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アパート立退きの基礎知識
アパートやマンション等、不動産投資用の賃貸物件を経営している中において、入居者に対して立ち退きを要請しなければならないような事態は、それほど頻繁に生じるものではありません。
たとえ長い間、様々な物件を賃貸していた経験があったのだとしても、実際にそれにかかる煩雑な手続きなど、経験したことがないオーナーの方が多いであろうと思われます。
例えそうであったとしても、安定して継続していたアパート経営の状況が一変して、いつ、その時がくるかはわかりません。むしろアパート経営を継続していれば、常に、そのリスクは抱えていると言ってよいでしょう。
反対に、積極的な意味合いで立退きを求めることも、将来的にはあり得るでしょう。
いずれにせよ、そういった事態が生じる前に、立ち退きに関する基本的な知識を身につけておくことは大切なことです。
もちろん、現在只今、渦中にあるオーナーにとっても必読の内容ですので、この先もお読みください。
承知しました!
立ち退きの要請をする理由
さて、アパートのオーナーが入居者に対して、立ち退きの要請をする理由とは、どのようなものがあるのでしょうか。
例えば、「長年経営している賃貸アパートの入居率が下がってきたので、建て替えをして最新の設備を整えたい」、「アパートが持っている資産価値を高くしたい」、などと言うケースです。
また、老朽化して倒壊の危険があるアパートの建て替えや、オーナー本人に、なんらかの事情があり、その物件に居住する必要が生じた、ということも理由としてあげられます。
一方、建物自体になんの問題はなくても、家賃の滞納を何か月も重ね続けたり、迷惑行為を重ね続ける不良入居者に対して立ち退きを要請することもしばしば見受けられます。
立ち退きとは、このようにオーナー側から、入居者に対して契約を更新、または継続しない旨を通知し、退去を求めることを言うのです。
立ち退き交渉は入居者側が有利
はじめての立ち退き交渉は、どのように進めていったらよいのか悩むことでしょう。
しかし、入居者側の立場にも立って、考えてみましょう。
入居者も当然、それぞれ生活する上での事情を抱えています。毎日の仕事や生活に追われ、それをこなすだけで精一杯の人が大半ではないでしょうか。
そこに、突然立ち退きの要請が降ってわいてきたとしたらどうでしょう。
アパートの賃貸借の契約期間が十分残っているのであれば、入居者は当然、その時が来るまで住み続けるつもりでいるはずなのです。契約終了の日時を意識することはあっても、自分自身に立ち退きの要請があるだろうと、常に想定しながら部屋を借りている人もそういないはずです。
また、物件をテナントとして利用している個人や会社であれば、立退きの事態が発生すれば営んでいる商売やビジネスにも大きく影響してきます。特に、店舗の場合は深刻です。
お店を営んでいれば、お得意さんや常連さんを失うことにもなりかねないからです。
そう言った理由もあり、「借地借家法」という日本の法律により、入居者の立場はオーナー側に比べて、断然、有利になっています。
基本的に、建物のオーナーは経済的には強者とみなされます。
もし、オーナーが一方的に入居者に対して通知書を送っただけで契約を終了させてしまうことが可能なのであれば、経済的弱者である入居者側は、安心して住まいを確保することができないからです。
法定更新
一般的な賃貸契約では、契約期間を2年としています。その間、入居者側から退去したいとの要望がなければ、契約期間満了を理由にして、契約終了とすることができません。
賃貸契約の標準的な契約書については、下記をご覧ください。
参考:住宅:『賃貸住宅標準契約書』について – 国土交通省
原則は、オーナー側から契約更新をしない旨の通知をすることができないのです。
これを法定更新と言います。
もしこの決まりが無ければ、オーナーの立退き要求に対して入居者が応えられなかった場合に、入居者は外に投げ出される形になります。これでは場合によってはホームレスにもなりかねません。
