不動産の売出価格は売主が自由に決められます。
しかし不動産売却に慣れていない人が適正な売出価格を決めるのは簡単なことではありません。
もし売却できなければそのときに価格を下げれば良いと考える人もいるかもしれませんが、価格をコロコロ変えるのは望ましくありません。
そのためなるべく最初から適正な売出価格を提示することが大切です。
しかし素人が自分だけで適正な売出価格を決めるのは困難なため、不動産業者や不動産鑑定士に査定してもらう必要があります。
プロに出してもらった査定結果をもとに売却価格を決めれば、購入希望者が想定する価格と大きく乖離することはないでしょう。
ただしプロに任せっきりにするのではなく、自分でも相場価格を調べるのが望ましいです。
そうすれば不動産業者や不動産鑑定士が出した査定額を売出価格に設定して良いか否かの判断ができるからです。
不動産売買では高額なお金が動くため自分でも十分なリサーチを行い、後悔のない取引にしなければなりません。
また売出価格と成約価格の違いや、売出価格を決める際の注意点なども念頭に置いて売出価格を決めることが大切です。
目次
不動産の適正な売出価格を決める方法
売出価格とは不動産を売出すときの価格、つまり販売価格です。
売出価格は売主が自由に決められますが、だからといって好きな価格をつければ良いというものではありません。
あまりにも相場とかけ離れた売出価格をつけてしまうと、不動産を売却するのが難しくなります。
そのため自分が納得できる範囲の価格かつ不動産の購入希望者が興味を持ってくれるような価格をつけることが重要です。
そのためには以下の方法を用いて自分の不動産の価値を知る必要があります。
- インターネットを使って売出価格や成約価格を調べる
- 査定サイトを使って不動産業者に査定してもらう
まずこの章ではインターネットを使って売出価格や成約価格を調べる方法を紹介していきます。
不動産業者や不動産鑑定士などの不動産売買のプロは、以下の5つの価格を参考にして不動産の評価をします。
- 公示価格
- 実勢価格
- 相続税評価額
- 固定資産税評価額
- 鑑定評価額
上記の価格のうち、固定資産税評価額と相続税評価額は税金を算出するための評価額です。
そのため売出価格を決めるにあたってはあまり気にする必要はありません。
公示価格と実勢価格、鑑定評価額を確認して、自分の不動産の価値を把握しましょう。
不動産の評価をする際に用いられる公示価格や実勢価格などは、あまり聞き馴染みのない言葉なので難しく感じますね
公示価格などの5つの評価方法を一物五価と言い、主に土地の価格を決める際に利用されるんですよ。不動産の査定をする際にプロが用いる方法ですが、素人でもインターネットを使って価格を調べることは可能なんです
不動産業者に査定してもらう前に自分の不動産の価値が知れますね
土地の価格を知れる公示価格で適正価格を把握する
公示価格とは国土交通省が発表する土地の価格です。
国土交通省は全国の1m2あたりの土地の価格を毎年3月に発表しています。
土地の価格は売主が自由に決められますが、皆が価格を自由に決めていたのでは価格が安定しません。
そのため国土交通省が選出した土地鑑定委員会や不動産鑑定士が土地の鑑定評価を行い、適正な価格を出しているのです。
不動産鑑定士などによって判定された公示価格は、国土交通省の以下のサイトで確認することが可能です。
自分の土地がある地域を選択して公示価格を確認しましょう。
パソコンとスマートフォンのどちらからでも検索できる他、無料で情報を得られるため便利です。
地価公示法では公示価格をもとに売出価格を決めるという決まりがあるため、国土交通省のサイトで土地の公示価格を把握したらその情報をもとにして売出価格を設定しましょう。
土地総合情報システムで実際の取引価格を知れる実勢価格を確認
実勢価格とは実際に取引された価格のことで、成約価格と同じ意味を持ちます。
ここで先に紹介した売出価格と成約価格の違いを確認しましょう。
- 売出価格…不動産を売出すときの価格
- 成約価格…実際に取引された価格
実際に自分の手元に入るお金は成約価格です。
売出価格と成約価格は乖離することがほとんどなため、売出価格だけでなく成約価格も確認することが重要です。
