容積率はどんな建築物を建てることができるのかを左右する要素です。
広さのある土地でも、容積率の縛りによって小さな建物しか作れないこともあります。
また容積率は建物の高さにも影響を与えます。
容積率次第で建築できる階数も変わってくるため、決して無視できない指標の一つです。
このように容積率の規制は建築における自由度に直結するポイントですから、土地の価値にも影響します。
容積率を正しく理解することは、土地選びや物件購入を成功させることにも繋がるでしょう。
今回は容積率に関する基本から応用まで、しっかりと解説します。
目次
容積率の基本の考え方を丸ごと解説!
容積率を求めるためには、まずは容積率とは一体何なのかという概念をしっかりと理解しておく必要があります。
また容積率にはさまざまな制限や緩和があることから、そちらを知らないと正しい容積率を求めることができません。
まずは容積率における基本を学びましょう。
延べ床面積を理解しよう
容積率を考えるうえで、延べ床面積を押さえなければいけません。
延べ床面積は建物の各階の面積の合計を指します。
例えば一階の延べ床面積が50m2、2階の延べ床面積が40m2の物件があったとしましょう。
この場合の延べ床面積は両方を合計して、90m2となります。
ちなみに不動産売買において、不動産会社が打ち出す広告などには坪単価の記載があります。
一坪はおおよそ3.3m2のため、坪数と掛け合わせることで延べ床面積を求めたり、1m2当たりの価格を考えることができます。
延べ床面積に含まれない箇所とは?
各階の床面積合計を示す延べ床面積ですが、その名の通り床がある部分の面積が前提となります。
よって床が生じていない部分は、計算に含まれません。
例えば代表的なものとして、吹き抜けがあげられます。
後ほど詳しくご紹介しますが、吹き抜けは容積率の緩和を受けられるため、吹き抜けを設ければその分広々とした家づくりが可能です。
延べ床面積に含まれないものは、他に何がありますか?
例えばバルコニーや駐車場などです
バルコニーや駐車場であれば、どんなものを作っても問題ありませんか?
いずれも基準が設けられています。基準を満たさない場合には延べ床面積としてカウントされてしまいます
容積率の定義とは?考え方を押さえよう
延べ床面積が理解できれば、容積率を考えるのはそれほど難しくありません。
容積率は、敷地面積に対しての延べ床面積の割合をパーセンテージで表したものです。
例えば敷地面積が50m2で、延べ床面積が150m2であれば、容積率は300%となります。
土地には容積率の指定があります。
よって仮に容積率が100%の土地と400%の土地では、建築できる延べ床面積が変わってきます。
容積率が大きくなればなるほど、延べ床面積もたっぷりと取れることになるでしょう。
とはいえ元々の敷地の広さは変えられません。
となりますと、広い延べ床面積の家を建築するためには、階数を増やしていくことになります。
つまり、容積率は物件における高さを決める要因の一つなのです。
容積率が定められているのは人口制限のため
土地には容積率が定められており、容積率を超えない延べ床面積の建物しか建築できません。
よって容積率次第で、物件の階数が変わってきます。
ここで気になるのが、そもそもなぜ容積率を定める必要性があるのかでしょう。
容積率を定めないと、自由に延べ床面積を広げられるため、沢山の住人を居住させやすくなります。
要はマンションやアパートなどの乱立に繋がります。
つまり地域における人口が増える要因になるわけです。
人口が過度に増えてしまうと、インフラ整備が追い付かなくなります。
水道やガスなどの供給がきちんとおこなわれなくなる原因に直結するため、ある程度人口をコントロールする必要があります。
また急激に人口が増えると、例えば学区内に通学する子供の人数が増え、教室数などが足りないという問題なども生じてくるでしょう。
このように無秩序な人口増加は生活の質を落としてしまうため、容積率を定めて建築できる階数を制限しなければならないのです。
容積率の計算方法
容積率を求めるための計算式は、延べ床面積÷敷地面積で表されます。
例えば延べ床面積が200m2で敷地面積が50m2の場合の容積率は、400%です。
容積率が大きい時ほど高い建物の建築ができるため、住宅地などにおける容積率は低くなります。
一方で商業施設や高層ビルの建築が可能なエリアですと、指定されている容積率も大きいです。
この計算を応用すると、敷地面積×容積率で延べ床面積の計算が可能です。
指定されている容積率では、どのくらいの高さの物件を建築できるか目安を求めたい時に活用できます。
例えば敷地面積が100m2で容積率が200%の土地の場合ですと、延べ床面積は200m2まで取れます。
敷地面積ギリギリで物件を建てようとすると、よほど変形させた建物でない限り2階建てまでしか作れません。
また容積率は必ずしもフルに使って物件を建築する必要はありません。
容積率以下であれば、延べ床面積は基本的に自由に設定することができます。
よって敷地面積に対してコンパクトな物件を建てる場合には、あまり影響がないとも言えます。
建ぺい率とは違いは?