このようなことが起こってはいけないので、法定更新を設けて入居者側が手厚く保護されているのです。
立退き交渉は簡単ではない
入居者やテナントに入っている個人や会社にとっては、オーナーからの突然の退去要請があっても、そうやすやすと立ち退きに応じられるものではありません。
引っ越し費用や、その手続きの煩雑さに大きな負担がかかることを考えると、ほとんどの人は辟易するのではないでしょうか。退去要請があったからと言ってすぐに転居費用を捻出できる人も多くはないことでしょう。
日本の法律では入居者が有利な立場にたっているという説明はしましたが、入居者の感情や状況を理解しないまま交渉を進めてしまえば、その交渉は間違いなく難航すると言ってもよいと思われます。
立ち退き交渉に応じてくれなかったり、応じてくれたとしても、無理な要求をされ、交渉が困難を極め、その先へ進むことが出来なくなってしまいます。
相手の事情をよく、理解するところから、交渉ははじまっていくのです。
立ち退きには正当事由が必要
ここまで見てきたように、オーナー側にとっても、入居者側にとっても、立退き交渉には大変な労力と負荷がかかります。
とても大変ですね。
また、交渉に際しては入居者側が有利な立場に立っていることも説明した通りです。
さらに、立ち退き交渉の前提として、オーナー側には様々な縛りが与えられているということも付け加えておきます。非常に大切なところなので、法律による根拠も確認していきましょう。
借地借家法によると、立ち退き要請を行う側に、それを求めるだけの「正当事由」が必要であるとしています。
すなわち、立ち退きしてもらうための正当な理由を持っていなければ、オーナーは立ち退き要請を行うことが、初めからできないということなのです。正当事由として認められなければ入居者は退去しなくてもよいということです。
当然のことながら、なにごともなかったかのように契約を更新したいと入居者が申し出れば、オーナーは拒絶することができません。
正当事由として認められるための基準などは、具体的な数値で計りうるものではないのですが、一般的には以下の状況が考慮されることになります。
建物の現況
建物の物理的な状況のことを指します。
「建物が老朽化しているから建て替えたい」と言っても、修理すれば済む話であろうかと思われます。また、「建物が古くなったので見栄えが悪い」、「つくりが現代風ではないので立て替えたい」、というような理由だけでは、正当事由を主張するには説得力に欠けます。
「アパートが崩壊してけが人が出る恐れがある」、「入居者はもとより近隣住民にも甚大な被害を与える恐れがある」、というところまでいけば、正当事由として認められる確率は高いと言えるでしょう。
建物の利用状況
入居者がほとんどそこに住んでおらず、そこで生活することが無かったり、住居として契約している部屋なのに実際は物置として使用しているなど、本来の目的とはかけ離れた使用をしていれば、それはオーナーにとっては立ち退きを要請する正当事由となり得ます。
賃貸借の経過
入居者がこれまで家賃を遅滞なく支払っていたかどうか、ということや、更新料を受け取っているかどうか、または、入居者が建て替えを承知で賃貸借契約を結んでいたか、などが判断基準となります。入居者の迷惑行為等が激しければ、正当事由になります。
財産上の給付の申し出
いわゆる立ち退き料を指していると理解してよいでしょう。
これについては、他に比べて補完的な事由となりますので、他に大きな事情、事由がなければ、立ち退き料の支払いさえ済ませれば、それだけで認められるわけではないのです。
これについては後で詳しく説明します。
オーナーがその建物を必要とする事情
オーナー自身が居住するためにどうしてもそのアパートを明け渡してほしい、という事情は、正当事由と言えます。
大きな理由もなく、ただ単にオーナーがそこに住みたい、などと言ったことでは正当事由として認められません。
また、そこの立地が商売に都合よさそうだから、と言う理由も正当事由としては弱いものです。この程度では間違いなく、入居者の方が、そこに住み続ける必要性が高いと判断されるはずです。