ただし同じ面積の土地でも成約価格はバラバラです。
土地に面している道路や周辺環境などの様々な要因によって売出価格や成約価格が決まるからです。
そのため自分の不動産の正確な成約価格を把握するのは難しいですが、相場観をつかむことはできます。
売出価格を決める際の参考になるでしょう。
また成約価格のボーダーラインを決めるのにも役立ちます。
実勢価格も国土交通省の以下のサイトで確認できます。
不動産のある地域や取引された時期などを選び、実勢価格を調べましょう。
不動産鑑定士の鑑定評価額から適正価格を決める
鑑定評価額は不動産鑑定士などのプロが行う鑑定評価によって算出される価格です。
鑑定評価には以下の3つの方法があり、不動産の種類や目的などによって評価方法を使い分けます。
- 原価法
- 取引事例比較法
- 収益還元法
上記の方法による鑑定はプロが行いますが、プロに鑑定を依頼すると当然のことながら報酬が発生します。
報酬は不動産鑑定士によって異なりますが、大体20万円から80万円が相場です。
もちろんしっかりとした鑑定結果が必要な収益目的の不動産ならば、不動産鑑定士に鑑定してもらうのが望ましいです。
しかし個人で売出価格を決める際に不動産鑑定士に鑑定を依頼するのは、負担が大きいと感じるでしょう。
それぞれの評価法には鑑定評価額を求める算式があります。
そのため自分でおおよその評価額を出すことも可能です。
中古住宅の価格査定をする場合は原価法を利用しよう
原価法とは中古の戸建て住宅の査定をする際に用いられる方法です。
建物の評価額は以下の計算式で算出できます。
- 建物の評価額=再調達原価×総面積×(経過年数(築年数)/法定耐用年数)
再調達原価とは今の家を1度取り壊し、もう一度同じ家を建てたときに必要になる費用です。
原価は建物の構造によって違います。
建物の構造 | 原価 |
---|---|
木造 | 約15万円 |
軽量鉄骨 | 約15万円 |
鉄骨 | 約17万円 |
鉄筋コンクリート | 約20万円 |
自分の所有する建物の再調達原価を、計算式の再調達原価の部分に当てはめましょう。
次に法定耐用年数について見ていきましょう。
法定耐用年数とは建物の耐用可能な年数のことを言います。
法定耐用年数もまた建物の構造によって異なります。
建物ごとの法定耐用年数を以下にまとめました。
建物の構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
軽量鉄骨(3mmを超え、4mm以下のもの) | 27年 |
鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリート | 47年 |
再調達原価と法定耐用年数について理解したら、先に紹介した計算式に数字を当てはめて建物の評価額を出してみましょう。
マンションの評価額を出すのなら取引事例比較法が便利
取引事例比較法とは過去に取引された価格をもとにして不動産の評価額を決める方法です。
主に土地やマンションの査定額を出す際に利用されます。
取引事例比較法で用いられるのが実勢価格、つまり成約価格です。
例えば条件のよく似たAのマンションの成約価格が2,500万円だったとします。
その場合はAの成約価格と同じ2,500万円くらいの評価額をつけます。
ただしこのような簡易的な査定額を出すのは机上査定のときだけです。
机上査定では基本的な情報をもとにして不動産の評価をするからです。
訪問査定を行う際は次の計算式を利用するなどして、より正確性の高い評価額を出します。
- 査定額=取引事例の価格×事情補正×時点修正×地域要因比較×個別要因比較
ただし自分で上記の内容の全てを確認するのは難しいため、自分で評価額を出す際は条件の似た不動産の成約価格を参考にすると良いでしょう。
事業用不動産の査定額を出すなら収益還元法を利用しよう
収益還元法は貸しビルや賃貸住宅などの事業用不動産の評価額を出す際に用いられる鑑定方法です。
将来の家賃収入に着目して適正な価格を出します。
高い収益性が見込める場合は、建物の価値よりも鑑定額が高くなることもあります。
収益還元法には2つの方法があるため、以下で確認しましょう。
- 直接還元法
- DCF法
