建物は経年劣化するという特徴があります。木造建築に限らず鉄骨造の建物についても年月と共に劣化が進んでいきます。
その為、建物は消費物として捉えられており、どれくらいの年数使えるのかという税制上の「法定耐用年数」が決められています。
これが建物の価値を決めるために重要な要素となっています。ここでは、減価償却と耐用年数の関係について見ていきましょう。
分かりました!
目次
減価償却とは
減価償却は、固定資産の購入費用を使用可能な年数(法定耐用年数)に応じて、分割して費用計上し、節税対策や会計処理などに用いられます。
基本的には一度に経費として計上することはできません。
機械装置、設備、器具・備品のように、時間の経過とともに価値が減少する資産が「減価償却資産」です。
例えば、180万円の自動車を経費で購入する場合には、毎年30万円ずつ6年にわたって減価償却費するといった方法で経費を計上します。このように購入した年にすべてを経費にするのではなく、何年かにわたって分割して経費にしていくことになります。
減価償却できる資産、できない資産がある
すべての資産が減価償却の対象とは限りません。それぞれ確認していきましょう。
減価償却できる資産
時間が経過するにつれて資産価値が減少する固定資産は、減価償却の対象になります。使用可能期間が1年以上で購入価額が10万円以上の固定資産が対象になります。
- 減価償却できる有形固定資産:建物、設備、備品・工具など
- 減価償却できる無形固定資産:特許権、意匠権、商標権、ソフトウエアなど
- 生物:樹木、家畜など
減価償却できない資産
以下のものは減価償却できません。
- 価値が減少しない資産(美術品・骨董品、土地・借用権など)
- 建設中の資産
- たな卸し資産
美術品や土地などは、時間の経過で価値が減少することはないと考えられるため、景気の変動で価格が変動することがあっても、減価償却の対象とはならないのです。
建設中の建物については、固定資産として計上することはできません。完成前に支払った建設のための代金は、固定資産に計上されますが、減価償却の対象とはなりません。建物が完成して使用を開始するところから、減価償却が可能となります。
たな卸し資産とは、不動産業の販売前の土地や建物、製造業の原材料、小売業の商品、などの在庫全般を指します。たな卸し資産は販売をしたときに売上と対応させて売上原価として費用計上することになるので、減価償却はできません。
その他、業務に使っていない固定資産も減価償却の対象外となります。未使用のものや稼働休止中の資産については減価償却の対象外となります。
なお、稼働休止中の資産のうち、休止期間中に必要な維持補修が行われており、いつでも稼働し得る状態にあるものについては、減価償却資産に該当します。
耐用年数について
実際に使える建物の寿命
「建物の寿命」とは建物が実際に存在した年数を示し、「法定耐用年数」とは意味が異なり、実際の建物が機能する年数のことをいいます。
欧米の住宅業界では中古物件を買い取り、念入りに修繕して長年に渡って住み継いでいくというスタイルが主流ですが、日本は昔から地震大国であり耐震性は追求してきましたが、耐久性に関しては熱心に取り組んでこなかったと言われています。
また国の政策も新築住宅への優遇措置をとってきたため、中古住宅には価値を認めてきませんでした。ただ、昨今では欧米を見習って、また環境問題に取り組むという考え方からも新しい建物を壊してまた建てる、というよりも全面的に住宅をリノベーションして長く住むf文化を受け入れる素地ができつつあります。
各国の建物の寿命
日本 | 約60年 |
アメリカ | 約70年 |
イギリス | 約80年 |
日本の大手住宅メーカーの保証期間はだいたい50年~60年までで切れるように設定されています。ただ、骨組みだけなら100年程使えるという場合もあります。
木造などでも同じですが、どれだけメンテナンスを行い、大事に使っていくかが、そのまま建物の寿命に反映されるといえます。また立地にも影響を受けるので、潮の影響を受ける海の近くや地盤の弱い土地では、老朽化が早まってしまうでしょう。
法定耐用年数