容積率は、その土地にどのような建物を建築できるか制限する要素の一つです。
他にもさまざまな制限があるのですが、その中でも容積率と関係の深いものとして建ぺい率があげられます。
建ぺい率は土地に対して、どの程度の建築面積を取れるかをパーセンテージで表したものです。
要は物件を真上から見下ろした際に、どのくらいの広さまで可能かという制限になります。
例えば建ぺい率が50%の場合、100m2の敷地を所有していても50m2の広さの物件しか作れません。
建ぺい率が高くなればなるほど、敷地に対してギリギリの広さの物件を建てられるということになります。
つまり、容積率は建物を建てる際の3次元における制限であるのに対し、建ぺい率は2次元における制限と考えると分かりやすいです。
物件を建てる際には、容積率と建ぺい率のどちらも守る必要があります。
よって土地に対して好き勝手に建物を作れるわけではなく、法律によって建物の広さや高さは制限を受けるのです。
容積率が大きいほど土地の価値が高い
容積率が大きければ、その分高い建物を建築できます。
建物の高さ制限は、土地の利用価値を考えるうえで重要です。
高さ制限が厳しければ、低層住宅や小規模な店舗しか作ることができません。
一方で高さ制限の許容範囲が大きければ、高層ビルやマンション、大型の商業施設などを建築することも可能になります。
よって容積率が大きいほど、建築できる建物の幅が広がるわけです。
一般的に土地は、利用用途が多いほど価値が高くなります。
つまり容積率も土地の価値を決める要因の一つと言えるでしょう。
容積率が小さければ価値は低くなり、容積率が大きいほど土地の価値もそれに応じて高くなります。
土地の価値は需要のある人気エリアだから高いなど、単純な指標だけでは測れません。
このように容積率などの問題も絡んできますし、さまざまな観点から土地の価値は決まります。
容積率は道路幅員によって制限される
容積率は都市計画により指定されますが、前面道路の幅によってはイレギュラーが発生します。
前面道路とは敷地に2メートル以上接している道路です。
この前面道路の幅が12メートル未満の場合は、本来指定されている容積率ではなく別途用意された以下の式で数値を求める必要があります。
- 容積率=前面道路の幅員×法定乗数
法定乗数は用途地域が住居かそれ以外かによって変わります。
以下の一覧表を参考にして下さい。
用途地域 | 住居系 | 住居系以外 |
---|---|---|
法定乗数 | 0.4 | 0.6 |
こちらで求めた容積率の数値と、本来の容積率を比べて、より厳しい方の数値が適用されます。
12メートル未満の時の計算をシミュレーション
実際に前面道路の幅員が12メートル未満の際に、容積率がどうなるのかここでシミュレーションしてみます。
指定容積率が500%の商業地域で、前面道路の幅員が8メートルだったとします。
この場合は前面道路が12メートル未満に該当するため、指定容積率を採用できるか確かめなければなりません。
用途地域は商業地域ですから、法定乗数は0.6の方を用います。
8メートル×0.6で計算すると、容積率は480%です。
元の指定容積率は500%まで可ですが、全面道路の幅員を考慮した容積率は480%になります。
実際に採用するのは条件が厳しい方になるため、このケースでは建てられる容積率は480%に決定します。
もう一つ別バージョンでシミュレーションしましょう。
今度は指定容積率150%の住居系地域で、前面道路幅員が6メートルの場合を考えます。
今回用いる法定乗数は、住居系ですから0.4です。
幅員を考慮した容積率を計算すると、6メートル×0.4のため、容積率は240%と求められます。
このケースでは元の容積率の基準の方が厳しいため、用途地域で指定されている容積率150%までの方を採用しなければなりません。
なぜ前面道路の幅によって左右されるのか?