オーナーが生活に困窮してしまい、「どうしても、そこしか住むところがない」、などと言う理由であれば、正当な事由と認められる可能性は高くなると言えます。
これらの中でも、最後にあげた、「オーナーがその建物を必要とする事情」が大きな判断要素となります。これが強いほど、正当事由として認められやすいといって良いでしょう。
正当事由として成立するのか、それともしないのか、明確な判断基準はありません。オーナー側、入居者側の事情を比較したうえで決定されるものなので、ケースバイケースと言えるのです。
一般的に、正当事由が強いほど、立ち退き料は少なく済みますし、反対に正当事由が弱いと立ち退き料が多くかかると言えます。
正当事由を判断する要素 | 正当事由として認められやすい | 正当事由として認められにくい |
建物の現況 | 建物崩壊の危険が迫っている | 建物が古くなったのでイメージを変えたい |
建物の利用状況 | 契約と異なる利用をしている | 違反することなく入居している |
賃貸借の経過 | 滞納や素行不良がある | 家賃の遅滞もなく素行も問題ない |
財産上の給付の申し出 | 高額な申し出にする | 申し出をしない |
オーナーがその建物を必要とする事情 | 強い | 弱い |
立退料とはなにか
入居者から立ち退きしてもらうまでには、大きな労力がかかることが分かったと思います。
これを出来る限りスムーズに進めるために、ひとつには、立ち退き料を入居者に対して支払う、というやり方があります。入居者に対して、退去にかかる損害を補償するという意味合いが含まれているのです。
では、これについては、なにか決まり事などが存在しているのでしょうか。
また、料金の相場はどれくらいなのでしょうか。
立ち退き料は規定や支払い義務はない
立ち退き料の内容についてですが、先にも述べたように法律上では補完的な位置づけとなっております。そして、「立ち退き料」というこの言葉は法律用語として正式な言葉ではなく、通称として使われている、ということも付記しておきます。
適正な金額や、料金の基準などについても法律においては明確になっているのかといえば、そういうことでもないのです。
これが法律で決められているものではないならば、必ずしも支払わなければいけないわけでもありません。入居者と上手に交渉すれば、少ない金額で済むこともありますし、まったく支払わなくても、気持ちよく明け渡してくれることもあります。
反対に、思わぬ額を入居者から吹っ掛けられてしまうこともあるでしょう。相手の条件次第では、オーナーにとってはとても痛い出費になってしまいます。
費用としてどのくらいかかるかは、要請をする、その性急度や、交渉次第で決まります。
スムーズに交渉を終えるには、適正な額を設定して、相手に納得してもらう必要があります。
立退料の相場
前述した理由もあり、相場を割り出すことがかなり難しいのです。
相場を割り出すための、参考になるデータがあまりないので、その地域の不動産会社にきいてみないと、なかなか地域の実情がわかりません。
当然、オーナー側としては少額で済ませたいはずです。現実に、ごく、少額で済ませることができたケースもありますし、支払わずに納得して出て行ってもらうことも、数はそれほど多くないにしろ、見受けられます。
また、悪質なオーナーも存在します。姑息な手段を使って入居者を追い出しにかかったり、支払を求める入居者をわざと悪者に仕立て上げ、巧妙な仕掛けで支払額を大幅に下げる者も、現実に存在します。
こういった悪質オーナーと同一視されないように、普段から誠実なコミュニケーションを取ることが最良の方法と言えます。
話が少し逸れましたが、いずれにせよ、あまりに高額な料金を支払うことは避けなければならないでしょう。
立ち退き料の算定方法
オーナーは入居者に対して、引っ越しにかかる費用や、前後にかかる生活上の費用を補償します。テナントに入っているお店などの場合に対しては移転費用も必要になります。
一般の入居者の場合であれば、その大部分が引っ越し費用といってもよいでしょう。転居先の家賃が現在の家賃を上回る場合には、ある程度はその増額した差額分を負担金として支払うこともあります。