上記の建物の寿命とは違い、税制上設定されている耐用年数を、法定耐用年数と呼びます。これは減価償却を行うための指標として決められており、法定耐用年数を超過した時点で、減価償却が終了し、資産価値はゼロになります。
減価償却とは、物件を購入したときの費用全額をその年度の経費とは扱わずに、法定耐用年数に応じて分配して計上し、節税対策や会計処理などに使われます。法定耐用年数が長い方が、節税するための効果が高いということです。
減価償却資産は、国が定めている法定耐用年数の期間中、購入した代金/法定耐用年数を年度ごとに費用として計上できます。
例えば減価償却資産100万円の法定耐用年数が10年の場合、10年間にわたって毎年10万円ずつ、経費として計上できます。
重量鉄骨造のアパートでは、法定耐用年数である34年間で毎年価値が下がって34年でゼロになるものの、その間オーナーは毎年、経費として計上できるのです。
構造別の耐用年数
既述の通り、不動産の売買、賃貸などの事業を行う際には、法定耐用年数を知っておくことが不可欠となっています。
法定耐用年数は、構造によって異なります。鉄骨造の建物では、下の表の通り最長34年とされていますが、骨格材の厚さが「3mm以下のもの」「3mm超え〜4mm以下のもの」「4mm超えのもの」にさらに分類されています。
厚さが「6mm以下」のものは、軽量鉄骨と呼ばれ、「6mm」を超えるものについては、重量鉄骨と呼ばれています。
重量鉄骨は頑丈な資材のため、ビルなどの比較的大きな建物に使用される傾向にあります。メーカーや施工会社により資材の採用基準が異なるため、所有不動産の構造を調べておく必要があるのです。
その他にも、「鉄骨・鉄筋コンクリート造(SRC)」「鉄筋コンクリート造(RC)」などの構造があります。
構造別の法定耐用年数
軽量鉄骨プレハブ造(骨格材肉厚3mm以下) | 19年 |
軽量鉄骨プレハブ造(骨格材肉厚3mm超・4mm以下) | 27年 |
重量鉄骨造(骨格材肉厚4mm超) | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
木造 | 22年 |
次に、物件の用途別に分けて確認していきましょう。
構造/用途 | 住宅 | 店舗 | 事務所 |
鉄骨・鉄筋コンクリート造(SRC)鉄筋コンクリート(RC) | 47年 | 39年 | 50年 |
重量鉄骨(厚さ4mm超え) | 34年 | 34年 | 38年 |
軽量鉄骨(厚さ3mm超え~4mm以下) | 27年 | 27年 | 30年 |
軽量鉄骨(厚さ3mm以下) | 19年 | 19年 | 22年 |
※建物の面積のうちに占める構造の割合によっても変わることもあります。
重量鉄骨は頑丈な資材のため、ビルなどの比較的大きな建物に使用される傾向にあります。メーカーや施工会社により資材の採用基準は異なりますので、所有不動産の構造がどうなっているかも調べておく必要があります。
軽量鉄骨などプレハブ方式の建物や、、人の出入りが多く老朽化する速度が早いと予測されるような宿泊業や工場などにおいて、耐用年数が短く設定されていることを表しています。
物件を購入する際には物件の用途はもちろん、どのくらいの間使用する予定なのか、物件の購入金額は何年後まで経費として計上できるのかなど、この表を参考にして検討してみてください。
1998年の税制改正で、法定耐用年数が短縮に
法定耐用年数が最初に定められたのは昭和26年でした。今では使用されない建材から割り出されたものだったので、その後、建材の改良や技術の進歩に合わせて耐用年数は数回の改訂がありました。1998年に現在の法定耐用年数が下の表の通りに決まりました。
店舗・住宅用建物の法定耐用年数
建物の構造 | 1998年の改正前 | 現在 |
軽量鉄骨プレハブ造(骨格材肉厚3mm以下) | 20年 | 19年 |
軽量鉄骨プレハブ造(骨格材肉厚3mm超・4mm以下) | 30年 | 27年 |
重量鉄骨造(骨格材肉厚4mm超) | 40年 | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 60年 | 47年 |
木造 | 24年 | 22年 |
引用:SUMO 鉄骨造、鉄筋コンクリート造の耐用年数ってどれくらい? 法定耐用年数と実際の寿命はどう違う?
