になることもあるのです。
裁判という第三者が機関が間に入ってくれることで、話し合いがスムーズに進むことも考えられます。
一方で、訴訟費用は立ち退き料で支払う金額以上の費用が発生するだけでなく時間もかかります。
貸主と交渉を設けるときは無理やり退去させようとするのではなく、立ち退きの理由を明確に伝えて承認させるように誘導するのが望ましいです。
立ち退き料を明確に提示する
賃借人と話し合いを設けるときは、立ち退き料として支払う費用を具体的にを提示しましょう。
貸主は退去を言い渡され、通常であれば不要だった引越しや新居の費用を用意しなければいけなくなります。賃借人にとっていちばんの不安事はお金になるのです。
立ち退きに関する話は、立ち退き料を明確に伝えてあげることで貸主の不安が解消され、退去にも前向きになることができます。ケースによっては立ち退き料の支払いが必要ないときもあるため、状況に合わせてベストな判断をしましょう。
ただ、明確な立ち退き料を伝えても賃借人が交渉を受け入れてくれないこともあります。そんなときはすぐに金額を上げるのは避けたほうがよいでしょう。一人の立ち退き料を上げてしまうと、それが噂となりその他の賃借人も同じ交渉をしてくるかもしれません。
その場では応じず、十分に考慮してから立ち退き料を上げるか決めましょう。
賃借人と交渉した内容は書面で残す
立ち退きを言い渡すにあたり、賃借人と話し合いを設けることになります。もちろん1度で終わることもありますが、交渉が決裂した場合は何度も話し合いを持つことになるはずです。賃借人の話し合いは通常対面で行われますが、話した内容は必ず書面で残すようにしましょう。
なぜなら、「言った」「言ってない」の水掛け論になることがあるからです。また、話し合いが決裂したときは裁判になることもあるかもしれません。
賃借人と交渉したときに話したことをしっかり書面にしておけば裁判の時にも役に立ちます。
お互いの認識にズレが出ないようにする役目もあるので、トラブルを回避するためにも交渉における書面は必ず残すことが望ましいです。書面は以下のことを記載しておくと有効に働くでしょう。
- 賃借人の立ち退きの合意
- 部屋から退去するまでの期日
- 立ち退き料
- 敷金の返還を明らかに示す
- 期日までに退去しなかった場合の賠償金
立ち退きに関することを書面に残しがちですが、賃借人の中には期日が過ぎても住み続ける人もいるかもしれません。退去しなかった場合に備えて賠償金に関する記述も残しましょう。
立ち退き料に関するよくある質問
ここからは、立ち退き料でよくある質問事項をいくつか紹介します。疑問を残したまま賃借人との話し合いを設けると、相手に不信感を与え交渉がうまく行かないこともあります。不安や疑問をしっかり解消して賃借人との交渉を進めましょう。
消費税は別途払う必要はある?
立ち退き料を支払うにあたり気になるのが消費税問題ではないでしょうか。通常、消費税がかかるのは下記に該当する場合のみになります。
- 国内において行うものであること
- 事業者が事業として行うものであること
- 対価を得て行うものであること
- 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること
立ち退き料に消費税がかかるかどうかは、「対価を得て行うものであること」の条件を満たすかどうかになります。賃借人に退去を求める場合、引越し費用や新居にかかる費用を負担する意味で立ち退き料を支払うのが一般的です。
そのため、ここで問われる「対価を得て行うものであること」には該当しないことになるのです。
その結果、不動産オーナーや大家から支払われる立ち退き料は非課税になります
立ち退き料は経費になるの?
立ち退き料は、必要経費に含まれます。
例えば、不動産を売却するために賃借人に退去を言い渡した場合は、物件の権利を譲り渡すことになるので譲渡所得を計上するうえで必要な経費とみなされるのです。
また、物件を売却しない場合でも同じです。
不動産オーナーや大家は、不動産投資を行なって家賃収入を得ているので不動産所得を計算するうえで必要経費に含めることができます。
支払い期限はいつ頃に設定すればいい?
立ち退き料の支払期限は、賃借人が退去する日になります。
ただし、支払日も法律で決められているわけではないため、不動産オーナーや大家と賃借人との話し合いで決めることが可能です。
また、賃借人によっては引越しの費用や新居にかかる費用を前もってほしいと考える人もいるでしょう。そんなときは、賃借人が退去前に立ち退き料の半分を支払い、退去当日に残りの分を渡すのもひとつの方法です。
しかしながら、退去前に立ち退き料の半分を支払うのは、不動産オーナーや大家にとってはリスクになることもあります。話し合いを設けてお互いに納得する形で交渉を進めるのが大切です。
立ち退き料の交渉は弁護士に任せるべき?
1か月の賃貸料 | 20万円未満 | 20万円以上 |
着手金 | 30万円以上〜50万円以下 | 20万円以上 |
報酬 | 40万円以上〜60万円以下 | 50万円以上〜80万円以下 |
立ち退きの話を進めるうえで、弁護士に依頼するか迷う人も少なくありません。
ただし、弁護士に依頼する場合は、立ち退き料のほかに弁護士費用も発生するので不動産オーナーや大家は、さらに費用負担が増えることになります。
一方で、初めて立ち退きを貸主に伝える場合、何から始めればいいか分からない人も多いはずです。立ち退きを言い渡すのは、個人でも行うことができます。ただ、賃借人との交渉が難航するケースも少なくありません。
弁護士に依頼するメリットは、大きく分けて3つのことが考えられます。
まず1つ目は、立ち退きの正当な理由を不動産オーナーや大家に変わって的確に説明できることです。
立ち退きの交渉をスムーズに進めるには、貸主の不安を和らげて立ち退きを納得させることが求められます。
賃借人を納得させるには、正当な理由の説明が必要不可欠なのです。ただ、多くの不動産オーナーや大家は、立ち退きを言い渡すだけで正当な理由を説明するのが苦手な人も少なくありません。その結果、交渉が難航してしまうのです。
弁護士に依頼することで、賃貸オーナーや大家に変わって立ち退きに関する正当な理由を説明してくれるのでスムーズに交渉できます。
労力や時間も最小限に抑えられるため、不動産オーナーや大家の負担も軽減されます。
弁護士に依頼する3つ目のメリットは、正当な料金で交渉できることでしょう。
初めて立ち退きを言い渡す不動産オーナーや大家は、何を基準に立ち退き料を決めればいいか悩む人も少なくありません。そんな不安の心理が働き、交渉の場で貸主の言い値で立ち退き料が決まることもあります。
それでは、相場から大きくかけ離れた高額の立ち退き料を支払うことになるかもしれないのです。弁護士に依頼すれば、状況に合わせて適正な立ち退き料を算出してくれるので不動産オーナーや大家が大きな負担を被ることもありません。
結果的に、納得のいく形で交渉を進められます。
まとめ
不動産オーナーや大家の都合で賃借人に退去を求める場合は、引越しや新居にかかる費用を見越して立ち退き料を支払う必要があります。
しかしながら、立ち退き量は法律で決まっているのではなく話し合いの中で決められます。
そのため、不動産オーナーや大家が適正価格を知っていないと多額の費用を請求されることもあるのです。また、話し合いによっては賃借人の不安を煽って事態が悪化することも。
最終的に裁判にまで発展して時間や費用負担が増えてしまうこともあるのです。
立ち退きを進めるにあたり不安を抱えているなら、弁護士に依頼することを検討しましょう。立ち退きの交渉をスムーズに進められるはずです。
参考になります!