毎年2月から3月は確定申告の時期になります。
給与所得であれば会社が確定申告を代理で行ってくれますが、不動産売却後の確定申告については自分で行なう必要があります。
多くの方は不動産売却後の確定申告を行った経験がないため、どのように行えば良いのか不安を感じるかもしれません。
しかし不動産を売却した場合、確定申告を必ず行わなければならないかというと、決してそうではありません。
ここでは不動産売却後に確定申告が必要になる状況と申告の手続方法や必要書類について詳しく紹介していきます。
目次
不動産売却後に確定申告が必要なの
不動産の売却時には大きな金額が収入として手元に入ってくるため、確定申告をしなければいけないと心配になる方も少なくありません。
不動産売却に伴う確定申告が必要な場合と必要ではない場合について見ていきましょう。
土地や戸建やマンションなどの不動産を売却する際に、確定申告をする必要があるのは、以下のような状況です。
- 不動産売却によって利益が出た場合
- 税金対策として特例を利用する場合
上記の2つの状況を紹介していきます
確定申告が必要な場合-譲渡所得がプラス(利益あり)
不動産売却によって利益が出た場合は、所得としてカウントされるため、確定申告によって税金を申告しなければなりません。
ここでポイントになるのは、不動産売却によって利益が出た場合という部分です。
多くの方が誤解しているのは、不動産売却によって得た金額、つまり売却金額に対して課税されるという見方です。
しかし不動産売却の際に課税対象になるのは、譲渡所得であり、不動産の売却金額(価額)ではありません。
つまり仮に3,000万円で不動産を売却したとしても、売却金額である3,000万円が課税対象になるわけではないという事です。
確定申告を行う必要があるかを判断するためには、不動産売却による譲渡所得があるかを正確に計算する事が重要です。
不動産を売却した金額に課税されると思っていました
勘違いしている方も多いようですが、実は譲渡所得に対して課税されるんですね。まずは不動産売却金額と譲渡所得の関係を正しく理解することが大切です
譲渡所得の詳細や計算方法については後述します。
まずは確定申告が必要となる2つ目の理由を確認しておきましょう。
確定申告が必要なケース-特例を利用するなら確定申告が必要
不動産売却によって利益が発生した場合には、確定申告が必要であるという事はすぐに理解できるかもしれません。
しかし仮に不動産売却による利益が出ていない場合でも、節税のために確定申告を行う方が良いケースもあります。
節税のために確定申告すべき3つのケースを確認しておきましょう。
- 3,000万円特別控除を受ける
- 居住用財産の買換え特例を受ける
- 所有期間10年超の居住用財産譲渡による低減税率の特例を受ける
上記の節税対策を受けるためには、確定申告を行わなければなりません。
あくまで特例であるため、確定申告によって自己申告をしなければ適用されることがないので注意しましょう。
ここまでで不動産売却時に確定申告が必要になる2つのケースをおおまかにご紹介してきました。
- 譲渡所得がある場合(不動産売却で利益が発生)
- 不動産売却後に特例を受けて節税対策をする場合
これから譲渡所得税と節税のために行う確定申告について詳しく紹介していきます。
譲渡所得税が発生する場合には確定申告が必要
まず重要な点として、不動産を売却した金額=課税対象ではないので注意してください。
確定申告が必要になるかは、売却金額を使用して譲渡所得を計算していかなければなりません。
難しいと思われるかもしれませんが、手元の資料に記載されている数字を当てはめていくだけで、確定申告の必要性を判断するための譲渡所得を計算できます。
簡単に言えば、計算後に譲渡所得がプラスになった場合、確定申告をしなければなりません。
さっそく課税対象となる譲渡所得の詳細な計算方法を紹介していきますので、ご自身の不動産売却の金額を使用して、確定申告が必要かを確認してください。
譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用
出典:国税庁 No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)
譲渡価額とは?