https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/sumai_nyumon/other/tekkotsu_taiyounensuu/
この改訂以降、建物の法定耐用年数については短くなりました。そのため建物の用途を事業として購入している場合、改訂前であれば減価償却の対象であった物件においても、法定耐用年数が短くなったことで税務上の資産価値も早くゼロになってしまうのです。
例えば築27年を過ぎたアパートで軽量鉄骨プレハブ造の場合、改訂前なら減価消却として築30年まで経費で計上できたものが、改訂後は耐用年数をオーバーすることになってしまいました。
そして、金融機関によっては、築年数が定められている法定耐用年数を超えた建物は住宅ローンの可否に影響するという可能性も。
融資においては、返済能力、住宅の機能性、土地の条件など多くの項目で検討されますが、鉄筋コンクリート造は法定耐用年数が60年から47年と大きく短縮されたため、古いマンションの購入の際には築年数が耐用年数内であるかきちんと確認しましょう。
賃貸住宅は設備にも耐用年数が関わる
アパート、マンションを賃貸住宅として所有している際には、土地や建物以外にも、エアコン、郵便受け、屋外給排水設備、駐輪場、駐車場、門、ゴミ置場などについても固定資産税がかかります。付属設備ごとに耐用年数が違うので、詳しくは税理士や税務署に相談してみましょう。
法定耐用年数を用いる減価償却の計算法
耐用年数は、他にもマンション、アパート、店舗などにも設定されています。不動産の取得費用を経費として計上する際には、減価償却を行います。
既述の通り、不動産のように長い年数をかけて消費するものは、1年でまとめて経費計上できないため、複数年に分けて計上します。
正しく経費に計上する為にも、減価償却の計算の方法を知っておくことは、とても重要なことです。特に中古物件を購入した際は、計算方法が複雑なので、注意が必要です。
法定耐用年数の一部が経過している場合
例えば、築10年の軽量鉄骨アパート(法定耐用年数は27年)を購入した場合の耐用年数を求めます。
中古物件の耐用年数
=法定耐用年数 - 経過年数 + 経過年数 × 0.2
=27年 - 10年 + 10年 × 0.2
=19年
つまり、取得から19年かけて費用を分割して計上し、減価償却を行うことができます。
法定耐用年数の全部を経過している場合
築30年の木造アパート(法定耐用年数は22年)を購入した場合の耐用年数を求めてみます。
中古物件の耐用年数
= 法定耐用年数 ×20%
= 22年 × 20%
≒ 4年 (端数は切り捨て)
計算時に出る端数は切り捨てとし、1年未満のものは2年に繰り上げて計算するというルールも覚えておきましょう。
軽量鉄骨構造のメリット・デメリット
鉄骨構造には重量鉄骨と軽量鉄骨があり、重量鉄骨はビルなどに使用されることが多くコストもかかるため、普通の住宅は軽量鉄骨構造の建物が多いですね。
耐用年数に加えて軽量鉄骨構造におけるメリットとデメリットについても把握しておきましょう。
鉄骨造の種類
重量鉄骨造
マンションや高層ビルなど大きな建物で使用され、建物の重さを柱と梁で支える「重量鉄骨ラーメン構造」による建設が主流となっています。
重量鉄骨は、軽量鉄骨に比べて柱が太いため、構造を作る鉄骨の本数が少なく済みます。この構造によって大空間を設けたり、大きな窓を設けたりでき、間取りの自由度が高くなります。
軽量鉄骨造
木造軸組構造の鉄骨バージョンというイメージです。前もって主要な部材を工場で製造し、それを現場に運び組み立てて完成させる「プレハブ工法」によるものが多いです。
この場合、現場での作業が短時間で終了するため工期が短く、作業にむらがなく品質も安定した仕上がりになります。柱と梁とブレースで強度を保ちます。重量鉄骨造に比べて建築費用が抑えられます。