前面道路の幅員が、容積率に大きな影響をもたらすのにはきちんと理由があります。
道幅が狭い際には、建物や外構などの空間をより広く設けなければなりません。
つまり空間を確保するために、前面道路との関係性を考慮しているわけです。
ではなぜある程度の空間を作る必要があるのかと言いますと、その理由の一つとして災害時の想定があげられます。
前面道路が狭い場合、災害が起きた際に建物から避難してきた人々が、道路前に溢れかえります。
災害現場付近で人が密集してしまうのは、いちじるしく避難を遅らせてしまう要因に繋がるでしょう。
このような危険をもたらさないために、前面道路の幅員を踏まえたうえで容積率を決定する必要があるのです。
幅員4メートル未満はセットバックが必要
前面道路の幅員が12メートル未満の時は制限が設けられていますが、4メートル未満になるとさらに条件が厳しくなります。
幅員4メートル未満の際には、セットバックをおこなう必要があるのです。
ここで言うセットバックとは敷地の境界を後退させて、道路の幅を確保することです。
例えば前面道路の幅員が3メートルの場合には、1メートルセットバックをおこなわなければなりません。
そうなると、セットバックした分だけ敷地面積が少なくなります。
当然容積率にも影響が出てくるため、建築できる建物の規制が厳しくなるわけです。
よって土地購入する際などは、単に土地の広さだけを見るのではなく前面道路の幅に気を付ける必要があります。
十分に前面道路の幅員を確保できていないと、思いのほか小さい物件しか建てられないといった問題が出てくるかもしれません。
特定道路に接する時は緩和あり
もし前面道路の幅員が狭くても、特定道路に通じている時は緩和措置を受けることができます。
具体的な条件としては以下のようになります。
- 前面道路の幅員が6メートル以上12メートル未満
- 敷地から70メートル以内で特定道路に接続できる場合
要はすぐに大通りに出られる敷地なら、容積率を小さくする必要はありません。
この緩和措置は昭和62年より適用されることになったため、以前の古い建物には条件を満たしていても容積率が小さいままの建物が多く残されています。
容積率は用途地域で指定される
用途地域は、土地の使い方を指定したものです。
容積率の上限は、この用途地域によって定められるため、用途地域と深い関係にあります。
例えば住宅系の用途地域の場合には、閑静な住宅街を形成するために容積率は低く設定されています。
逆に商業系の用途地域は、ビルや大型店舗を作れるように容積率は大きいです。
容積率を理解するうえでは、用途地域について知っておく必要があります。
掘り下げて見ていきましょう。
そもそも用途地域とは?
用途地域は都市計画法に基づいて、土地の用途を決めるものです。
建てられる建物のジャンルを指定したり、建ぺい率や容積率なども用途地域で決められます。
市街化区域は用途地域が必ず設定されますが、市街化調整区域はその限りではなく原則用途地域の指定はありません。
用途地域を決めるのは、国ではなく地域の具体的な実情を把握している自治体になります。
土地の利用用途の大枠を定めることで、さまざまな建築物が乱立するのを防ぐことを目的としています。
例えば閑静な住宅街の隣に工場や大型店舗が建築されると、騒音問題などが生じるでしょう。
このように異なるジャンルの建物が乱立することは、生活の混乱を招く直接的な原因となります。
そのミスマッチを防ぐために用途地域は指定されており、良好な暮らしを保護しています。
用途地域は全部で何種類あるのですか?
2018年に新たに追加された田園住居地域を含め、現在では13種類あります
どのような用途地域があるのですか?