1年間で得られると予想される利益から査定額を出すのが直接還元法です。
以下の計算式で査定額を出すことが可能です。
- 査定額=(1年間の利益-経費)÷還元利回り
一方DCF法は長期的な利益や必要な経費、予想される損失などを考えながら査定額を出します。
そのため直接還元法よりも正確性の高い査定額を出せますが、素人がDCF法を利用するのは困難です。
自分で収益還元法を利用する場合は、直接還元法を利用しておおよその査定額を出すと良いでしょう。
不動産一括査定サイトを使って不動産業者に査定をしてもらう
自分で売出相場価格や成約相場価格を調べたら、今度は不動産業者に不動産の査定をしてもらいましょう。
プロの目から見た不動産の現在の価値を知ることができます。
また自分が想定していた売出価格と乖離があるか否かも確認できるでしょう。
不動産の一括査定サイトには以下のように複数の種類があります。
- あらゆる不動産の相場価格を知れる
- マンション専用
- 戸建て住宅に特化している
- 土地に特化している
不動産業者には得意分野があるため、自分が売却しようとしている不動産の売買が得意な不動産業者を見つけることが重要です。
マンション専用などの1つの不動産に特化した査定サイトならば、難しいことを考えなくても自分が売却しようとしている不動産の売買を得意としている不動産業者を見つけられます。
はじめは机上査定をしてもらい、査定結果を見て信頼できそうな不動産業者が見つかったら訪問査定を依頼しましょう。
前の章で自分でも売出価格や成約価格の相場を調べられると教わりました。それでも不動産業者に査定をしてもらったほうが良いのでしょうか?
そうですね。不動産業者では計算式を用いるだけでなく周辺環境やインフラなどの数多くのポイントを確認して査定額を出すため、精度の高い価格を知れるんですよ
それなら適正な売出価格を決めるのに役立ちますね。しかし査定依頼をする場合は費用がかかるのではないかと心配です
通常は何社に査定依頼をしても無料です。ただし念のために無料で査定できるか否かをサイト上で確認してから査定依頼をしたほうが安心ですね
不動産一括査定サイトを使った査定の流れ
一括査定サイトを使って不動産の査定をする際は、以下の3段階に分けて査定をするのが一般的です。
- 簡易査定
- 机上査定
- 訪問査定
簡易査定はパソコンやスマートフォンから簡単に不動産の相場価格を知れる査定方法です。
不動産業者に査定を依頼するのではなく、AIによって導き出された相場価格を閲覧する仕組みになっています。
主にマンションの相場価格を導き出すのを得意としているため、マンションの相場価格を知りたい場合は簡易査定を利用すると良いでしょう。
ただしマンション名だけの情報をもとに導き出す相場価格のため、机上査定や訪問査定の結果と違う結果が出ることもあるということを理解しておく必要があります。
簡易査定で相場観をつかんだら、不動産業者に机上査定をしてもらいましょう。
机上査定では類似物件の売出価格や成約価格、不動産市場の動向などをもとに査定額を出します。
やりとりはメールで行うため気軽に査定依頼ができる他、査定結果が届くのもスピーディーです。
ただし査定依頼をした不動産業者からは後で電話がかかってくることもあります。
そのため手当たり次第に査定依頼をするのではなく、3社ほどの不動産業者に絞って査定依頼をするようにしましょう。
実際に売れる価格を知りたいのなら訪問査定を依頼しよう
机上査定で信頼できそうな不動産業者を見つけた場合は、訪問査定を依頼しましょう。
訪問査定では机上査定をした際の情報に加えて、以下のポイントを確認します。
- 土地の形状
- 敷地に隣接する道路の幅
- 境界線
- 建物の状態
- インフラ
- 周辺環境
- 設備の状態
- リフォームの有無
- 管理状況など
上記のような様々な情報をもとに査定を行うため、精度の高い価格を知れます。
ただしチェックする項目が多いため、査定結果が届くまでには1週間ほどかかるのが一般的です。
査定結果が出たら担当者に査定結果の根拠を聞き、納得できたら媒介契約を検討すると良いでしょう。
媒介契約をした後は担当者と相談しながら最終的な売出価格を決めていきます。
不動産の売出価格と成約価格にはどれくらいの差があるの?