軽量鉄骨構造のメリット
木造よりも耐震性にすぐれている
3mm以下の軽量鉄骨造の場合は、木造と比べると法定耐用年数が短くなります。ただし、耐震性では軽量鉄骨のほうが優れています。
軽量ですが鉄骨なので木造よりも重量があり、激しい揺れが起きたとしても鉄骨が折れるリスクは少ないので倒壊することは、ほぼないと言えるでしょう。
もちろん、RC造や重量鉄骨造に比べると耐久性においては低いですが、木造に比べるとより高い耐震性は軽量鉄骨造のメリットのひとつです。
固定資産税が比較的安い
軽量鉄骨の素材は比較的安価で手に入れやすい為、建物全体の価格自体もコストを抑えられ、固定資産税もあまり高くなりません。
固定資産税が高いと言われているコンクリート造と比較すると、毎年かかるコストが安く済むため、維持費がかからないことは大きなメリットといえます。
修繕費が比較的安い
上述の固定資産税だけでなく、修繕にかかる費用も比較的安く済むため、ランニングコストがかからないのがメリットです。
また、解体もしやすい構造のため、取得してから修繕、解体に至るまでの全工程でコストが低いことは、軽量鉄骨造ならではの特性といえるでしょう。
軽量鉄骨造のデメリット
リフォームがしにくい
重量鉄骨と比べると耐久性が劣る軽量鉄骨は、強度を高めるために壁に筋合いと呼ばれる補強材を入れています。そのため、間取りの自由な変更が比較的難しく、思い通りにリフォームがしにくい点がデメリットになります。
もちろん、近年ではリフォームの工法はバリエーションも増え、技術力も上がっているため選択肢は以前よりも増えていますが、他の構造よりも自由度が低くなりやすいことは理解しておきましょう。
コンクリート造よりも遮音性が劣る
軽量鉄骨造は厚みが少ないため、コンクリート造と比較すると遮音性が低いことがデメリットになります。ただ、遮音カーテンをつけてみたり、床や壁に遮音性の高いマットや壁紙を設置したりすることで、ある程度は効果が期待できます。
耐用年数を超えるとどうなるか
耐用年数というのは、建物そのものの価値を示す指標でもあります。当然ですが建物が古いほど価値は下がっていき、法定耐用年数を超えると、価値がゼロとされることも少なくありません。
耐用年数を超えてしまうと建物の価値にどれほどの影響を及ぼすものなのか、知っておくことが大切です。
戸建ての建物価値は20年でほぼ0になる
戸建ての住宅は築20年で資産価値がなくなると言われており、耐用年数を迎える前に価値がゼロになる場合もありますね。
もちろん、耐用年数の長い構造であれば20年経過してもそれなりの価格で売却できることもありますが、古くなればなるほど売却する時の価格が安くなりやすいことは確かです。
また、同じ20年を経過してもマンションの資産価値は新築時の半額に落ち込む程度で、それ以降の資産価値がは戸建てに比べて緩やかに減少していきます。
ただ、戸建ての場合は建物の価値だけではなく、土地の価値も付随するため、戸建てと土地のセットで売却するなら高値で売れる可能性もなくはありません。
それに対してマンションは、土地部分が戸建てよりも少なく、年数が経過するにつれて、売却時に不利になるという特性があるので注意が必要です。
築年数の経った建物でも売却は可能で、築20年以上の建物に需要があることも、もちろんあります。耐用年数を超えている、または築20年以上のような古い物件を売却する場合は、一括査定サイトなどを利用して、正しい価値を確認することが大切です。
不動産一括査定サイトを使って不動産を査定してみると、下の表のように査定額に300万円以上の差が出ることもあります。不動産を高く売るためには必要なステップだと言えるでしょう。
不動産会社 | 査定価格 |
不動産会社A | 1200万円 |