大きくジャンル分けすると、住居系・工場系・商業系という3種類になっています
用途地域と容積率の対応表
容積率は用途地域ごとに、上限何%まで可能か決められています。
そのため逆に言うと、どの用途地域なのか知ることで容積率の上限も自ずと分かります。
13種類の用途地域における容積率の対応表を下記に記載しますので、参考にしてみて下さい。
用途地域 | 指定容積率 |
---|---|
第一種低層住居専用地域 | 50・60・80・100・150・200 |
第二種低層住居専用地域 | 50・60・80・100・150・200 |
第一種中高層住居専用地域 | 100・150・200・300 |
第二種中高王住居専用地域 | 100・150・200・300 |
第一種住居地域 | 200・300・400 |
第二種住居地域 | 200・300・400 |
準住居地域 | 200・300・400 |
田園住居地域 | 50・60・80・100・150・200 |
近隣商業地域 | 200・300・400 |
商業地域 | 200・300・400・500・600・700・800・900・1000 |
準工業地域 | 200・300・400 |
工業地域 | 200・300・400 |
工業専用地域 | 200・300・400 |
表を見て分かるとおり、同じ用途地域でも複数の容積率が記載されています。
例えば同じ第一種低層住居専用地域であっても、容積率50もあれば200もあります。
実際には、この中から都市計画でそれぞれの土地に合わせて容積率が指定されます。
2つの用途地域にまたがる時は?
容積率と用途地域の関係性が分かったうえで疑問に思うのが、2つの用途地域にまたがる土地はどうなるのかです。
用途地域が複数にまたがっている時、土地の利用方法については過半主義が採用されます。
例えば土地の60%が商業地域で、残りの40%が準住居地域だったとしましょう。
この場合は、土地の半分以上が商業地域に該当するため、敷地の用途に関しては商業地域の扱いになります。
よって準住居地域には建てられない建築物であっても、建てることが可能です。
用途地域における採光制限や最低敷地面積なども過半主義が採用されるため、このケースでは商業地域のルールが適用となります。
一方で容積率も商業地域の基準が該当するのかと言いますと、そうではありません。
容積率や建ぺい率は例外となり、加重平均によって求めた数値が採用されます。
また高さ制限に関しても、過半主義の適用にはなりません。
複数の用途地域にまたがる時は、該当する用途地域の部分の制限をそのまま採用することになります。
よって商業地域に属している部分は商業地域の高さ制限が適用となり、準住居地域の部分は準住居地域の高さ制限の数値が用いられます。
容積率を調べる方法をご紹介
容積率の概念が分かったところで、容積率の調べ方についてご紹介します。
調べ方としては簡単で、市役所の都市計画課で尋ねれば教えてくれます。
とはいえ頻繁にいろんな土地を聞くのは少々気が引けるかもしれません。
その場合には自分で調べることも可能です。
インターネットを用いて、自治体のホームページを開きましょう。
都市計画図が用意されていれば、そちらの地図を見ることで容積率が分かります。
しかしこのようなネット版の都市計画図が準備されているかどうかは、自治体次第です。
もう一つ、これから土地や建物の購入を検討しているのであれば、お世話になっている不動産会社に聞くという方法もあります。
不動産会社が調べて教えてくれるため、便利です。
容積率オーバーの場合はどうなるの?
もし容積率をオーバーしてしまったらどうなるのかというのも、気になる問題の一つではないでしょうか?
容積率オーバーにも、2つのパターンがあります。
一つは建築した当時は基準を満たしていたものの、後の法改正によって基準に合わなくなってしまった場合です。
このような建築物は既存不適合物件と呼ばれます。
既存不適合物件の場合には、そのまま暮らす分には問題ありません。
現在の基準を満たすようにあえて改修する必要はないですが、リフォームなどをする際には要注意です。
新たにリフォームする時は、当然ですが現在の基準に合わせる必要があります。
さまざまな制限が出てくるため、希望通りのリフォームができない可能性もあるでしょう。
もう一つ容積率オーバーの建物として、そもそも最初の建築段階から基準を満たしていない建物も存在します。
この場合は違反建築物に該当してしまいます。
既存不適合物件とは異なり、行政の指導があれば必要な措置を取らなければなりません。
違反建築物は、不動産の価値を著しく下げてしまいます
そうなると、どんな問題があるのですか?