譲渡価額は、不動産売却金額のみと思われる方もおられますが、固定資産税の精算金も含まれます。
固定資産税は、1月1日に不動産を所有している方が1年分納税する必要があるため、不動産売却時には売主がすでに支払っている状態です。
そのため不動産売却時には、不動産購入者が固定資産税を売主に精算することになり、譲渡価額は以下のように計算する事になります。
譲渡価額=不動産売却金額+固定資産税などの精算金
上記の計算式で、譲渡価額を計算してください。
譲渡所得計算に必要な取得費とは
取得費とは、不動産を購入した時に必要とした価額、つまり取得に必要とした全ての費用の事です。
簡単な計算式にすると、以下のようになります。
取得費=不動産取得価額+取得時に必要な費用
取得時に必要な費用とは、以下のようなものを指します。
- 土地や建物そのものの価格
- 不動産購入時の印紙税
- 購入時の不動産会社への仲介料
- 不動産取得税
- 不動産購入時に取り壊した建物の工事費用
不動産そのものの費用に加えて、上記のような費用も取得費に含めることが可能です。
ただし費用を証明できるような資料が手元に残っている事が条件になるため、譲渡所得を計算する前に探しておきましょう。
しかし土地の取得とマンションや戸建の取得では、不動産価額の計算が異なるので注意しましょう。
建物は年々価値が下がるため、経過した年数に応じて建物の価格を低く計算しなければならず、取得価額から減価償却費相当額を引かなければなりません。
不動産ごとの不動産取得価額の計算式は以下の表のようになります。
取得不動産 | 取得価額 |
土地のみ | 土地価格 |
マンションのみ | マンション購入価額-減価償却費相当額 |
土地付き戸建て | 土地価格+(建物価格-減価償却費相当額) |
上記の表からも分かるように、建物が関係してくると減価償却費相当額を計算しなければなりません。
つまり土地だけであれば、減価償却相当額の計算は必要なく、取得価額=土地価格となります。
建物の減価償却費相当額の計算式は、以下のようになります。
減価償却費相当額=建物購入価額×0.9×償却率×建物取得からの経過年数
減価償却率は建物の構造によって異なり、頑丈な材料で作られているほど償却率は低くなります。
つまり頑丈な素材の建物の方が、建物としての価値が下がりにくいという事です。
減価償却率は以下の表を参考にしてください。
建物構造 | 償却率 |
---|---|
鉄筋鉄骨コンクリート造 | 0.015 |
鉄筋コンクリート | 0.015 |
れんが造りやブロック造 | 0.018 |
鉄骨肉厚4mm超 | 0.02 |
鉄骨肉厚3mm超~4mm以下 | 0.025 |
鉄骨肉厚3mm以下 | 0.036 |
木造モルタル | 0.034 |
木造や合成樹脂造り | 0.031 |
上記の表を使う事で、建物の減価償却費相当額を計算する事が可能です。
譲渡所得の計算に必要な譲渡費用とは
譲渡費用とは、土地や建物などの不動産を売却した時に必要だった費用の事です。
具体的には以下のような項目を含めることが可能です。
- 不動産売却に不動産会社へ支払った仲介手数料
- 印紙税
- 借家人への立退き料
- 借地権の名義変更に必要な名義書換料
- 土地売却のために建物を取り壊した際の取り壊し費用
上記のような費用を不動産売却に直接かかった費用、つまり譲渡費用として計上する事ができます。
逆に含められないものは、以下のような項目です。
- 不動産の修繕費
- 固定資産税
- 不動産維持管理のための費用
- 不動産代金の取り立てに必要だった費用
ここまでで、確定申告が必要になる譲渡所得の計算方法を紹介してきました。
譲渡所得=売却価額-取得費(不動産取得価額+取得時に必要な費用-建物の減価償却相当額)-譲渡費用
上記の計算で譲渡所得がプラスになれば、譲渡所得税が発生する事になるため、確定申告を行わなければいけません。
続いて節税のために行う確定申告について、詳細をご紹介します。
税金対策として特例を利用するために確定申告をする場合
上記で紹介したように、譲渡所得がプラスであれば譲渡所得税が発生するため、確定申告を行わなければなりません。
例えば、譲渡所得が100万円でもあれば、課税対象となり税金を支払う必要があるわけです。
しかし確定申告の目的は、税金の額を確定させる事だけではなく、控除を受けるためでもあることを覚えておきましょう。
つまり不動産売却によって所得が生じたとしても、確定申告によって控除を受け、税金の支払いが免除されることもあるわけです。
その代表的な3つの控除は以下のようなものです。