不動産会社B | 1500万円 |
不動産会社C | 1380万円 |
家の修繕、メンテナンス
長く住み続けるためには、それぞれの不動産の特性に合わせたメンテナンスが必要です。同じ構造でも、立地や地域の気候によって建物が劣化する速度は違うため、寿命も変わっていきます。
法定耐用年数に関わらず、丁寧なメンテナンスを行うことで建物の寿命を延ばすことができます。
長く住むために家の修繕が必要となるのは、どんなところか見ていきましょう。
外壁・屋根
外壁には今では様々な素材があり、その質によっては長い間ほとんど傷まないと言われているタイルやサイディングなどの素材もあります。
ただ一般的な外壁や屋根は雨風や日光、湿気などにさらされ、定期的なメンテナンスが必要になります。壁の塗装が剥がれてきたり、ひびが入ったり、黒ずみ、コケが生えるなどトラブルがあることも。
最低でも10年に1度は施工会社にチェックをしてもらい修繕を行った方が良いでしょう。
水回り
トイレ、洗面所、風呂場、キッチンなどの水回りは、日々こまめに掃除をしていても、どうしても毎日の湿気によるカビや水漏れなどで思った以上に劣化が早いです。
家電も10年くらいが寿命と言われているように、給湯器なども買い替えの必要が出てきます。もちろん使い方によって10年を超えて使い続けることもできますが、気になることが出てきた時点でメンテナンスを行うことをお勧めします。
クロス、内装
壁紙の染み、傷、臭いなどが目立ち始めるのが7年〜10年あたりです。タバコを吸う家庭やペットを飼っている家庭ではもっと早いかもしれません。
汚れに適した洗剤で定期的に掃除をし、10〜15年ほど経ったら他の修繕箇所と合わせて施工会社に見てもらうと安心でしょう。
空調危機や排水管などの設備部分
築10〜20年も経つと、空調や給排水管などの設備にも不具合が出てくるでしょう。全てを入れ替える必要がある場合もあれば、部分的な修繕で大丈夫な場合もあるので、複数の施工会社に見積もりを依頼してみましょう。
その他の部分も、日が当たりにくい場所にある海の近くや雨の多い地域、にあるなど、それぞれの環境によって対応策を考える必要があります。
分譲マンションの場合は、マンションの管理組合が居住者から修繕積立金を毎月回収し、建物を維持管理しているのが一般的です。
その為定期的に適切なメンテナンスを行ってもらえます。エレベーター、消防設備、駐車場、照明などの定期点検、共有部分のメンテナンス、劣化した設備の大規模な修繕、また管理スタッフの人件費などに使われます。
不測の事態で積立金では賄えない状況になることもあり、その場合は管理組合と不動産会社の話し合いにより、追加の積立金を回収されることもあります。
立地から影響を受けるリスクがある
耐用年数を延ばすために考えておくべきもう一つのポイントは、立地条件です。高い資金をかけ、建物としては間違いなく耐用年数が長い物件を購入できたとしても、その物件が建っている土地に弱点があるとリスクを負うことになります。
- 地盤が軟弱で沈下する恐れがある地域
- 地震が多い地域
- 川や海の近くで水害が多い地域
近年の異常気象は想像を上回る被害が出ることもあります。これまで台風が来ても何の問題もなかった土地が浸水の被害に遭ったりすることもあるため、事前に地域ごとに自治体が発表しているハザードマップなどで災害予測や地盤の強度をしっかりと確認しましょう。
万が一そのような状況になった場合は、地盤を強化するための杭を入れたり、浸水に備えて土嚢や柵を設置したり、安全に過ごせるための方策を考えましょう。
法定耐用年数を超えた物件が受ける影響
いつかは法定耐用年数を超える時が来ますので、その場合には、どのような影響があるのかをここでは紹介していきます。主に不動産売買や賃貸事業を行う際に影響を受けることになります。
勉強になります!