売りに出したい時に、買主探し探しが難航する可能性が高いです。特に違反建築物は住宅ローンの審査が通らないため、個人への売却はほぼ無理でしょう
わざわざ違反している物件を買うのは非常にリスキーです。
行政の指導がおこなわれている最中に違反建築物を購入した場合、責任は新しい所有者に追求されることになります。
わざわざリスクを背負ってまで違反建築物を購入したい人はいないため、必然的に仲介での売却の道は閉ざされてしまいます。
不動産会社による買取であれば、土地の価値が見込める場合には可能性はあります。
ただしいずれにしろ違反建築物の売却は困難を極めるため、最初の建築段階から違反しないように気を付けることが大事です。
容積率と建ぺい率以外にも気を付ける規制あり
建物を建てる際には容積率と建ぺい率に気を付けなければいけません。
また、容積率と建ぺい率以外にも、守るべき規制は沢山あります。
代表的なのが北側斜線制限や日陰制限です。
どちらも建物の高さに関する規制になり、採光と通風確保を目的としたものです。
このように建物を建築する際には、いろんな規制に注意を払わなければなりません。
規制が多いと、十分な広さの土地があっても理想的な家を建てることが難しくなってきます。
そうならないためにも、土地の大きさを見るだけではなく土地の性質を理解することが大事です。
容積率の応用編!代表的な容積緩和措置をご紹介!
建物の建築において大きな縛りとなる容積率ですが、一定の条件を満たした場合緩和措置を受けられます。
容積率の緩和措置を上手に活用すれば、本来の容積率よりも広い建物を作ることが可能です。
緩和措置にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
駐車場の緩和
容積率の緩和の一つとして駐車場があげられます。
駐車場は延べ床面積の5分の1を限度として、延べ床面積から除外することが可能です。
例えば、容積率が100%で100m2の土地がある場合、通常なら建築できる延べ床面積は100m2となります。
しかし20m2の駐車場を作りたい場合、延べ床面積は120m2です。
この5分の1を不算入できるため、120×5分の1で計算した場合、24m2となります。
つまりこのケースですと24m2を限度として、駐車場の建築が可能です。
ちなみに5分の1を超える駐車場を設ける場合には、5分の1を超えた分は延べ床面積に含まれます。
敷地面積の小さい建物の場合には、この緩和措置を活用してビルトインガレージを作る方法もあります。
ビルトインガレージの分の床面積は5分の1まで不算入ですから、その分だけ高さのある建物を建てられることになるでしょう。
カーポートや駐輪場はどうなるの?
駐車場の緩和で気になるのが、カーポートや駐輪場の扱いです。
これは駐車場の構造は関係なく、使用用途次第です。
使用用途が車庫であれば、カーポートでもビルトインガレージでも緩和措置を受けることができます。
他にも別に建築した単独の車庫なども可能です。
また駐輪場に関しても同様です。
自転車置き場として使用するのであれば、延べ床面積の5分の1までは緩和措置の適用になります。
自動二輪車も緩和措置の対象となるため、バイク置き場として活用する方法もあります。
地下室の緩和
地下室も以下の条件を満たせば、緩和措置が適用されます。
- 住宅用として使用
- 地階に該当すること
- 地盤から地階の天井が1メートル以下
条件に地階に該当とありますが、おおよその目安として3分の1以上地下に埋まっている空間が確保できれば、地階となります。
例えば天井高さ1.8メートルの地下室ですと、0.6メートルほど埋まっていれば地階に該当します。
ただしもう一つの条件として、地盤から地階の天井までを1メートル以内に収める必要があります。
よって天井高さ1.8メートルの地下室なら0.8メートル分は地下に埋めなくてはなりません。
つまり地下に0.8メートル分、地上に1メートル分の空間の地下室なら、緩和措置が適用されます。
容積率に不算入できる部分としては、住宅の延べ床面積における3分の1が限度となります。
よって例えば100m2の土地で容積率60%であれば、通常は延べ床面積60m2しか確保できません。
一方で地下室の緩和措置を用いれば、30m2の地下室をつくることができます。
地下室の不算入分を含めた90m2を、延べ床面積として確保できるのです。