- 3,000万円特別控除
- 居住用財産の買換え特例
- 所有期間10年超の居住用財産譲渡による低減税率の特例
上記の3つの特例を受ける条件は確定申告をする事であるため、譲渡所得がプラスになった時は必ず確定申告を行い、控除を受けるようにしましょう。
3,000万円特別控除
3,000万円特別控除とは、計算上譲渡所得がプラスになった場合に、譲渡所得から3,000万円を控除してくれる特別控除の事です。
つまり譲渡所得が3,000万円を超えなければ、課税対象である譲渡所得に対して所得税が発生する事はありません。
例えば、2,900万円の譲渡所得があったとしても、3,000万円の譲渡所得が控除されるため、譲渡所得は計算上マイナス100万円となります。
ですから3,000万円特別控除を利用することで、多くの不動産売却による譲渡所得税は免除されるわけです。
しかし3,000万円特別控除は、以下のようないくつかの条件も満たしている必要があります。
- 確定申告を行う
- 居住用財産である事
3,000万円特別控除を受けるためには、必ず確定申告を行い、控除の申請を行わなければなりません。
確定申告時に使用する譲渡所得の内訳書の項目の中に、譲渡所得金額の計算をしますという部分があります。
D特別控除額という項目があるので、30,000,000円と記入することで、3,000万円特別控除を確定申告で申請する事ができるようになります。
3,000万円を記入する事で、E譲渡所得金額が計算上マイナスになった場合、金額は0円と書いてください。
さらに譲渡所得の内訳書3面にある特例適用条文の部分に、措置法35条1項と記載するのも忘れないようにしましょう。
仮に確定申告を行ったとしても、特別控除額に3,000万円を記入し忘れてしまうと、譲渡所得税が控除されないため注意してください。
3,000万円の特別控除を確定申告によって受けるためには、売却する不動産が居住用財産である必要があります。
現時点で居住している不動産であれば問題なく控除対象となり、仮に現在住んでいないとしても、転居から3年後の12月31日までであれば居住用財産とみなされます。
居住用財産の買換え特例
居住用財産の買換、つまり古い住居を売却して新しい住居を購入した場合、譲渡所得がマイナスになる事があります。
例えば、5,000万円で購入した不動産を3,000万円で売却する場合、譲渡所得は少なくとも2,000万円のマイナスになります。
譲渡所得によって発生したマイナス分は、確定申告時に譲渡損失の買換え特例として、合計4年間他の所得と損益通算ができるようになります。
つまり先ほどの2,000万円を、翌年行う確定申告から4年間にわたって損益として申告し、給与所得や事業所得から控除する事ができるようになります。
あくまで居住用住居を買換した時のみに適用できる特例ですが、やはり確定申告をしなければ受けられない控除です。
譲渡損失が2,000万円、毎年の給与が500万円として居住用住居の買換え特例の実例を表にしてみましょう。
確定申告 | 給与 | 控除金額 | 控除金残高 |
---|---|---|---|
1年目 | 500万円 | 500万円 | 1500万円 |
2年目 | 500万円 | 500万円 | 1000万円 |
3年目 | 500万円 | 500万円 | 500万円 |
4年目 | 500万円 | 500万円 | 0万円 |
上記の表のように、2,000万円の損失を毎年の所得税の控除として申告する事ができます。
サラリーマンであれば、会社を通じて納税していた所得税の還付を受ける事ができ、自営業者であれば確定申告時の所得税に対して損益通算を行う事ができます。
還付される税金は、非常に大きな数字になるため、買換を行った場合は忘れずに確定申告するようにしてください。
所有期間10年超の居住用財産譲渡による低減税率の特例
売却不動産に10年以上居住していた場合、譲渡所得税が軽減される軽減税率の特例を受ける事ができます。
譲渡所得が6,000万円超の部分は税率15%、6,000万円以下の部分の税率は10%に軽減されるため、確定申告時に利用しましょう。
確定申告に使用する譲渡所得の内訳表3面にある特例適用条文に、措置法31条3項を記入します。
物件所有期間10年超の居住用財産譲渡による低減税率の特例も、確定申告をしなければ受けられない特例です。
確定申告は税金の支払いのために行うものとばかり思っていました
確定申告をきちんと行うことで、納める税金額を正当に減らす事ができるので、節税のためにも確定申告はしっかり行う事が大事なんです!