店舗等として利用しているテナントに対しては、立ち退き料の内容に休業補償分を含めることがあります。オーナーはテナント側の話を十分きき、それを元に算出した金額金額を提示すると、交渉はスムーズに進めやすいと思われます。
立ち退き料を算定するために、以下の3つの要素に分類します。
- 転居に関わる費用の補償。敷金、礼金、引っ越し業者への料金、仲介手数料など。
- 店舗の営業権の補償など。営業廃止や顧客の減少に対する補償、休業期間の補償。
- 借家権の補償。消滅する利用権とも言います。安く借りれていた家賃の補償です。
以上3つを全て勘案して妥当な料金を算出することもあれば、上記のうちの一部について話し合って決めることもあります。
店舗であれば規模に応じて金額の高低が分かれますが、一般的な居住用の賃貸アパートであれば、ケースバイケースではあるものの、おおよそ、家賃の半年分から1年程度に設定することが多いようです。
これだけをみても、オーナー側には相当の負担がかかることがわかります。
多い場合は家賃の2~3年分になることもあります。
テナントにおいては、店舗の場合は、1000万円を超えることが多いようです。事務所などの場合は家賃の2年分が目安と言われています。
しかし、これもあくまで目安の額なので、「相場は分からない」というのが実態であります。
また、敷金や礼金をどのように処理するか、ということも関係してきます。敷金については返還するのが通例ではあります。
立ち退き料が必要ないケース
必ずしも、立ち退きの要請に際して、立ち退き料を用意しなければいけないというわけではありません。通例では支払うことがほとんどですが、まったく支払わずに済むこともありますし、低額で済むことも大いにあります。
オーナーのやむを得ない事情
オーナー自身が住むために、立ち退き要請を行う際には、不要になることがあります。ただし、自身が住むためではなく、大した理由もなく、低い動機で立ち退き要請を行うことは認められておりません。
しかし、オーナーのやむを得ない事情により、その該当する部屋にどうしても住まなければいけなくなったという場合などについては、正当事由が認められることが多いと言えるでしょう。
借主が契約違反をしている場合
立ち退きの交渉とは、契約の違反が生じないために行うものなので、はじめから入居者が契約に違反しているなら、立ち退きを要請することができる、ということは当然のことだと言えます。
これが正当事由として認められなければ、完全に入居者が好き放題ふるまえることになるからです。なにをもって契約違反とするのかは、それぞれの契約で多少の違いはありますが、例えば、度重なる家賃の滞納がある、契約している部屋をオーナーに無断に転貸する。
当初の契約とは全く別の用途での利用、オーナーの許可を得ずに行ったリフォームなどが該当します。
以上のような、借主が明らかな契約違反をしているにも関わらず、明け渡しを要請したとしても全く交渉に乗ってこない場合には、裁判により強制的に退去してもらうことも、ある程度は可能となります。
元々賃貸の契約期間が決まっていた場合
賃貸の契約を締結した時点で、そのアパートの契約期間が定められているという契約内容であるならば、その契約期間が満了となった時点で、明け渡すように要請することができます。そして、支払いが必要になるということはありません。
定期借家契約などの契約形態ではこういったことが可能となるために、最近ではこの定期借家契約を選ぶオーナーも多くなってきています。
一方、賃貸契約が自動更新である形態のものは、更新する期間が決まっていたとしても、契約の期間としては決められていないということになります。
なので、例え更新する時期が来たとしても、それを理由に明け渡しを求めるには支払いが必要になることが多いと言えます。
契約の種類 | 契約の更新 | 期間の定め |
一般の契約 | 借主の希望があれば更新する | なくてもOK |
定期借家契約 | 更新しない。期間満了で終了する | 期間を定めることが必要 |
オーナーが変わった後の立ち退きのケース
アパートのオーナーが、競売によって新しく別のオーナーに変更になった後、その新しいオーナーによる立ち退き要請があった場合などについては、そのオーナーは立ち退き料を支払う必要が無くなると考えてよいでしょう。