地下室をつくるメリット・デメリット
地下室をつくることで容積率緩和ができるため、本来よりも居住空間を広く取れるといったメリットがあります。
また、地下室はさまざまな利用目的に使いやすい空間です。
オーディオルームなど趣味のための部屋にすることもできますし、暗さを利用してワインセラーなどに用いるのも向いています。
日当たりを気にしなければ浴室など水回りを持ってくることもできるでしょう。
地上に十分なスペースを確保できない場合でも、地下室を設けることで空間の有効活用が可能になります。
一方で地下室をつくるデメリットもあります。
大きなデメリットとしては建築費用の高さです。
通常の建築をおこなうよりも建築費用は大幅に変わってきてしまうため、金銭的な負担が生じます。
また浸水による災害リスクも考慮しないといけません。
容積率不算入だからといって安易に建築するのではなく、よく考える必要があります。
小屋根裏収納の緩和
地下室と同様に、小屋根裏収納も容積率の不算入が可能です。
また小屋根裏に限らず、例えば以下の部分に設ける収納にも適用されます。
- 1階の床下
- 1階と2階の間のスペース
他にもロフトやグルニエとして活用することもできます。
前提条件として、あくまでも収納用として使う必要があります。
そのため天井高は1.4mまでに納めなければいけません。
また容積緩和が適用される面積は、小屋根裏収納が接する階の面積の2分の1までです。
一つ気を付けておきたいのが、容積率のオーバーに関してです。
駐車場や地下室は容積率がオーバーした場合、そのオーバーした部分のみ延べ床面積に加える必要がありました。
一方で小屋根裏収納はオーバーしてしまうと、はみ出た部分の面積のみならず全ての面積を延べ床面積として扱わなければなりません。
既に容積率や建ぺい率がギリギリの建物の建築を考えている場合、小屋根裏収納を設けるのが難しいかもしれません。
固定階段をつくることは可能?
小屋根裏収納を作る際に気になるのが、固定階段設置の可否です。
これに関しては、地域により見解が分かれます。
自治体によっては可としているところもありますし、可動式階段のみとしているところもあります。
よって実際に小屋根裏収納を作る前に、自治体に問い合わせる必要があるでしょう。
また固定階段にする際には、階段部分も容積率に含まれるなどの問題も出てきます。
そのため設計の段階から慎重に話を進めていくことが大事です。
ベランダ・バルコニーの緩和
ベランダやバルコニーに関しても、容積率の緩和が適用できます。
ただし外壁から突き出ている部分から2メートル以内です。
2mを超えてしまいますと、はみ出した面積に関しては容積率の計算に加えなければいけません。
注意点として、ひさしが1メートル以上突き出ていますと、その部分は建築面積として見なされます。
また手すりの高さなどにも規定が設けられており、ベランダやバルコニーを壁などで覆ってしまうと室内という扱いになるケースもあります。
ひさしのないウッドデッキに関しては、延床面積に含まれません。
吹き抜けの緩和
1階と2階の吹き抜け部分も、床がある訳ではないため容積率の計算に加えなくて大丈夫です。
吹き抜けを設けることで、狭い住宅であっても解放感を与えることができます。
採光も取り込めるため、明るさを確保したい時にも有効です。
吹き抜けであればどんな構造でも可能ですか?
基本的には可能です。ただし渡り廊下が付いている場合など特殊なものに関しては、廊下の部分は建築面積に見なされることがあります。
まとめ
容積率は敷地面積に対する延べ床面積の割合です。
指定されている容積率が大きいほど、他の規制との兼ね合いにもなりますが、一般的には広い物件や高さのある物件を建築することができます。
ただし用途地域で指定された容積率をそのまま適用できるとは限りません。
前面道路の幅員によっては、本来の容積率よりも取れる数値が少なくなってしまいます。
そのため土地選びをする際には、前面道路をよく確認しておく必要があるでしょう。
容積率が小さい場合には、緩和措置を上手く活用して建築するのが望ましいです。
例えば地下室や駐車場などは、条件を満たせば容積率の計算に加えずに済みます。
容積率によってどのような制限を受けるのか、そして緩和措置の内容を理解しておくことは、理想とする建物を建築できるかどうかを知る第一歩です。
土地の特性を理解するためには、容積率の数値に着目してみましょう。