不動産の売出価格と成約価格には差が出るのが一般的です。
以下で首都圏の中古マンションと戸建て住宅の売出価格と成約価格の違いを確認しましょう。
中古マンションの売出価格の相場
- 2015年…2,900万円
- 2016年…3,100万円
- 2017年…3,150万円
- 2018年…3,200万円
- 2019年…3,300万円
中古マンションの成約価格の相場
- 2015年…2,900万円
- 2016年…3,050万円
- 2017年…3,200万円
- 2018年…3,300万円
- 2019年…3,400万円
次に戸建て住宅の売出価格と成約価格を見ていきましょう。
戸建て住宅の売出価格の相場
- 2015年…3,600万円
- 2016年…3,650万円
- 2017年…3,900万円
- 2018年…3,900万円
- 2019年…3,900万円
戸建て住宅の成約価格の相場
- 2015年…3,000万円
- 2016年…3,000万円
- 2017年…3,050万円
- 2018年…3,150万円
- 2019年…3,100万円
中古マンションの場合、売出価格と成約価格の差はほとんどありません。
売出価格と成約価格の差が小さいというのは、マンションの売れ行きが良いということの表れでもあります。
売り物件が少ないため、売出価格でも良いから購入しようと思いやすくなるのです。
一方の戸建て住宅は、売出価格と成約価格の差が大きいことがわかります。
その理由を次の項目で確認しましょう。
戸建て住宅の売出価格と成約価格に差が出る理由
マンションの売出価格と成約価格の差が小さいのには、法定耐用年数も大いに関係しています。
先の章で建物には法定耐用年数があるということを説明しました。
以下で法定耐用年数についておさらいしましょう。
建物の構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
軽量鉄骨 | 27年 |
鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリート | 47年 |
マンションは鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートで作られているのが一般的です。
つまり法定耐用年数は47年ということになります。
そのため価値が下がりにくく、また築20年から30年の物件でも耐用年数が残っていて住宅ローンが組みやすいため人気があるのです。
一方の戸建て住宅は木造で作られていることが多いです。
木造の法定耐用年数は22年です。
そのため価値が下がりやすく、値下げ幅も大きくなるのです。
だからといって築年数が古い戸建て住宅は、極端に安い価格でしか売れないということではありません。
近年は築30年以上の戸建て住宅の人気が高まっているというデータもあります。
そのため売却するための条件や成約価格の相場をしっかり調べて売却を目指しましょう。
売出価格に関しては、成約相場価格の2割ほど高い価格に設定するのが望ましいです。
不動産の適正な売出価格を決めるときの注意点
基本的に売出価格は成約価格と乖離するため、成約価格の相場を見ながら売出価格を決める必要があります。
しかし成約価格を意識するだけでなく、次の点にも注意しながら売出価格を決めることが大切です。
- 住宅ローンの残高を確認する
- 上限値と下限値を決めておく
- 適正価格を目指す
- 売出価格に端数をつける
- 値引きされやすい不動産の特徴を把握する
- 値引きされにくい不動産の特徴を把握する
特に住宅ローンが残っている状態で住宅を売却する人は少なくありません。
だからといって高い価格で販売すると住宅が売れ残ってしまいます。
そのため自分だけで売出価格を決めるのではなく、不動産業者の査定額をベースにして売出価格を決めたり売却方法を考え直したりする必要が出てきます。
そのためまずは住宅ローンがどれくらい残っているのかを確認することが大切です。
売却価格を決めるときは様々な点に注意する必要があるんですね
まず売却価格を決める前に住宅ローンの残高を確認することが重要ですよ
その他にも上限値と下限値を決めたり売出価格に端数をつけたりするとありますが、これらの点に注意すれば販売活動に良い影響が出るのでしょうか?