その理由としては、競売を行うによって前のオーナーから抵当権が移ったこと、そして新たなオーナーがこのアパートについての権利を持っているとみなされるからです。
競売によって抵当権を手にすることが出来た新しいオーナーは、入居者に対して、明け渡しを強制執行することができます。
正当事由の強度 | 正当事由が強い | 正当事由が弱い |
立ち退き料の額 | 立ち退き料が少ない | 立ち退き料が多い |
立ち退きが完了するまでの流れ
立ち退きの要請から、実際に立ち退きが完了するまでの流れを以下に記します。
立ち退きを要請するに至った経緯を説明する
まずはじめにやらくてはいけないことは、入居者に対して、立ち退き要請の通知を行うということです。
これには通知書という書面が必要ですが、通知書を一方的に送るだけでは不十分です。実際に直接入居者に会い、説明をするべきでしょう。なんの知らせもなく、急に立ち退きを求めても、スムーズに交渉が進むことはありません。
書類が一枚送られてきただけでは、入居者から不審に思われるかもしれませんし、話は進んでいきません。
オーナーと入居者の間で直接話し合いの場を持つことは必要不可欠なのです。お互いが納得して、合意して進めることは大前提です。
立ち退きしてもらいたいその日から逆算して、より、長い期間をおくにこしたことはありませんが、どんなに短くても、半年前から通知する必要があります。
また、オーナー側の主張を一方的にするだけでは交渉はうまく進みません。入居者側の都合もしっかり聞き、入居者が次の住まいになにを希望しているのか、また、転居が困難なのであれば、その事情も聴く必要があります。
新居の提案をする
具体的な交渉に移る前に、事前に近隣の物件について情報収集をしましょう。
立地、間取り、家賃等の条件が、現在の物件と近いものを出来るだけ多くピックアップするとよいでしょう。
勉強になります!
また、ほかに希望する条件があるなら、それを満たす物件を紹介できると、交渉の流れがスムーズに進んで行くことがあります。
一般的には不動産会社に協力をもらって物件の紹介を行うことができれば、入居者に受け入れてもらいやすく、効率がよいといえます。
立ち退きの交渉に入る
立ち退きをしてもらうためには、入居者が現在の生活を継続出来るように慎重に進めていきましょう。
もし、立ち退き料の話になる前に、話がつけばそれがベストだと言えるでしょう。
立ち退き料を支払うか、それとも支払わないかどうかは、あくまで、スムーズに退去してもらうための手段のひとつとして考えていきましょう。はじめから立ち退き料ありきで交渉する必要はないのです。
立ち退き料を支払うことになれば、大抵の場合は大きな金銭が動きますのでトラブルが起きやすいと言えますので、十分注意する必要があります。
そこで、立ち退き料の金額を交渉することになります。その場合は、まず、オーナー側から、その料金を提示することが必要です。その際には敷金の返金についても伝える必要があります。
転居にあたって障壁になっていることが入居者側にあれば、その解決案も提示できるとよいでしょう。
ネット社会の現代では、入居者側もさまざまに立ち退きに関する情報を仕入れることが可能ですので、その情報を上回るくらいは、オーナーとして情報収集していきましょう。
また、立ち退きの実例や、知識を、交渉の前に学習しておくことが大切です。
一度きりで交渉を終わらせるのではなく、何度も交渉を重ねることで、入居者に納得してもらえる条件を導き出すことが必要です。
一般的には、立ち退き料を全く無しとすると、交渉がうまくいかなくなることも多いので、金銭の支払いが必要なケースは多いと言えます。その支払い方法や、支払時期も交渉する必要があります。
基準点を設定する
オーナーであっても、入居者であっても、どちらも早くことを進めたいと考えるのは同じであるため、お互いが譲らない姿勢を続けると立ち退きまでにかかる時間が長引いてしまいます。