確定申告にはメリットもたくさんあるんですね
ではこれから不動産売却を行った際、どのように確定申告を行うのか手順や必要書類を紹介していきます。
確定申告時に必要な書類の一覧
確定申告は手順も複雑で必要書類を集めるのも難しくて面倒だと感じている方も少なくありません。
確かに確定申告を毎年行っている個人事業主の方であっても、不動産売却に伴う確定申告を行う事は躊躇される方もいるでしょう。
確定申告をした経験のないサラリーマンの方であればなおさらです。
しかし不動産売却時に行う確定申告に必要な必要書類を事前に把握できていれば、申告経験のない方でも確定申告を行うことはできます。
不動産売却に伴う確定申告の最初の重要な段階は、10種類前後になる必要書類を揃える事です。
必要書類が揃っていないと、確定申告がより難しくなるため、早めに準備しておくようにしましょう。
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表と計算明細書)
- 確定申告書B(申告書第三表・分離課税用)
- 戸籍の附票
- 不動産取得時の売買契約書/建築請負契約書
- 不動産取得時の諸費用の領収書(登記費用など)
- 不動産取得時の一般媒介契約書
- 不動産売却時の仲介手数料の領収書
- 不動産売却時の売買契約書と領収書
- 不動産売却時の登記費用や測量費などの諸費用領収書
- 売却した不動産の全部事項証明書
不動産売却に伴う確定申告に必要な書類は、少なくとも上記10種類の資料があります。
それぞれをどこで入手できるのかに応じて分けて紹介していきます。
税務署で入所できる書類
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表と計算明細書)、確定申告書B(申告書第三表・分離課税用)の2種類は税務署で入手する事ができます。
e-Taxを使用する時は、ウェブ上で入手する事になりますが、税務署での確定申告であれば、事前に税務署に行って2種類の書類を入手しておきましょう。
役所で入手できる書類
戸籍の附票は、戸籍が作られてから現在に至る、全ての住所の移動が記載されている書類で、基本的には本籍地のある市町村役場で入手する事ができます。
どこに居住していたのか、売却する不動産で何年生活していたのかを把握するために必要な書類です。
入手方法は次の4つです。
- 市町村役場の窓口
- 郵送
- 電話予約
- コンビニ交付
戸籍の附票申請書、本人確認書類、印鑑、手数料があれば、書類の交付を受けることが可能です。
マイナンバーカードを所有しておられる方であれば、コンビニのマルチコピー機によって書類を取得できます。
詳細は各地方自治体の情報を参考にしてください。
自宅に保管されている過去の書類
不動産取得時の売買契約書/建築請負契約書、諸費用の領収書(登記費用など)、一般媒介契約書は、不動産取得時に取得している書類です。
登記簿などと一緒に保管されている可能性が高いため、自宅を確認してください。
仮に売買契約書を紛失してしまった場合は、以下の方法を試す事ができます。
- 売主や仲介業者に署名捺印してもらい再発行
- 販売会社に再発行を依頼する(収入印紙付き)
- 仲介業者や売主にコピーを送ってもらう
- 不動産購入時の金額が記入されたパンフレット、領収書や通帳を代替書類とする
- 住宅ローンがあれば抵当権設定登記を代替書類とする
売買契約書を紛失した場合は、上記のような方法で対処する事ができますが、重要な書類であるため失くさないのが一番です。
自宅にある新しい書類
不動産売却時の仲介手数料の領収書、売買契約書と領収書、登記費用や測量費などの諸費用領収書などは、不動産売却時に入手している書類です。
比較的新しい書類になるため、自宅で保管しているか、貸金庫に不動産登記簿謄本などと一緒に保管されている可能性があります。
法務局で取得する書類
売却した不動産の全部事項証明書は、法務局の登記所で入手できる書類です。
全部事項証明書とは、土地や建物などの不動産をこれまでに誰が所有してきたのか、現在誰が所有しているのか、どんな権利が付着してきたのかという、全ての登記情報が記載されています。
取得方法は、以下の3つです。
- 法務局の登記所窓口で申請
- オンライン申請
- 郵送申請
オンラインで登記・供託オンライン申請システムを利用して取得する方法が、最も簡単です。
以上の10種類の書類が準備できたなら、不動産売却の課税対象となる譲渡所得を計算していきます。
譲渡所得税を納付するために、こんなに書類が必要なんですね。驚きました!