上記のポイントに注意しながら売出価格を決めることで、早く売却できる可能性が高くなるんですよ
住宅ローンの残高を確認し売出価格を決める
住宅ローンが残っている場合は、住宅を売却したお金で住宅ローンを完済するのが基本です。
そのため住宅ローンの残高を確認してから売出価格を決める必要があります。
まだ多くの住宅ローンが残っている場合は、住宅ローンの残高と同じくらいの価格で住宅を販売すれば良いと考えるかもしれません。
しかし相場とあまりにもかけ離れた売出価格をつけると、自分の住宅に興味を持ってくれる人が現れなくなってしまいます。
そのため高額な住宅ローンが残っている場合は、不動産業者に相談してから売却方法や売出価格を決める必要があります。
まず査定サイトを利用して無料査定をしてもらいましょう。
その結果住宅を売却したお金で住宅ローンを一括返済できるようであれば何の問題もありません。
不動産業者と相談しながら売主が売出価格を決めましょう。
しかしオーバーローン、つまり住宅の売却予想価格よりも住宅ローンのほうが上回っている場合は、売却時期や売却方法を考え直さなければなりません。
オーバーローンの場合の売却時期と売却方法
住宅ローンを元金均等返済にしている場合は、月日が経つほど返済額が減ります。
そのため売却するのをもう少し待って、アンダーローンになった頃に売却を考えるのも1つの方法です。
ただしアンダーローンになるまで待てない場合や数千万円の高額な住宅ローンが残っている場合は、一般売却ではなく任意売却を検討すると良いでしょう。
任意売却には次のような特徴があります。
- 金融機関の合意を得た上で一般売却と同じように販売活動ができる
- 一般売却と同じくらいの価格で売却できる可能性が高い
- 住宅ローンの残高は分割払いが可能
- 周囲の人に金銭苦であることを知られる可能性が低い
- 連帯保証人に同意を得る必要がある
仮にオーバーローンでも一般売却を選んだ場合は、他の金融機関からお金を借りるなどして一括返済しなければなりません。
新しい住居とローンを支払わなければならないため、返済が苦しくなることが予想されます。
もし返済ができなくなった場合は弁護士に相談するなどの一歩踏み込んだ対応が必要になってきます。
任意売却の場合は金融機関に相談をすれば、毎月の返済額を無理のない金額に設定してもらうことが可能です。
連帯保証人には任意売却のことを知られてしまいますがその他の人に知られるリスクは低いため、不動産業者に任意売却についての相談をしてみましょう。
売出価格を決める際は上限値と下限値を決めておく
売出価格を決める際は上限値と下限値を決めておくことが大切です。
上限値と下限値については以下の通りです。
- 上限値…希望の売出価格
- 下限値…これ以上は譲れないボーダーライン
まずは大雑把に上限値を決めましょう。
これくらいの価格ならば満足できるという価格を上限値に設定します。
次に下限値を決めましょう。
下限値を決めないと値引き交渉をされた際、購入希望者に押されて大きく値引きをしてしまう可能性があります。
特に戸建て住宅の場合は大きく値引きをされることが多いです。
そのため必ず下限値を決めておくことが大切です。
上限値と下限値を決めたら不動産業者に査定依頼をして、査定結果をもとに上限値の調整をしましょう。
無料査定を経て担当者に相談する際は、自分が設定した上限地を伝えれば過去のデータなどをもとにした説得力のある価格についてのアドバイスをもらえます。
また下限値についてもあらかじめ担当者に伝えておけば販売活動がスムーズに進みます。
不動産売却を早くするには適正価格をつける
売出価格を決める際は何度も言うように適正価格をつけることが重要です。
売出価格が安過ぎるとその価格から値引き交渉がはじまるため、売主側は後悔することになるでしょう。
逆に高過ぎると見向きもされません。
その結果売却期間が長引くことになります。
売却期間が長引くと売出価格と成約価格の乖離が大きくなる傾向にあります。
以下で価格の乖離率を確認しましょう。
売却期間 | 乖離率 |
---|---|
1カ月 | マイナス3.8% |
2カ月 | マイナス6.7% |
12カ月 | マイナス19.5% |
そのため希望に近い価格で売却するためには早く売却することが重要なのです。
なるべく3カ月以内に売却するのが理想的です。
そのためにまずは適正な売出価格をつける必要があります。
不動産の売出価格に端数をつける
売出価格をキリのいい価格にしたいと考える人も少なくありません。
しかしキリのいい売出価格にすると、自分の不動産を閲覧してくれる人が減る可能性があります。