入居者側に対し、「立ち退き料を安くしたい」というそぶりや、「なるべくなら支払いたくない」、などという意図が伝わってはいけません。オーナーが自分の有利に進めようとすると相手も頑なになってしまいます。
交渉する際には、ある程度、条件と立ち退き料の基準点を設定しておくとよいでしょう。そのうえで、お互いの妥協点を見出だせるようにしましょう。
入居者も、交渉が長引いてしまっては今後の生活に支障をきたします。
そのためにも、基準点を設定し、話し合いにおいては妥協点を見いだせるとよいでしょう。
オーナーの一方的な都合を無理やり押し通そうとすると、オーナーの違反となり、損害賠償を請求され、高額な立ち退き料を求められる危険があります。
交渉が決裂した場合は、裁判と言う手段も検討しましょう。
交渉内容を書面で残す
交渉を重ね、決定した内容については書面にしておくことが必要です。書面に残しておくことで、お互いの認識の違いを明らかにしましょう。言った言わないの泥沼にはまると、立ち退き交渉が難航し、事が進まなくなるので注意しましょう。
前述しましたが、交渉が決裂すると裁判にまで到ることもあります。そうなると、事態が収拾するまでに長い時間がかかり、お互いに大きな負担を抱えることもあります。
また、裁判に至った際にも、書面にしてあることで、正確に、有利に審議を進めることができるでしょう。書面を使い、話し合いが感情のやり取りで終わることの無いよう、理性的に話を進めることを心がけましょう。
もし、他にも細かな決め事や、特記事項などがあれば、条件をすべて記載することが大切です。そして、オーナーと入居者、双方で、話し合った内容と相違がないかどうか、チェックしていきましょう。
退去手続き
お互いが納得し、立ち退きの条件について合意に至れば、退去日や支払い方法などといった細かなことを決定し、その日に立ち退きが完了となります。
立退きをする日は通常の引っ越し日と大きな変わりはありませんが、業者の立会が必要な場合もありますので事前に確認しておく必要があります。
弁護士に代理で交渉してもらう
交渉が難航しそうになってしまった場合や、もちろん、交渉のはじめからでも、弁護士に代理で交渉してもらうことも検討したほうがよいでしょう。
弁護士に任せればトラブルはほぼなくなり、もめごとを避け、立ち退きの長期化を回避できますので大きなメリットとなり得ます。
オーナーと入居者の二者間で話し合いを進めた場合、うまく進まいことも多いため、第三者として弁護士を入れるのは大切なことです。
しかし、弁護士に依頼すればその分の費用がかかりますので、依頼するかどうかは十分検討しましょう。
立ち退き料にかかる税金
立ち退き料が課税対象になるかどうかを簡単に説明いたします。大抵、立ち退き料は非課税となりますが、場合によっては課税対象となることもあるため、オーナー側も、該当するケースを把握しておきましょう。
以下の表で確認していきましょう。
(1)譲渡所得 | 土地、建物等の資産を譲渡することにより発生 |
(2)事業所得 | 営んでいる事業から発生 |
(3)一時所得 | 上記の2つに当てはまらない場合 |
賃貸権は、部屋を明け渡すと消滅します。この対価として支払われる立ち退き料は譲渡所得ということになります。
一方、テナントの利用者が退居する際に支払われるものについては、事業所得です。移転費用、また、休業補償として、支払いが行われるからです。
一時所得は上記の2つに当てはまらない場合になります。
税金がこのように区分されることは知っておいてよいでしょう。
分かりました!
まとめ
立ち退きを要請する経験が無かった人、今後も特に予定をしていない人も、この機会に立ち退きについて一度じっくり検討してみましょう。
自分には関係ない話と思っていても、突然その立場に置かれることも十分、あり得ます。
積極的に不動産投資に取り組み、多くの物件を運用し、そして大きな展開を考えるなら、アパートの建て替えを積極的に検討する必要が出てくることもあるでしょう。
立ち退き交渉には多くの労力やお金がかかることもありますが、できるだけ理性的で友好的に交渉を進め、時には弁護士も活用することで、お互いがあとくされのないように、次に向けて気持ちのいいステップを踏み出せるように進めていきましょう。