- 住宅ローンが借りにくくなる
- 売却が難しくなる
- 税金の負担が増える
このようなデメリットはありますが、正しく状況を把握することで事前にある程度の対策を練ることが出来ます。詳しく見てみましょう。
住宅ローンが借りにくくなる
不動産を購入する際は、ほとんどの方が住宅ローンを利用します。そのローンを利用できるかどうかは融資を行う金融機関が審査を行います。
金融機関は抵当権を設定し不動産を担保に取り、返済が滞った場合にはその不動産を売却し、お金を回収しなくてはならないため、ローンの審査基準の一つとして法定耐用年数を見極め、不動産の担保価値を測ります。
そのため、法定耐用年数を超えている不動産は資産価値がゼロと判断され、審査に通りにくいケースがあります。また、審査に通っても、短期ローンしか組めないなどの厳しい条件が発生する可能性があります。
売却が難しくなる
不動産売却の際にも、住宅ローンと同じ理由でデメリットがあります。法定耐用年数を超えた不動産を販売し、買い主が見つかっても、その買い主が住宅ローン審査で落ちてしまうと当然売買契約は成立しません。
不動産の売り主・買い主がいくら物件の価値や価格にお互いが納得していたとしても、金融機関はあくまでも不動産の資産としての価値を見て審査を行います。その為、希望の価格で売却できなかったり、売却するまでに長い時間がかかってしまったりなど、スムーズにいかないことが想定されます。
税金の負担が増える
賃貸などで事業を行う場合のリスクを解説します。既述したように不動産価格を減価償却して経費計上できます。
ただし、経費として計上できるのは法定耐用年数までなので、それ以降は不動産所得が増えることにより、納税額が急速に増えるという状況になることがあります。不動産所得とは、主に不動産の貸付を行って得られる家賃や更新料などの収入のことを言い、
総収入額-必要経費=不動産所得
となります。
法定耐用年数を超えると、それまでは経費として計上していた減価償却費分も不動産所得に入れないといけなくなるため、法定耐用年数を経過する前後で物件を手放すオーナーが多いとされています。
法定耐用年数が経過した鉄骨造物件の活用法
法定耐用年数を超えた建物のデメリットは色々とありますが、そんな建物もうまく活用することで色々と不便な問題を軽減することができます。
ここでは、法定耐用年数を経過した鉄骨造の物件について、どんな活用方法があるのかを考えていきましょう。
- 建物を新しく建て替える
- 建物を解体して更地にする
- リフォームとセットで融資を受ける
- 不動産会社に仲介を依頼して売却する
以上のような活用方法があります。具体的に見ていきましょう。
建物を新しく建て替える
賃貸事業に関する活用方法は、まず建物を新しく建て替えることが挙げられます。古い建物は建築当時のニーズに合わせて建てられている為、法定耐用年数がリセットされ、現在の需要に合った新しい建物に変えることで、より効率的に収益が期待できます。
また、古い物件はその当時の建築方法で造られているため、新しい物件よりも使用している資材が弱りやすかったり、建物自体の耐震基準が低い可能性もあります。その為、将来的にリフォームや修繕費用などのコストが余計にかかることも考えられます。
駅に近く利便性が良い、治安が良い、人気のエリアなど、住環境としての条件が整っている物件であれば、今後も引き続き新しい入居者を確保できる可能性も高いため、建て替えを検討してみるのも一つの活用方法です。
建物を解体して更地にする
中古の物件で既に法定耐用年数を超えている場合、建物を解体して更地にしてから土地を売却するのも一つの方法です。法定耐用年数を経過している物件の場合、すでに建物自体の評価額はゼロに近くなっている為、売値が低くなってしまう可能性が高いです。