特に物件購入時の書類は紛失しがちなので、しっかり保管しておかなければいけません。不動産売却を検討しているなら、少しでも早く書類集めを始めることが肝心です
譲渡所得の内訳書の書き方
譲渡所得の計算方法は、当サイトの上記で紹介しているので、そちらを参考にしてください。
計算が終ると譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)の作成ができるようになります。
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)の記入方法について紹介するので、実際の書類と比較しながら見てください。
1面
通常は現住所を記載しますが、1月1日以降に転居した場合は、現住所の下に(旧住所)を記載してください。
電話番号・氏名・職業は、自身の状況に合わせて記入します。
2面
2面に記載する内容は、売却した不動産の情報ですが、記入する内容が多いため表にして紹介します。
項目 | 記載内容 |
---|---|
所在地 | 売買契約書に記載された物件住所を記載 |
土地建物 | 当てはまる土地建物の状況にチェック |
利用状況 | 売買直前の利用状況を選択 |
売買契約日 | 売買契約書の契約年月日を記載 |
引渡し日 | 最終代金を受領した日 |
土地共有 | 共有土地物件の場合は共有者の情報を記載 |
買主 | 買主の情報を記載 |
譲渡価額 | 固定資産税などの支払いを含む総譲渡価額 |
参考事項 | 申告時の手付金や残金を記載 |
売却理由 | 該当箇所にチェック |
3面
項目2譲渡された土地・建物の購入代金についての記載は、不動産購入時に取得した不動産取得時の売買契約書/建築請負契約書を参考にして、土地と建物を別々に記載していきます。
建物のみ減価償却相当額を、譲渡価額算出時の計算に基づいて、埋めていくことができます。
建物の構造によって償却率が変わるため、3面項目2の建物の構造の種類を間違わないように注意しましょう。
項目3譲渡するために支払った費用は、上述した譲渡費用を記載する事ができます。
繰り返しになりますが、建物の修繕費、固定資産税などは譲渡費用には含まれず、仲介手数料や測量費、収入印紙代など譲渡に直接要した費用を記載してください。
項目4譲渡所得金額の計算は、項目2と3で使用した数字を記入していきますが、D特別控除額と特例適用条文に注意してください。
以下の表でご紹介する特例の中で、どの特例を適用するのか決定しなければなりません。
損益 | 措法 | 特例内容 |
---|---|---|
譲渡益の場合 | 35条1項 | 3,000万円の控除 |
譲渡益の場合 | 31条の3 | 居住10年超の軽減税率 |
譲渡益の場合 | 36条の2 | 居住用財産買換え特例 |
譲渡損失の場合 | 41条の5 | 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除 |
譲渡損失の場合 | 41条の5の2 | 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 |
上記の特例を適用するためには、3面項目4の正しい記載が必要であるため、間違いがないように注意しましょう。
確定申告をしないとどうなるの?
不動産を売却したものの、確定申告をしないとどうなるのでしょうか?
税務署からのお尋ねという通知がくる
不動産売却をしたものの、譲渡所得がなければ確定申告をする必要はありません。
しかし確定申告時期を過ぎても、不動産売却をした方が確定申告をしていないと、税務署から譲渡所得の申告についてお尋ねという文書が届きます。
税務署は、法務局から不動産の所有者が変更された通知を受け取るため、譲渡所得がないかを確認するため文書が届くわけです。
文書が届くと緊張するかもしれませんが、譲渡所得がなければ問題ないため、必要事項を文書に記載して返信しましょう。
では仮に、譲渡所得があるにも関わらず通知文書を無視し、確定申告をしないとどうなるのでしょうか?
故意に確定申告しないと逋脱犯(ほだつはん)
確定した税金があるにもかかわらず確定申告せず、不正の納税しない事を逋脱犯と呼び、犯罪行為になります。
逋脱犯は、10年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金、または併料であるため、軽い刑罰ではありません。
さらに無申告加算税として、納税額の15%から20%が追徴課税されます。(50万円まで15%、50万超は20%)
その上、法定納付期限までに支払われない税金に対しては、延滞税が掛けられるため、納税額はどんどん増えていきます。
納税の義務を怠ると大変なんですね
税金をしっかり納めることで多くの優遇を受けられるので、不動産売却時にもしっかり納税したいですね
確定申告を行う方法とは?