不動産の情報を得る際、まずはインターネットを使う人が多いからです。
インターネット上の情報サイトで不動産情報を検索する際は、条件の絞り込みをすることがほとんどです。
その中には価格も含まれます。
例えば売出価格を2,000万円に設定したとします。
サイトの閲覧者が価格の条件を2,000万円未満に絞り込んで検索した場合、自分の不動産情報は出てきません。
そのため端数をつけることが重要なのです。
仮に売出価格を2,000万円くらいにしたい場合は、1,980万円や2,098万円などのキリの悪い価格にするようにしましょう。
値引きされやすい不動産の特徴を把握する
自分の不動産と似ている条件の不動産の売出価格や成約価格を参考にして売出価格をつけても、実際は大きく値を下げることもあります。
以下のような条件に当てはまる場合は評価額が下がる可能性があるため覚悟をしておく必要があります。
- 土地の形状が悪い
- 道路に面していない・土地に面している道路の幅が狭い
- 周辺の環境が悪い
- 土壌汚染がある
- 施設や共用部分のメンテナンスが十分でない
- 日当たりが悪い
建物の内部についてはリフォームをするなどして改善することが可能です。
しかし土地の形状や周辺環境などの、自分ではどうにもできないこともあります。
その場合は売出価格を下げなければならない可能性が高いということを理解しておく必要があります。
上記のような条件に当てはまる場合は、市場価格よりも2割から3割ほど値下げした価格で売却するのが一般的です。
値引きされにくい不動産の特徴を把握しておく
一方値引きされにくい不動産もあります。
一般的に以下のような条件に当てはまる不動産は人気があるため、値引きされにくいです。
- マンション…駅から徒歩5分以内、複数の路線が使える、角部屋、高層階、方位が良い
- 戸建て住宅…駅から徒歩5分以内、複数の路線が使える、スーパーや商店街などがある
マンションの場合も戸建て住宅の場合も共通しているのは立地の良さです。
特に首都圏の場合は電車で移動することが多いため、駅までの距離と利用できる路線数が重要になります。
マンションは階数や方位も重要です。
低層階よりも高層階の人気が高いため、売却予定の住宅が高層階の角部屋にある場合は希望額で売却できる可能性があります。
方位は南向きが人気です。
つまり日当たりの良い家は値引きされにくいということになります。
ただし複数の条件が合わさって適正な価格が決まるということを理解しておく必要があります。
また地域によっては好まれる条件が変わることもあるため、不動産がある地域の条件を確認することが大切です。
売出価格をつける前に値引きされやすい条件と値引きされにくい条件を確認すれば、自分の不動産のおおよその価値がわかりますね
売却予定の不動産がある地域にはどのような人が多く住んでいるのかということを考えれば、人気の条件が見えてきますよ
値引きされやすい条件には土壌汚染の有無などの、自分では調査をするのが難しい項目もありますね
不動産を売買する前に土地の調査を行う不動産業者もあります。戸建て住宅や土地を売却する場合はそのような不動産業者に相談するのも1つの方法ですよ
まとめ
適正な売出価格を決めるためには売出価格と成約価格の相場を調べたり、不動産業者に査定をしてもらったりして相場観をつかむ必要があります。
3カ月ほどで売却できる価格を適正価格と考えておくと良いでしょう。
売却時期が長くなれば長くなるほど値下げ幅が大きくなる傾向にあるため、売れやすくなるための条件や価値が下がる条件などを確認した上で適正な価格をつけて、なるべく早期の売却を目指すことが重要です。
ただし売出価格を決める前に確認しなければならないことがあります。
住宅ローンの残高です。
もしオーバーローンになる場合、自分で売出価格を決めるのは困難です。
売却時期や売却方法を見直したり不動産業者に売出価格を相談したりしながら、今後の行動を考えなければなりません。
また売出価格の上限値や下限値を決めたり、不動産情報を閲覧されやすくするための価格をつけたりすることも大切です。
ただし苦労して適正な売出価格を決めてもその価格で売れるとは限りません。
売出価格と成約価格は乖離するのが一般的です。
例えばマンションの場合は50万円から100万円ほどの差があります。
戸建て住宅の場合は2割から3割ほど違います。
そのため自分だけで適正な売出価格を決めるのは困難です。
不動産業者の査定を参考にしたり担当者に相談したりして売出価格を決めれば、適正な売出価格を設定できるでしょう。