更地にしてから売却するということは、経年劣化がない土地のみを売却することになるので、建物が建っているよりも売りやすくなります。また、買い主にとっても、アパートが建っているとそのまま経営を続けたり、解体費用がかかることになり、リスクが高くなります。
更地で売却すれば、住居用にしたり事業用にしたり購入後の選択肢も増えるので、買い手がつきやすくなると考えられます。
リフォームと一緒に融資を受ける
不動産購入の際に、中古物件をリフォームし、そのリフォーム費用を含めた金額の融資を申し込む方法があります。
法定耐用年数を経過した不動産は、住宅ローンの審査が通りにくくなることは既述の通りですが、リフォームをしてこれまでの経年劣化をクリアにし、耐震性、断熱性、気密性、バリアフリーなどの性能が上がったことや、住居としてこれからも何も問題がないことなどを訴えることができれば、金融機関側も価値のある不動産として考慮してくれる場合があります。
一般的な住宅ローンでは、リフォーム費用も一緒に借りられるプランもありますので、ぜひ複数の金融機関を比較検討してみましょう。
現代の建築技術や資材は飛躍的に向上し、リフォーム、リノベーションでも新築かと思えるほどのクオリティに改築できるようになってきています。建て替えよりも工期も短くなり、安価に実現できる可能性もあるので、検討してみましょう。
ただ、ここで覚えておかないといけないのが金融機関が注目するのは、あくまでも不動産の価値であることです。
単に見た目や内装を綺麗にするだけだったり、デザイン性にこだわり過ぎて機能性を無視していたりしては、不動産としての価値を認めてもらえません。誰が見ても「十分な機能と優良な条件を揃えている」と判断できる建物にすることが大切です。
不動産会社に仲介を依頼して売却する
賃貸でも売却でも、その後の収益が見込めないような状況であったり、立地的にも売れにくそうな物件は不動産会社の仲介の利用を検討してみましょう。
不動産会社には個別のネットワークや持ち前の営業力、地元での繋がりなどがあり、自分だけで売却活動を進めるよりも早く解決できる可能性が高いでしょう。
注目しておきたいのは、不動産会社によって得意分野が全然違うことです。これは大手か中小規模の不動産会社なのかに関わらず、売却したい物件の特性に合った売り方が得意な会社かどうかを見極めることが大切です。
例えば、住宅を売却したいのであれば住宅を買いたい顧客をたくさん持っている不動産会社に、投資用マンションの売却をしたいのであれば賃貸物件を探しているオーナーを中心に顧客を持つ不動産会社に、話を持ち掛けるということが重要になってきます。
各不動産会社のホームページなどで売却実績などを見て判断することもできますが、複数社を比較できる不動産一括査定サイトなどを利用するのも一つの方法です。
一括査定サイトは、客観的な評価水準をクリアした不動産会社だけを厳選しているものが多いため、偏りがなく安心して利用できるというメリットがあります。
また、不動産会社の仲介を利用しても売却がスムーズにいかない場合は、不動産会社に直接買い取ってもらう買い取りという方法もあります。
仲介よりも売値は落ちることもありますが、すぐに現金化できるという点では急いで売却した人にとっては魅力がある方法と言えるしょう。
まとめ
この記事では減価償却について、鉄骨造の建物の耐用年数について詳しく解説しました。
ここまで読んでいかがでしたか?少しでも皆さんの勉強になれば幸いです。
すべての資産が減価償却の対象とは限りません。
自分の住む家が何mmの鉄骨造なのかを答えられる人は多くはないと思いますが、建物の耐用年数は構造によってかなり違うことがわかって頂けたかと思うので、まずは自宅の構造がどれにあたるのかを確認してみましょう。
そこから築年数や法定耐用年数に注目し、これらの記事を参考にしながら建物の正しい価値を見極め、適切な資産運用を行っていきましょう。