不動産売却時に譲渡所得がプラスになっているなら、確定申告をする必要があります。
また特例を受けるためにも、確定申告を正確に行うことが重要です。
確定申告を行う方法は、以下のようにいくつかの種類があります。
- 税務署での確定申告
- 郵送による確定申告
- インターネット(e-Tax)での確定申告
- 税理士に委託
簡単にどのように確定申告できるのか紹介していきます。
確定申告期間
確定申告の時期は、不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日までです。
不動産売却によって利益が発生している場合、譲渡所得が課税対象となり、所得税と住民税の納付が必要です。
2月15日になってから準備を始めると間に合わなくなる可能性があるので、早めに確定申告の用意を始めましょう。
税務署での確定申告
初めて自分で確定申告を行う場合は、最寄りの税務署の窓口で確定申告を行うのがおすすめです。
確定申告を行うコーナーには、税務署の職員がいるため、分からないことを質問する事ができる税務署もあります。
ただし確定申告の締め切りが近くなると、申告者の数が増え、職員も忙しくなるため、援助を受けられない可能性があるため、早めに申告を行いましょう。
確定申告書は新しい年になってから配布されることが多いので、新年になってから税務署に行き、申告書を受け取りましょう。
郵送による確定申告
郵送による確定申告を行うためには、税務署に行って申告書を受け取って、自宅で必要事項を記入して完成させなければなりません。
または国税庁の公式サイトにある確定申告書作成コーナーを利用し、必要項目を入力しながら完成させることも可能です。
完成させた申告書を印刷して税務署に期限までに送付すれば、確定申告は終了です。
インターネットでの確定申告の方法
国税庁の確定申告書作成コーナーを使用して作成した申告書は、電子的に提出する(e-Tax)ことも可能です。
しかしe-Taxを利用するためには、マイナンバーカードなどの電子証明書を取得し、電子申告など開始届出書を税務署に事前に提出しなければなりません。
税務署や郵送による申告と比較すると、以下のようなメリットがあります。
- 24時間提出可能
- 還付金受け取りが3週間ほど早い
- 源泉徴収票の提出が省略可能
- 計算はサイト上で自動処理
- 書き間違えも問題なし
上記のようなメリットがあるので、e-Taxを利用して確定申告をしてみるのも良い方法です。
特に税金額の細かな計算を自動で行ってくれるのは、非常に助かります。
税理士に依頼
とにかく確定申告は不安という方であれば、税金のプロである税理士に依頼するのも良い方法です。
申告内容に不備があると後々面倒なことになりますが、税理士であれば問題ありません。
不動産売却時の確定申告は人生で何度もあることではないため、プロに依頼するのも良いでしょう。
しかしどこの税理士事務所でも良いというわけではなく、税理士によっても料金が異なるため、複数の税理士に見積もりを依頼するのが良い方法です。
インターネットの一括見積もりを利用すると、評判の良い税理士事務所に一度に見積もりを依頼できるため、とても便利です。
ここまでで不動産物件売却後の確定申告について紹介してきました。
不動産売却を行うと、大きな金額が入ってくるため、確定申告を行わなければならないと思う方も多いようです。
確定申告の必要性は、次の2つのポイントで決まります。
- 譲渡所得がプラスになった場合
- 納税の特例や控除を受けたい場合
上記の2つの状況に当てはまるなら、不動産売却を行った翌年に確定申告を行ってください。
不動産売却後の確定申告は少し複雑ですが、必要書類を揃えること、譲渡所得の計算が正しく行えれば、誰でもできます。
来年の確定申告を行う予定の方は、こちらで紹介した必要書類一覧を参考にして、書類を集めるところから準備を始めてみてください。
確定申告は誰でもできるとは言え、心配な方は税金のプロである税理士に依頼するのも決して悪い選択ではありません。
オンラインの税理士一括見積もりを利用すると、少しでも費用の安い、良い税理士さんを見つけられるかもしれません。